ルビーの磨き方とお手入れ方法とは

宝石ルビーは、数ある宝石の中で、ダイヤモンドに次ぐ硬度の高さを持っており、非常に割れにくい、丈夫な宝石として知られています。

頑丈なルビーは、日常的に身に着けられる宝石としても人気がありますが、それでも普段から気を使ってあげないと、気が付いたら割れてしまったなんてこともあります。

ルビーの美しさを長く保ち続けるために今回はお手入れの方法をご紹介します。

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ルビーは丈夫な宝石だが

ルビーは、他の宝石に比べると非常に丈夫で、割れにくい宝石です。

そのため普段着ける際に、あまり気を使う必要はありませんし、汚れてもやわらかい歯ブラシと中性洗剤を使ってぬるま湯で洗うだけで、美しい姿に戻ります。

しかし、人為的な処理をして美しさを改良しているものは、その処理の種類によっては気を付けた方が良いポイントがあります。

例えば、いくらルビーが頑丈でも、鉛ガラスを含侵させて処理をしたものは、ハンバーグのつなぎのような感じで入っている鉛ガラスの部分は、ガラスの強度しかありません。

そういうルビーに振動をかけてクリーニングすると破損する原因になります。

実際に鉛ガラス含侵処理をしたルビーをハンマーで軽く叩くと簡単に割れます。

また、一般的な加熱処理は、加熱する時にほう砂(ボラックス)と一緒に処理しますが、そのボラックスが結晶内の亀裂に残り、液体インクルージョンになったり、結晶のくぼみに残ったりします。

(歯医者さんで虫歯につめものをする感じです)それらは、硫酸などで溶けてしまいますので、薬品に対する注意も必要です。

天然無処理で美しいルビーは、硫酸に浸けていても全く影響を受けず、衝撃にも強く、熱に対しても600度で5時間以上の高温に晒されないと変化しない、とても頑丈な宝石ですので、使用中の注意も特にありません。

しかし、磨く時に硬度#9以上の物質が含まれた研磨剤でルビーの表面を磨いてしまうとファセット(切子)面の角が取れたり、透明だった切子面が曇ったりするので、気をつけましょう。

宝石には多くの種類があり、それぞれにポイントがあります。

ダイヤモンドは衝撃にルビーほど強くないので、何かにぶつけたりしないように注意する必要がありますし、エメラルドのモース硬度は#8と高いものの、衝撃に気を付けた方が良い宝石です。

例えば、最高級コロンビア産エメラルドは、海水と溶岩が混ざり合った時に内包された微細な三相インクルージョンなどが、結晶に裂け目として残っているケースが多く、何かにぶつけた際に、そこから結晶が割れてしまうことがあるからです。

また、一般的に行われているオイル含侵処理をしているエメラルドの場合は、超音波洗浄機で洗浄するとオイルが抜けてしまうことがありますので、やめた方が良いでしょう。

オパールは、衝撃に加えて乾燥にも気を付けた方が良い宝石、真珠は薬品にも気をつけた方が良いなど、それぞれの宝石ごとに違いますので、プロのジュエラーにお手入れの方法についてアドバイスを受けることをおすすめします。

天然無処理で美しいコロンビア産エメラルドのGQジェムクオリティ(最高品質)が非常に高額である理由は、無処理で美しいものには、その微細なインクルージョンが結晶表面に露出していないため、結晶表面の裂け目もなく破損に強い、そしてオイル含侵処理が不要ですのでモース硬度#8の丈夫さをそのまま楽しむことができます。

サファイアは、ルビーと同じコランダムという鉱物ですので、非常に丈夫な宝石です。

ルビーは磨く必要があるのか?

日頃のお手入れとして、頑丈なルビーは磨く必要はありません。

汚れたら洗浄するだけで良いでしょう。中性洗剤とぬるま湯、そしてやわらかい歯ブラシでゴシゴシと洗っていただければ、かなり最初の美しさまで戻るはずです。

しかし硬度の高いコンパウンドが入った研磨剤などを使って磨くと艶が無くなってしまい、プロの職人が磨き直さないといけないことになりますので、やめた方が良いでしょう。

ただ、真珠を使ったジュエリーなどは、使用後に専用のクロスでしっかりと磨いておかないと、次に使おうとジュエリーボックスから出した時に、全く艶の無い状態になっていたりしてびっくりすることがあります。

普段のお手入れは、宝石の種類や、その宝石の処理の状態などで違ってきますので、プロのジュエラーにアドバイスをもらってください。

ジュエリーの金属部分の小キズ

 

