安い値段のルビーと高い値段のルビーは何が違う?

ルビーを購入する際、同じような見た目のルビーなのに、価格が全く違うと「どうして?」と疑問に思う方もおられるでしょう。

今回の記事は、価格が安いルビーと高いルビーは何が違うのか?について解説します。

Contents

なぜ安い値段のルビーが出回っているのか?

量が増やせる宝石

なぜ安いルビーが出回っているのか?それは赤い宝石ルビーは、昔から人気が高く売りやすいからです。

しかし、とても希少性が高いため、昔からよく似たモノをルビーと呼んで売って来た歴史があるからです。

宝石の中で最も多くの種類の「よく似たモノ」が存在する種類で、歴史的に世の中を騒がせた人工合成石(ニセモノ)は、1883年には、フランスのベルヌイ博士が合成に成功しています。

最近騒がれている人工合成ダイヤモンドよりも100年以上も前のことです。

その種類も処理の方法も宝石の中で最も種類が多く、難しい宝石といわれています。

このような理由から、同じ「ルビー」という名前でも、値段の高いものも安いものも同じようにお店で並んでいます。

ルビーを探している人には、非常に分かりにくいのは、ジュエラーとして申し訳ないと感じています。

ルビーと呼ばれるものには、色々な種類がありますので、まずは整理しましょう。

• 天然無処理のルビー
• 天然だが加熱処理をしたルビー
• 天然だが他の物質を加えて加熱処理したルビー
• 模造したルビー
• 人工合成したルビー

人工合成石は、日本では宝石ルビーとして販売されることは無くなりましたが、以前は、宝石として販売されていました。

人工合成石のルビーは、1ctあたり数百円で買えますので、宝石としての価値はほとんどないと考えるべきでしょう。

香港やタイランドなどの通りで、ブローカーはまだ人工合成石をルビーとして売っていることがあるので、注意が必要です。

実際に、通りでみたもので一番驚いたのは、プラスチックの模造石で、意外と加熱処理されたルビーに似ていたので、詳しくない方は気を付けた方が良いでしょう。

人為的に処理をして美しさを改良したものは、天然石でも毎年その数がどんどん増えていきます。

処理されたルビーも経年変化が無いから、その数は増え続けます。

いつか需要と供給のバランスが崩れてしまい、宝石としての価値が大きく損なわれることが予想されます。

長く使って、思い出が詰まったルビーを次の世代に受け継ぎたい人、または、楽しんだ後に手放すことを考えている人は、天然無処理で美しいルビーが良いでしょう。

ルビーと呼ばれる様々な種類がある

このように、ルビーと呼ばれ市場で販売されているものには色々なものがありますが、ポイントは「品質」を確認することが重要です。

そして、品質保証書には以下の7つの項目が明記されていることを確認しましょう。

  1. 宝石種
  2. 原産地
  3. 処理の有無
  4. 美しさ
  5. 色の濃淡
  6. 欠点
  7. サイズ

ルビーの種類について詳しくはこちらで解説しています。

ルビーの品質判定について詳しくはこちらで解説しています。

宝石の価値はどうやって決まるのか

宝石の価値はどうやって決まるのか

宝石の価値は次の3つの要素で決まります。

  • 品質
  • 需要と共有のバランス
  • 伝統と慣習品質

品質

宝石品質判定の基準で見分けるが一番正確です。

品質は、下記の7つの視点で、それぞれを観ることで分かります。

  1. 宝石の種類
  2. 原産地
  3. 処理の有無
  4. 美しさ
  5. 色の濃淡
  6. 欠点
  7. サイズ

ルビーの品質判定について詳しくはこちらで解説しています。

一般的にプロのジュエラーでない業者が宝石を売買する時には、鑑別業者が発行する「鑑定書、鑑別書」と呼ばれる分析結果報告書が使われます。

鑑別書には、①宝石種 ②原産地についてのコメント ③処理の有無についてのコメントが記載されています。

重要な情報ですが、品質を表すものでも、品質保証するものでもありません。

買うお店の名前で、①から⑦の項目を網羅した「品質保証書」を発行してもらいましょう。

宝石は、何百年経っても変化しないものですから、手に入れるときは、しっかりと確認しておきたいポイントです。

需要と供給

需要と供給のバランスは、宝石だけでなく、すべての商品の価値に影響を及ぼすことは皆さんもご存じの通りです。

どれだけ世の中に存在していて、どのくらいの人気があるか?ということになります。

ルビーの場合は、どれだけ鉱山で産出しているかに対して、どれだけ市場で人気があるかということです。

