宝石の中でも特別な兄弟分のルビーとサファイアの魅力

宝石の中で特に代表的な四大宝石、ルビー、エメラルド、サファイア、そしてダイヤモンドは、その三色は光の三原色であり、その三色を合わせると白、ダイヤモンドになり、地球上で最も頑丈な赤色、緑色、青色、そして白色です。

美しさ、輝き、それぞれ魅力がありますが、ルビーやサファイアは、モース硬度#9ダイヤモンドに次ぐ硬い宝石です。

この記事では、ルビー、サファイアに焦点を当てて紹介します。

Contents

ルビーとサファイアは兄弟?

ルビーとサファイアの違いは、色が赤いか?青もしくはそのほかの色があるか?の違いです。

ルビーもサファイアも同じ、コランダムという鉱物(Al₂O₃)アルミと酸素が結合した結晶です。

そのコランダムにクロム(Cr)が入ると赤くなりルビー、チタン(Ti)と鉄(Fe)が入ってブルーサファイア、それ以外にもイエローサファイア、グリーンサファイア、パープルサファイア、ヴァイオレットサファイア、ブラックサファイア、オレンジサファイア等々、赤い色のルビー以外は、サファイアと呼ばれ、青いものはブルーサファイア、それ以外の色のものをファンシーカラーサファイアと呼びます。

ファンシーカラーサファイアで一番高級と言われているのがパパラチアサファイアでピンク色とオレンジ色の中間色の色合いのものです。

サファイアの中には、アレキサンドライトのように、照射する光線によって色が変わる「カラーチェンジサファイア」というものもあります。

宝石言葉も、対照的です。

  • 情熱や愛情と生命、力を表す赤いルビー
  • 知恵や真実を表すサファイア

情熱や愛情を表す赤いルビー

赤い色

まず、ルビーは赤色の宝石で、その美しさは古代から高く評価されてきましたが、その理由は、シンプルで【赤色】だからです。

旧石器時代に夜行性の大型肉食動物から身を守った炭火の色、氷河期で体温を高く保ってくれた赤色の光と遠赤外線は、人類にとって非常に大切な色であり、人間の眼の中の網膜の60%は赤色を見分けるための錐体細胞です。

赤色に守護の意味があるのはこの頃の慣習があるはずです。

更に、人類学では、人類の女性が、口紅を着け始めたのは、猿の時に自然にオスにアピールできたことが、直立歩行を始めてできなくなったためだと言われており、子孫繁栄には不可欠な色だったとのこと。

そして、古代メソポタミア文明では、すでに軍神の象徴がルビー、古代ギリシャ、古代ローマを通して戦いの神マルスの象徴でした。

生命、情熱、愛情、力を表すには十分すぎる理由です。

そしてルビーは、「地球上で一番丈夫な赤い結晶」です。

意外と知られていませんが、プロテスタントの祖、マルチン・ルターが、婚約者のカテリーナ・ヴォン・ボラに贈った指輪は、天然無処理で美しいミャンマー産ルビーです。

プロポーズする時に贈る宝石として、ルビーは元祖、愛を象徴する宝石です。

知恵や誠実を表すサファイア

青い色

サファイアは、その深い青色が特徴的な宝石で、ルビーと同じくコランダム、とても丈夫な宝石で、スリランカのサファイアが2500年前には、採掘がおこなわれており、その頃には中近東からヨーロッパに伝わっていたとされています。

米国宝石学者リチャード・ヒューズ氏の著書には、コランダムという鉱物名は、サンスクリット語の【クルビンダ】で、宝石を表す言葉だったと記述があります。

サファイアも歴史の長い宝石です。

欧州では、聖職者の宝石が好んで着けられたことで、誠実、真実を表す宝石とされました。

イギリス王室は、女王であった故エリザベス女王が国王の象徴としてルビーの指輪を着けていましたが、故ダイアナ妃が、チャールズ皇太子(現在の国王)と結婚する際に贈った指輪は、スリランカ産のブルーサファイアを着けたもので、現在はキャサリン妃に受け継がれています。

ルビーとサファイアはどちらが値段が高いか?