ジュエリークリーニング

新品のルビージュエリーを初めて着けた時は、美しいルビーと貴金属の輝きの相乗効果があって、気分もウキウキ、楽しいものです。

しかし、しばらく使っていると、「何となく飽きてきた」「最初の感動が無くなった」と感じることがあります。

それは、宝石ルビーやジュエリーを引き立てるダイヤモンドが汚れてしまったこと、そして分かりにくいのですが、目に見えない貴金属部分の小キズです。

貴金属自体に小キズがつくことで輝きが鈍くなり、着けていても高揚した感じが無くなります。

そこでモリスでは、日頃からジュエリーの輝きをキープするために、周りの金属部分を磨くことをおすすめしています。

モリスのお店では、普段からジュエリーをつくる職人が仕事をしていますので、その場で、貴金属の部分を磨くこともできますので、相談してみて下さい。

最初に着けた時のウキウキ感が復活します。

ルビーのリカット再研磨

前述の通り、ルビーは普段から磨く必要がありません。

しかし、長く使っているうちに、購入した時の輝きが弱まって感じることがあります。

その時には、そのルビーの裏側に油分で汚れていたり、ファセット面(カットした面)が削れてしまっているかのどちらかです。

ルビーは傷つきにくさ、割れにくさといった両方の面からみて最も丈夫な宝石ですが、絶対にキズがつかないわけではありません。

アンティークジュエリーなどを観れば、ファセット(切子)面が削れていることが多く、パッと見ただけでは分かりませんが、ルーペを使ってよく見ると分かります。

ファセット面の削れなどにより輝きが充分でない場合は、プロのジュエラーのお店に相談してください。

枠から外して、ルビーを再研磨してくれると思います。

ルビーは割れることがほとんど無い宝石ですので、磨きなおせば、また美しさが戻ります。

ただ、その時に、研磨作業を知らない業者に頼んでしまうと、不必要に小さく磨かれてしまったり、魅力が無くなってしまったりすることがありますので、注意してください。

プロのジュエラーに相談した方が良いでしょう。

そしてルビーを枠から外して磨き直す頻度は、普通に使っていたら一生に一度あるか、無いかです。

普段から気にすることは無いでしょう。

モリスの店舗には、ルビーを研磨する職人がいますので、まずは相談してみて下さい。

モリスルビー研磨の課題

モリスでは、2004年よりミャンマーのヤンゴンにある自社の研磨工房でルビーの研磨を始めました。

世界中で販売する宝石業者は、採掘の仕事、研磨の仕事に対する深い理解は無いと思います。

業界では、裸石(ルース)の状態は、ジュエリーの材料であり、商材として、既に値段がついているところからのスタートです。

しかし、それではいつまで経っても、目の前に現れた宝石ルビーの価値を自分の眼で判断することはできないと感じました。

私たちは、自分たちのリスクで採掘し、自分たちで研磨することにしました。

海外からやって来た会社であるモリスが、採掘業務を実際やることは、経験したことのない人にとっては、想像もつかないような、難しい問題が山積みでした。

それでも2007年から2011年まで採掘したのです。

ルビーの原石を採掘したら、磨く必要があります。

モリスの場合は、研磨する工房が先にできていましたし、職人も熟練していましたので比較的、失敗が少なかったものの、ルビーの研磨は、一番シリアスで緊張するものです。

もし、職人が失敗して1gを超えるGEMクオリティの原石を破損させてしまったら、確実に日本円に換算すると1億円は消えてしまいます。

原石の潜在力を見抜くために目を磨くだけでも、何年もかかる変更ことを考えると、鉱山で発掘された原石を磨く仕事は、採掘作業と同じく非常に地味です。

もし私が、研磨する職人だったとしたら、同じ研磨するなら自分の技を表現できる大きくて、多少失敗しても良いから新しい技にトライできるガーネットなどを面白い形にする方が楽しいだろうなと思います。

研磨職人の高齢化問題が心配になる

原石

その上、今の時代は、なんでもAIを使って最適化できる時代です。

宝石の形も、流通量が多いダイヤモンドでは、原石の姿をスキャンして、どういう形がベストなのか?コンピューターで解析して、商業的なサイズでは、カット研磨もロボットがやるようになりました。

一つ一つのルビーの原石と向き合いながら、磨き続ける職人さんと付き合っていると、京都の伝統工芸の職人さんたちと同じように、だんだん数が少なくなっていくのではないかと心配します。

実際に、ミャンマーでも、地味な仕事は若い人にあまり人気がなく、どんどん高齢化が進んでいます。

天然無処理で美しいミャンマー産ルビーは、一つ一つの原石に個性があり、そして非常に高価ですから、歩留まり(残る大きさ)を優先します。

どうやって人間の理想の形にするのか?というAIが得意な技術ではなく、この原石は、どういう形にしてあげると結晶の生地を無駄にすることなく、社会に認めて貰えるのだろうか?