人気があったとしても、供給が豊富で世の中にたくさんあれば値段が一番安いところに需要が集まります。

値段が安くなると宝石としての価値は陳腐化していきます。

宝石の場合は、同じものが世の中に2つ存在しない(人間が作ることができないもの)であるため、工業製品とは違う考え方をしなくてはなりません。

需要は、広告宣伝などでイメージづくりはできますが、鉱山での産出状況についてよく知っていなければ、供給については想像もつきません。

モリスは、2007年から2011年に、ミャンマー最北部カチン州のルビー鉱山ナヤンを採掘して出現率の調査を行いました。

「供給」どれだけ産出しているか?「需要」どれだけ市場で人気があるか?の「バランス」が重要だということです。

ルビーやサファイアなどの宝石を処理する理由は、天然無処理で美しいものは非常に少なく、業界がる程度の処理は許容しないと値段が高くなり過ぎるためです。

話があまり広がってはいけないのですが、ダイヤモンドの場合には、グレーディングレポートというものが存在していますが、これは4C(カラー/カラット/クラリティ/カット)の4つの特徴で希少性を立証しようというものです。

また希少性が高くても、市場で誰も知らない宝石については、需要が弱いという面があるので、注意が必要です。

グランディディエライトなど希少な石ですが、知名度が低くいため、需要と供給のバランスでみた場合には、弱いと考えなければなりません。

伝統と慣習

伝統と慣習、これは世代を越えて価値保存する宝石には大切な要素です。

世の中で売買される宝石には、ある業者のプロモーションによって流行することで需要が生まれることがあります。

売れていくのでしばらくは、価値があるように見えるのですが、その後どんどんと売れれば、珍しい宝石ではなくなり、価値が陳腐化していきます。

経年変化が無いのが宝石です。

手放そうとする時には、すでに宝石としての価値が低くなっているかも知れません。

伝統的な宝石には、世代を越え宝石としてしっかりと価値保存してきた歴史がありますので、これからすぐに価値が無くなることは考えにくいのです。

例えばルビー/エメラルド/サファイア/ダイヤモンドは、それぞれ数千年の歴史があり、一番新しいダイヤモンドでも宝石として500年以上の歴史があります。

宝石文化は、人類の最古の文化であり、その歴史は土器類よりも古いと言われます。

宝石ルビーを慣習の視点でみた場合、間違いなく宝石の頂点にあったことが分かりますが、その理由は「赤」にあります。

人類史の研究では、人類最古の色も最古の文字も「赤」であることが分かっています。

宝石ルビーは、既に長い歴史で確率されたものがありますので、伝統と慣習については、あまり考えなくても大丈夫でしょう。

安いルビーと高いルビーの違い

相性のいいルビー

「安いルビーと高いルビーは何が違うのですか?」とご質問を受けることがあります。

答えは、同じルビーという商品名であったとしても、それぞれ品質は違います。

品質が高ければ、高いルビーになりますし、その逆で品質が低ければ安いルビーになるということです。

(宝石品質判定へはこちらで詳しく解説しています)

宝石の品質は、下記の要素で決まります。

宝石の種類 … 天然石、人工合成石、類似石、模造石
原産地 … ミャンマー、タイランド、インド、スリランカ、アフリカ、マダガスカルなど、そのルビーが採掘された場所
処理の有無 … 加熱処理、含侵処理、充填処理など、人為的に美しさを改良しているかどうか?
美しさ … 色調、透明度、彩度、明度、プロポーションなどをクオリティスケールを使って見分ける
色の濃淡 … 白#1~黒#10まで色のトーンをクオリティスケール(モノサシ)で確認する
欠点 … フラクチャー(割れ)等、破損の原因になりインクルージョン(内包物)をチェックする
サイズ … ルビーの大きさは、重さ(ct)だけでなく、縦のサイズ、横のサイズ、そして深さを~㎜で表します。
そして、品質を見分けた上で、最高品質GQジェムクオリティ/高品質JQジュエリークオリティ/宝飾品質AQアクセサリークオリティの3つに分けて、それぞれの相場を価値比較の指数をみて相場を割り出します。

天然無処理で美しいミャンマー産ルビー(GQ最高品質)は、宝石の頂点に存在していますが、正確に表現すると、とても長い名前になります。

高いルビーにも色々な種類がある

ピジョンブラッドルビー

高いルビー(値段の高いルビー)にも種類があります。

  • 宝石ルビー、そのものの価値が高いもの
  • 構想(デザイン)または、緻密な製造方法の価値によって値段が高いもの
  • ブランド価値、マーケティングなどバーチャルなものによって値段が高いもの