ロマノフ王朝

よくお店でお聞きする質問の中で、ルビーとサファイアは、どちらの値段が高い?という質問がありますので、ここで説明したいと思います。

値段の高いサファイアもあれば、安いルビーもあり正しくないと思いますが、最高級品のもの同士を比べるとルビーの方が遥かに高額です。

その理由は、GQジェムクオリティ、最高級品のルビーの希少性は、極端に高いからです。

元ミキモト常務であり、宝石ジュエリーの宝飾史研究家として有名な山口遼氏の著書「ジュエリーの歴史」では、ロシアの最後の皇帝ニコライ二世が処刑された時に没収された宝石がクレムリンに飾っているという記述がありました。

ダイヤモンド25000カラット、エメラルド3700カラット、サファイア4300カラット、そしてルビーは270カラット

あの繁栄を極めたロマノフ王朝のニコライ二世が持っていた宝石コレクションの中でも、ルビーの希少性が伺えます。

ルビーの値段が飛びぬけて高額なのは、最高級のルビー「天然無処理で美しいミャンマー産ルビー」の希少性が他の宝石と比べて群を抜いて高いからです。

ブルーサファイアの中で飛びぬけて高額なのが、天然無処理で美しいカシミール産のブルーサファイアです。

ベルベットのような真っ青に輝く逸品があります。

その辺にあるルビーよりは遥かに高額です。

ルビーでも産地の違いによって価値は大きく違ってきますが、ブルーサファイアの場合は、同じ品質、大きさでカシミール産とオーストラリア産を比べると値段は100倍違います。

大自然の造形美である宝石ルビーとサファイアはどちらも、同じものが2つない、唯一無二の存在です。

それぞれの品質を明らかにする、そして市場価格を比べるという作業が必要でしょう。

という訳で、ルビーとサファイアがどちらの値段が高いか?という質問には、正確にこたえることができないというのが正直なところです。

ルビー・サファイア・ダイヤモンドの価値の順位は?

四大宝石の中の価値の順位は?この質問も時々、受けます。

その宝石の品質を先に見分けて、一つずつの査定をして比べることはできますが、ダイヤモンドとルビーはどちらが高いですか?という質問は、こたえようがありませんが、一般論として、一番価値が高いと言われるのがルビー、続いてエメラルド、そしてダイヤモンド、最後にサファイアです。

一般的に、最も広く知られている宝石はダイヤモンドであり、一番価値が高いというイメージがあります。

宝石にあまり興味のない人は、宝石=ダイヤモンドを連想する人は多いでしょう。

それは、ダイヤモンドは供給が多い宝石であり、鑑別業者が、4C(カラー、クラリティ、カット、カラット)の特徴を説明して需要を高めるマーケティングを続けたため、商品としては宝石の中で一番メジャーになりました。

宝石の価値は、需要と供給のバランスで決まります。需要を大きくすることで価値をつくったのがダイヤモンドです。

その真逆がルビーです。

希少性が極端に高く、元々は、ロイヤルファミリーなど権力を持った人しか持つことができなかったのが、ピジョンブラッドと呼ばれる天然無処理で美しいミャンマー産ルビーの最高品質です。

サファイアが、四大宝石の中で一番最後になりかわいそうなのですがサファイアは、産出量がダイヤモンドよりは少ないものの、色々な産地から供給されるので四大宝石の中では最下位です。

しかし、前述の通り、天然無処理で美しいカシミール産ブルーサファイアは、非常に高く評価されるものがあります。

ルビーとサファイアの相性

ルビーとサファイアは同じ鉱物ですが、「身につけるときの相性が良いのかどうか」と気になる方も多いと思います。

ルビーとサファイアを同時に身につけても大丈夫?

鉱物の特性や特徴をもとに、ストーリーにして「パワーストーン」と呼んで販売している業者もいますし、そう信じて着けると気持ちも変わると思いますが、実際に私自身は、毎日25年近く天然無処理で美しいミャンマー産ルビーを着けていますので、パワーがあるのか?と聞かれると、

「ルビーを着けたからといって、空を飛べるようになったわけでもありません。

しかし、今も元気なので、お守りとしてのパワーはあるのかな?」と応えます。

大切なのは、持つ方の気持ちです。

そういう観点からルビーとサファイアを同時に身に着けても大丈夫ですか?という質問については、着けるご本人がどう感じるか?が一番重要だと思います。

ルビーとサファイアはお互いを高め合う

サファイア

ルビーとサファイアは、両方ともコランダムというダイヤモンドに次ぐ硬い鉱物でできた宝石です。

同じグループに属するため、二つの相性はぴったりで、お互いのパワーを引き出し、高め合う組み合わせになっているという話を聞いたことがありますが、高め合うという証拠は無いと思います。

そう信じていることは、パワーストーンと呼ばれるお守りを持って、守られていると感じるのと同じで、悪いことではないと思います。

しかし、そう信じて良いことが起こるかもしれないと、行動せずに待っているだけでは、勿体ないと思います。

行動すると、いい結果も悪い結果も出ますが、人間が皆持っている感性は何かを感じるはずです。

行動して感じことは、無駄ではなく進化だと思いますが、違うでしょうか?