生地不足をどう考えるのか?

業界では、少しでも大きく原石を残そうとした結果、原石の肌がルース(裸石)のファセット(切子)面に凹んだ部分が残ることがあり、それを生地不足という呼び方をします。

これは、天然無処理で美しいミャンマー産ルビーの場合は、普通に見られる特徴で、輪郭部分(ガードル)にあると、何かルビーが欠けたあとの様にも見えます。

よく知らない人は、「このルビーは欠けている」と感じてしまいますが、その生地不足をキレイに消すためには、周りにある結晶を削り落とす必要があり非常に勿体ないのです。

大自然の造形美である宝石には「不完全性」があるもので、それを個性として受け入れるかどうか?その不完全性を好きになれるかどうか?は、それをみる私たち人間の感性にもよります。

何度もありますが、モリスが卸売をしている時に、仕入れ担当者に、「この生地不足、みっともないからリカット(再研磨)してから納品するように」と注文されます。

まだ何も分かっていない時だったので、キレイな形にリカットして持って行くと「小さくなったね、これは顔が小さくなったから使えないな」とキャンセルになる。

削り落とした結晶の生地は、もう戻ってこないのです。

そして同じルビーは、この世にはもう無く、生地不足は、そのルビーの欠点ではないのです。

ダイヤモンドの鑑定には、カット研磨のきれいさを評価する指数があり、生地不足は、そのダイヤの「キズ」と呼ばれますので、「生地不足」があるルビーは、お客様に紹介する時に非常に難しいのでしょう。

それが、「自分たちで生地不足の説明を直接お客様にすれば良いかも知れない」と15年前に、東京銀座にお店を出すきっかけになりました。

そして、生地不足もそのルビーの個性としてきちんと説明すると、お客様は、「それはこのルビーのエクボみたいなものね!」と言ってくれました。

涙が出るほどうれしかった体験もあります。

そして、100年後か、200年後か分かりませんが、そのルビーが誰かに受け継がれる時に、磨き直されるかも知れません。

その時に、十分な生地が残っています。ひょっとしたら、そのルビーの個性として、無理やりリカットした時も生地不足を残すかも知れません。

私たちモリスは、生地不足をそのルビーの個性として残し続けようと思います。

貴重なルビーの研磨スタイル

天然無処理で美しいミャンマー産ルビーの産出量は、減少の一途をたどっています。

600年前からミャンマー中北部、中山間地域にあるモゴック(MOGOK)ルビー鉱山、後から見つかった最北部カチン州にあるナヤン(Nam-Ya)ルビー鉱山の2つの鉱山が、ピジョンブラッドルビーを産出してきましたが、資源の枯渇に直面しています。

モリスシンギュラリティカット

貴重な原石、結晶の生地を少しでも大きく残すために最小限の研磨をして、潜在的な美しさを表現しようと生まれたのが、モリスのシンギュラリティカットです。

シンギュラリティとは、「唯一無二」という意味で、世界にたった一つしかない原石の個性を活かし、なるべくそのままで楽しんでいただきたいという想いを形にしたもので、原石の形が美しければそのままの時もあります。

次の世代に、天然無処理で美しいミャンマー産ルビーの結晶をなるべく残そうという試みです。

そして、シンギュラリティのもう一つの意味は、これまでは、人間が地球の資源、恵みを使って自由を謳歌してきました。

それが昨今の環境破壊問題など、母なる地球に向き合う時代になりました。

調子にのって「地球にやさしい」なんて言葉がありますが、やさしいのは、実は大自然だったということです。

自分たちが宝石の研磨を20年以上続けて感じたのは、人間の理想の形にするため、または自分自身の研磨の技術をひけらかす為に、生地を削り落して小さくする方が贅沢感があっていいという風潮は古いと思います。

大自然の造形美である原石は、そのままでも美しく神秘的です。

【シンギュラリティカット】は、ジュエリーに装着できれば、原石のままの時もあります。

もちろん宝石ジュエリーは、美しさが重要です。

最低限の研磨をしないと破損やルビーが脱落したりします。そのあたりを十分に考えながら美しさが表現できたところで作業をストップして仕上げるというスタイルです。

問題は、その不規則な形をジュエリーの枠にセットする時で、ジュエリー職人の手間が膨大に増えますが、そこに挑戦することがモリスSGカットのコンセプトです。

いつか、リカット(再研磨)が必要な時が来たら、磨き直せばいいのです。

チャンスがあったら、モリスの不思議な形のルビーをご覧ください。

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