宝石ジュエリー値段は、商業的な価値と交換価値(資産価値)が混在していることを理解しておきましょう。

欧米の高級ブランドであれば、宝石ルビーそのものの価値に加えて、ブランド価値も付加されているのです。

宝石ルビー、そのものの価値が高いもの

ミャンマー産ルビーの母岩

伝統と慣習、需要と供給のバランスの面から見て絶対的なポジションにあるルビーは、当然、品質が高ければ「価値の高いルビー」として値段は高くなります。

そのようなルビーとお金を交換できるので「交換価値」があります。

長いルビーの歴史の中で、交換価値が確実に認められるのは、「天然無処理で美しいミャンマー産ルビー」です。

天然無処理で美しいミャンマー産ルビーが特別な理由

天然無処理で美しいミャンマー産ルビーが特別な理由は、その結晶した時の環境が奇跡的だったいうことです。

ヒマラヤ造山活動に関連した接触変成岩起源

  • 約5億年前に生きた海洋生物のカルシウム分が海底に堆積していた
  • 今から約1億年前に南極から離れたインドが1年間に15㎝北上してきた
  • 海底のカルシウムの堆積岩をブルドーザーのように北に押し上げた
  • ユーラシア大陸と衝突、インドプレートは沈み側になり地下へ移動した(ヒマラヤ山脈の造山活動)
  • 地下40㎞の深いところでアルミ(Al)を主成分にコランダム(Al₂O₃)が結晶した。
  • 地下20㎞以深には、コランダムを赤くするクロム(Cr)が多かった
  • 沈み側プレートと一緒にマントルに吸収されて溶ける運命だったルビーが、近く接合面にできた渦によってごく一部が地表に運ばれた。
  • 生命の存在とプレートの移動、そして沈み側プレートであるためクロムが多い深いところまで移動したこと、更に、その一部の地層がヒマラヤ山脈の造山活動で生まれた渦によって地表まで上がってきたという7つの奇跡が重なって結晶した、類稀な宝石が天然無処理で美しいミャンマー産ルビーです。ちなみにピジョンブラッドルビーは、この接触変成岩起源のルビーのことを指します。

「非加熱ルビー」という商品名だけでは価値は分からない

非加熱ルビーという商品名で流通しているルビーがありますが、そのほとんどが、第三者である鑑別業者が発行する「鑑別書」に「加熱した痕跡が認められない」とコメントしているに過ぎません。

分析結果報告書であり、どこにも非加熱ルビーだとは記されていません。

そして、鑑別書には、品質を保証する書類ではないことが明記されています。
ただ、第三者であり、宝石鑑別を専門にする業者が発行する意見書は、あった方が良いのは間違いありませんが、高額なお買い物です。
手放す時のことを考えた場合は、販売したお店に「天然無処理」だと保証してもらうことが大切です。

そして宝石ルビーの値段(価値)は、品質によって決まるものであり、非加熱というのは、品質判定の要素の一部だということを理解しておきましょう。
宝石品質判定の基準で、相場と照らし合わせて値段が適正なのかチェックできれば安心です。

構想(デザイン)や精密な工法によって値段が高いもの

ルビーを素材として使用しているが、そのほとんどの価値が構想(デザイン)や緻密なつくり(工法)によって値段が高いものもあります。
例えば、世界的に知られている日本の「ギメル」のジュエリーは、非常に精巧な作りをするジュエリーブランド(メゾン)があります。
穐原代表の感性で、四季折々の自然の美しさを宝石の色合いと精巧なつくりでアートのように表現するギメルのジュエリーは高い評価を受けています。
国立科学博物館で開催された特別展「宝石…地球がうみだすキセキ」で「ジュエリーの技法」の章で展示されていました。
サザビーズやクリスティーズでも、競りの前に「ギメル」のジュエリーだと、欧米のジュエリーブランドと同じようにアナウンスされます。
このように、構想やデザインが素晴らしいのでブランド価値が高まっていくジュエリーがあることも知っておいた方が良いでしょう。
ただ、使用している宝石ルビーの価値がどうなのか?については、やはり枠を外して品質をみて見ないと分からないのです。