少なくともルビーとサファイアを持っているから、大丈夫だ!と勇気を持って行動できるなら、それは、良いことだと思います。

ルビーとサファイアはお互いを高め合うという話は、本当かどうかは分かりませんが、イギリス王室のインペリアルステートクラウンには、ルビーとサファイアは一緒に着いています。(ダイヤモンドとエメラルドも着いていますが)

ルビーとサファイアの産地

ルビーとサファイアは世界中で採掘されており、その産地ごとに少しずつ特性が違います。

それは、結晶した環境が違うからです。

ルビーとサファイアの産地の違いについては以下の通りです。

主要な「ルビー」の産地

ミャンマー産ルビーの母岩

最高のルビーが産出されるのはミャンマーで、結晶した環境は「接触変成岩起源」です。

ルビーの産地には、この他に「広域変成岩」のモザンビーク、スリランカなど、「玄武岩起源」は、インド、タイランド、ケニアなどです。

  • ミャンマー
  • タイランド
  • カンボジア
  • ベトナム
  • インド
  • スリランカ
  • ケニア
  • タンザニア
  • モザンビーク
  • マダガスカル
  • アフガニスタン
  • タジキスタン
  • パキスタン

主要な「サファイア」の産地

最高級のブルーサファイアは、カシミールですが、すでに資源が枯渇しています。

現存している鉱山で一番高級なサファイアが産出されるのは、ミャンマーで、続いてスリランカですが、マダガスカルで産出するブルーサファイアにカシミール産と同じような特性を持ったものがあります。

その理由は、結晶した時の環境が似ているためでしょう。

  • カシミール(インド)
  • スリランカ
  • タイランド
  • ミャンマー
  • マダガスカル
  • タンザニア
  • オーストラリア等々

国際的にルビー、サファイアの研究で知られるスイスのGubelin Gem Labの所長で地質学者のダニエル.ニフェレラー博士に聞いた話によれば、ルビーとサファイアの産地については、6億年前の原生代後期には、マダガスカルが、5億6千万年前には、スリランカのブルーサファイアはすでに結晶していたそうです。

ルビーについては、一番高級なミャンマー産ルビーは、ヒマラヤ山脈ができる過程で、海底のカルシウムの多い地殻が、地下深くに沈んだところで接触変成岩になる時に結晶したそうで、2000万年前の話だそうです。

カンブリア紀に海の中の生命と世界最高峰のエベレスト山とも関係のあるミャンマー産ルビーが、地表で見つかるチャンスがあること自体が奇跡だとの意見でした。

(沈み側プレートにのって地下40㎞以深から地表に戻ってくることも場所によってはあるそうで、それがミャンマーのごく一部の地域だということです)

ルビーと似ているけど、違う宝石

ルビーとは、見た目はよく似ているが、化学組成が違うため「類似石」と分類される宝石を紹介します。

ここでは、実際に採掘現場で仕事をした経験を踏まえて説明します。

  • ルビーとガーネット
  • ルビーとスピネル
  • ルビーによく似たその他の宝石

ルビーとガーネット

ガーネットとルビーは、歴史的に見るとどちらとも古くから人々に親しまれてきた宝石で、旧約聖書で登場するカーバンクル又はカルブンクルスと呼ばれる赤い宝石は、ルビーと訳されます。

今でもドイツでは、ルビーをカーバンクルと呼ぶので、詳しい人は昔からルビーとガーネットを見分けていたと思いますが、ルビーが産出しなかったヨーロッパでは、同じ宝石だと思われていたとしても不思議ではありません。

1500年代にチェコで、ルビーに見た目そっくりのパイロープガーネット(Pyrope Garnet)が発見されてからは、ボヘミアンガーネットとしてヨーロッパで一世風靡しました。

ルビー:Al₂O₃

ガーネット:Mg₃Al₂(SiO₄)₃ (パイロープガーネット)

ガーネットには、パイロープをはじめ、ロードライト、アルマディン、ヘソナイト、スペサルティンガーネットがルビーと間違われる可能性があります。

赤色から褐色、オレンジ色まで色々な色調があります。またガーネットには、緑色のデマントイドガーネット、ツァボライトガーネットなど、9種類のバラエティがあります。

ガーネットは、その赤色と美しさからルビーと同じようにジュエリーで使われたものの、非常に産出量が多く、大きなサイズが産出すること、ルビーより硬度が低いため耐久性の面で劣るなど、オークションなどの還流市場で高値を付けることは無く、ルビーの類似石とされました。