有名ブランド価値、マーケティングなどバーチャルなものによって値段が高いもの

有名ブランドネームには、多くの人が知っているという「ブランド価値」があります。

皆さんがご存じのように、非常に高額ですが、それでも売れています。

その理由は、下記の3つです。

  • 安心感が高い(価値が高そうに見える)
  • 高級品を買ったという満足感がある
  • 持つことで羨望の的になる

つまり、有名ブランドを持つ優越感や安心感は人々の精神的な部分に深く響くもので、それは値段が高くても購入する十分な理由になります。

欧米の有名ブランドの歴史を紐解くと、いいお客様(例えばロイヤルファミリー)に良い宝石(商品)を売って来たことで社会に認知されていきました。

そして、その時の代表的な商品が、サザビーズやクリスティーズなどのオークションにおいて高額で落札されるなど、世代を越えた実績として見ることができ、ブランド価値を高めています。

~億円で落札されるブランド名がついたジュエリーに装着されているルビーは、すべてが「天然無処理で美しいミャンマー産ルビー」です。

それでは、その高級ブランドが販売するルビーはすべて「天然無処理で美しいミャンマー産ルビー」であるか?といえば、そうではありません。

創業者の時代に使っていたメインストーンが素晴らしいことでブランドとして成長しましたが、世代を越えて有名ブランドも方針が変わったのかも知れません。今現在のものがそうであるかは疑問が残るところです。

価値の高いルビーを購入する時には、天然無処理で美しいミャンマー産ルビーかどうか?聞いてみることです。確認しておいた方が良いポイントです。

枠を外したら、その宝石の品質はどうか?という視点で観ることです。

人工合成されたルビーが安い理由

量が増やせる宝石

人工合成されたルビーが安い理由は、大量生産できるからです。

需要と供給のバランスの視点でみると価値保存することはありません。

100年以上前から世の中にあふれたベルヌイ法の人工合成石(ルビー)は、いまでは1カラット(ct)の単価は数百円です。

安くてルビーと同じ化学組成を持った赤い結晶を手にできるのは、アクセサリーとして使う場合には手軽で良いかも知れません。

しかし、宝石だと思って大切にしてしまうことは避けて欲しいと思います。

思い出が詰まったルビーが、受け継ぐときや手放さなくてはならなかった時に、ニセモノだと分かってしまうと悲しいことになります。

ここで、宝石の定義をお伝えしておきます。

宝石は、天然の「美しく」「希少で」「経年変化の無い」石のことであり、消耗品ではありません。

人為的に美しさを改良したルビーも値段は安い

「人為的に美しさを改良されたルビー」も天然無処理のものと比べて価値は低いでしょう。

産出時点で、品質が低かった原石を加熱処理、含侵処理、充填処理など、人為的に見た目を改良したものです。

天然由来であることから「天然のルビー」として高く売られることがあります。

しかし、人為的に処理されたルビーは、高い評価をされることはありません。

ダイヤモンドで処理をしていることが分かると、宝石としての価値はほぼ無くなることからも、処理の有無の重要性が分かると思います。

業界では、ルビーの加熱処理を許容していますが、それは、天然無処理のルビーだけを宝石としたら、希少性が高すぎることで供給が出来なくなるからです。

人工合成ダイヤモンドがエシカル?

最近になって人工合成されたダイヤモンドが「エシカルなダイヤモンド」だと、米国で人気になっています。

そのうち日本でも流行り出すと予想されますが、結婚指輪など人生の中で大切な儀式で使われるものとして使わない方が良いでしょう。

100年前の宝石ルビーとして売られた人工合成石問題を忘れたのでしょうか?

(人工合成したルビーが安いわけこちら

まとめ ルビー値段には理由がある

ルビーを含め宝石の値段が安いことには、理由があります。

高いルビーもあれば安いルビーもありますが、価値の高いルビーが安いことはありませんが、長い目で見て安いルビーが高い値段が付くことがあるので注意しましょう。

人工合成したルビーのように、昔は高額だったが、今は安くなったケースもあります。

一生の宝物だ、ルビーを手に入れて良かった!素晴らしいルビーが手に入った!

と喜べるように、まずは、ルビーを買うときの値段について情報収集してみましょう。

まずは、なぜその値段なのか?納得できる説明ができるジュエラー(宝石商)を探してみましょう。

ジュエラー探しのポイントは、「ピジョン~」「非加熱~」といったキャッチフレーズや「鑑別書」が出てきたら要注意です。

自らの経験で、なぜその値段なのか?説明できるのがジュエラーです。

簡単な方法は、手持ちの赤い石があれば、持って行って見て貰ってください。自分の宝石なので、答えは皆さんが知っていると思います。

ルーペでその赤い石を観ながら、値段の説明をしてくれれば信頼できるジュエラーです。

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