ルビーとスピネル

スピネルは、原石で産出する時に八面体の端が尖っているため、日本語名も尖晶石、ラテン語ではトゲを意味する「スピナ」から命名された宝石です。

モリスがナヤン鉱山で発掘作業している時にもスピネルはピラミッドを上下に2つ合わせたような姿で産出していました。

最も美しいとされるナヤン鉱山産の「ホットピンクスピネル」は、蛍光性に輝く非常に美しいスピネルです。

結晶する母岩も産出する場所も同じで、鉱山で見間違うことはありません。

産出したばかりの結晶を太陽にかざして観ている姿をご覧になられた人は多いと思いますが、ルビーは原石を見る角度によって二色性があり色が微妙に変わりますが、スピネルはどこから見ても同じ色調です。

鉱区では「見たらわかる」ルビーとスピネルですが、ヨーロッパでは、18世紀後半に宝石学が発達するまでは、ルビーとスピネルの区別がつかなかったようで、イギリス王室の象徴であるインペリアルステートクラウンのメインストーンであるブラックプリンスと呼ばれルビーだと信じられていた赤く大きな結晶は、1783年にスピネルだということが分かり、ルビーの類似石として区分されました。

モース硬度では、ルビーが#9、スピネルが#8でルビーの方が頑丈です。

ルビー:Al₂O₃

スピネル:MgAl₂O₄

また、スピネルには、ブルースピネルなど、サファイアと同じように色々な色調のものがあります。

ルビーによく似たその他の宝石

ルビーとよく似たその他の宝石には、レッドベリル(赤いエメラルド)、カーネリアン、ファイアーオパール、ロードクロサイト…などなど、よく似た類似石はたくさんありますが、ルビー、サファイアの場合は、宝石ではありませんが、人工合成石の種類もたくさんあり、インクルージョン(内包物)を作ることも可能で、スタールビー、スターサファイアの人工合成石もあります。

「ルビー」と「サファイア」の市場価格はどう決まる?

ルビー、サファイアの価格には、鉱山を採掘する時のコストと、それが流通する政府入札会での落札価格、タイランドやバンコク、スイスなどの集積地で取引される卸売価格から百貨店や小売店で皆さんが購入するときの小売価格、そしてサザビーズやクリスティーズなどのオークション(競売)まで、どこで購入するか?どういう市場かによって差がありますし、ブランドネームが強ければ、そのブランド価値も市場価格に影響してきます。

それぞれの市場で、売りたい人が自分の利益も考えてつけたのが価格で、それを納得して購入された時の値段が、そのルビー、サファイアの取引価格、要するに市場価格です。

市場価格はどう決まるか?を心配されるのは、「同じルビー、サファイアを買うのに、高すぎる値段で買うと悔しいのから調べてみよう」という気持ちがあるからです。

そこで、宝石の値段を考える時のアドバイスです。

宝石は、一つ一つすべてが個性であり、同じものはこの地球上にありません。

すべてのルビー、サファイアは個性であり、唯一無二の存在であり、本来は、一つずつ価格が違ってもおかしくはありません。

品質の高いものは価格も高く、低いものは価格も低くなるはずですが、品質に価格があっておらず高く買うことを心配されているのだと思います。

特に、高額品の場合はそうです。

その為に買うときに「品質」について質問してみましょう。

品質の質問をしたときに、「非加熱」「ピジョンブラッド」「ロイヤルブルー」「ミャンマー産」など、「売り文句」だけが出てきたら要注意です。

どの言葉も価格に影響するものですが、品質についての説明ではありません。宝石の品質とは、どういうものかから説明して貰えるプロのジュエラーを探してみましょう。

ルビー、サファイアの価値判断できるジュエラーに、市場価格の説明を聞くのが一番の近道です。

「ルビー」と「サファイア」購入する際の注意点

ルビーとサファイアを購入する際には、次の注意が必要です。

まず、信頼性の高い宝石商(プロのジュエラー)を選びましょう。

宝石ルビー、サファイアの価格は、品質によって大きく違ってきますので、品質についての詳細を確認するようにしましょう。

まとめ

宝石ルビー、サファイアは、世代を越えて受け継がれていく「宝物」です。

時間をかけて探しましょう。

お買い得な宝石を探して、「素晴らしい宝石」に出会える可能性はほぼゼロです。

まずは、あちらこちらのお店をまわって、そのお店のご自慢の一品を見せて貰い、その説明を聞いてください。

そして一番価格の高いところに戻って、「なぜ?こんなに価格が高いのですか?」と聞いてみて下さい。

その時の答えを聞けば知識も経験も身についてきます。

買わなくても良いのです。質問攻めにしてあげて下さい。

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