チタンの原料となる鉱物ルチル ルビーの中にも見つかる結晶

ルビーの内側を覗くと針状の結晶が見えることがあります。

この記事ではルチルについて詳しく解説していきます。

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チタンの原料となる鉱物 金紅石(ルチル)

クロム

2酸化チタンからなる鉱物です。2酸化チタン鉱物は、ほかに鋭錐石と板チタン石がある。火成岩や変成岩の中にある石英の結晶中にできることが多い。 赤味を帯びたチタン鉱物 チタンの酸化物鉱物の1種。花崗岩、ペグマタイト、片麻岩、片岩の付随鉱物として見つかるほか、熱水脈に産する。 高密度のため漂砂鉱床を成す。ラテン語の「赤」または「輝き」が命名由来です。 赤味を帯び僅かに透明感のある大粒の結晶が蒐集家向けにファセットを付けられることもあるが、石英の結晶中に見られる金色の針状結晶として知られ、装飾品として使われる。微細な針状晶が内包すると、キャッツアイ効果やスター効果を及ぼします。

Newton別冊美しく奥深い鉱物の世界 鉱物事典」発行ニュートンプレス

ルビー・サファイヤ(コランダム)の特徴

コランダムはカラー・バラエティが豊富な宝石で、中でも赤色のルビーと青色のサファイアは有名です。 さまざまな変種が広く知られるようになり、赤色のルビー以 外はすべて色名を冠して、サファイアと呼称されるのが一般的です。

新タイプの合成石あるいは各種処理石などの増加により、コランダムの鑑別はますます難しいものとなっている。日常的に行われるようになった宝石処理の影響により本来の内部特徴に大きな変化が見られるようになった一方で、 精巧な合成石が多数製造されており、両者の識別には詳細な観察が必要とされています。

引用「宝石 小宇宙を科学する1 主要宝石の世界」著者志田純子/発行全国宝石学協会

インクルージョンおよび内部構造はそれぞれの地質環境に影響する

鑑別上で重要なデータであるインクルージョンおよび内部構造はそれぞれの地質環境を反映したものであり、産状ごと に特徴が異なります。 全く別の国や離れた地域でも 地質環境が同じであれば、どちらから産出される宝石 にも共通の内部特徴が見られることもあります。

天然コランダムの内部特徴

コランダムには数種の針状結晶が包有されます。 宝石の観察だけでは、厳密な鉱物種の同定が困難な場合もありますが、それぞれの色調、分布そし てレリーフなどの視覚的な特徴を把握しておくことは、 鑑別において不可欠な要素と思われ、詳細に述べるために他の固相インクルージョンとは分けてある。これらのインクルージョンの実態は未だ明らかではなく、ルチルやヘマタイトなどの針状結晶とも、中空のキャビティとも言われるが、ルーティンの宝石鑑別にとっては個々の物質的な解明よりも、全体的な分布特徴の観察が重要な意味をもつはずである。

① シルク・インクルージョン

シルクインクルージョン

リチャー酸化チタンの微細な針状結晶で、コランダムに含まれる不純物元素である酸化チタンは、酸化鉄との電荷移動によりブルー・サファイアの青色の着色原因となることはよく知られています。 しかし長い地質学的なタイム・ スケールの中で離溶して、結晶構造に規制された偏析を生ずると無色あるいは白色のシルク・インクルージ ョンとなります。 そのため、後生インクルージョンの特徴 である、C軸に垂直な面上で(1010)面に平行な60/120 の3方向に交差して積層する規則的な分布が見られます。 シルク・インクルージョンは配列の規則正しさに加えて高い屈折率を有することからレリーフが明瞭で、ピン・ポイント照明下では、キラキラと輝いて見えるのが特徴です。 低倍率下でも明瞭に観察される細く伸びて互いに60°/ 120に交差する針状結晶は、未加熱のコランダムに包有されるシルク本来の最も典型的な形態で、太く短いタイプも一般的です。 ごく細かいシルクの粗密の繰り返しは、主結晶の構造に沿った帯状の外観を示します。さらにこれらが部分的に凝集している場合には、 低倍率下で白いクラウド状の塊に見えます。

スター・ルビーおよびサファイアのアステリズム は、シルク・インクルージョンの密度高い包有によるものです。軸に対してカボションのドームが垂直になるようにカットした場合、光の反射効果により、60°/ 120°で3方向に交差するシルクの配列と直角に6本の 星彩線が現れます。 アステリズムの中心がドームの頂点に位置していて、すべての星彩線が均一でシャープなスター石は高く評価されます。

②針状インクルージョン

ケニアからタンザニアにわたる東アフリカでは、色の鮮やかなルビーをはじめ各色のサファイアが産出され、とくにサファイアには微妙な中間色が多いことも特徴です。

東アフリカ産のコランダムにも、離溶により晶出した ほとんど無色のルチルの針状結晶がしばしば包有されますが、規則正しい角度で三次元に分布している点で、 平面上の3方向で交差して積層するシルクとは区別されます。 ある1方向の針状結晶の発達がとくに顕 著で、他の2方向が短い場合には、チューブ・インクルージョンと誤認されやすいですが、詳細に観察すれば3 方向の分布が明らかになり、コランダムにはチ ューブ・インクルージョンは存在しません。

③ベーマイト・インクルージョン

タイ産や東アフリカ産のルビーおよびサファイアでは また、白色の三次元で交差するペーマイト [AIO(OH)]の 針状結晶に遭遇することも多いです。一見、上述のルチル 針状結晶に酷似しますが、これらは細く伸びて必ずルビ 一中を貫通しており、時に毛羽だったような部分を伴うことがあります。また最も重要な点は、機械的変形に起 因する変形双晶(ブラインド状双晶面)に沿って、菱面 体面 (1011)に平行に分布することであります。

④ ダスト・インクルージョン

シルクとよく似た、黒色または褐色の微小イン クルージョンが包有され、その暗色の外観からダスト・インクルージョンと呼ばれます。コランダム結晶が成長する地質環境から主結晶だけではなく 包有物にも多くの鉄分が供給される結果、ルチルでは なくヘマタイト [Fe₂O,] および/またはイルメナイト [FeTiO₂] の微小結晶が晶出します。ダスト・インクルー ジョンはコランダムであることを証明する特徴となりますが、多数の包有はカット・サファイアの色調を低下させるので、宝石にとってはあまり歓迎されるものではありません。

シルク・インクルージョンと同様、微細な針状のヘマ タイトおよび/またはイルメナイトの密度高い分布は アステリズムの原因となります。ただし本来のボディ・カ ラーはイエロー、ゴールデン、グリーン系のサファイ アであり、包有される多数のインクルージョンの色に より、黒褐色を呈するスター・サファイアに見えます。

触媒・光触媒に使われるチタンや白金

チタンは、地中では酸素と結びついた形(2酸化チタン)で存在します。 二酸化チタンから酸素を引きはがして精錬するには、たくさんの工程と電力が必要なため、レアメタルに分類されている。 二酸化チタンは「光触媒」として活用されている。光が当たることでよごれが分解されるため、ビルの外壁やトイレなどに利用されています。触媒とは、それ自体は何も変化しないが、少量存在することで、化学反応の速度をはやめる物質をさす。光触媒以外にもさまざまな触媒があり、たとえばガソリン車の排ガス浄化装置などには触媒として白金が使われている。 白金は78個の電子をもっていて、それらが原子核のまわりに存在している。ただし電子はきっちりつめこまれているわけではなく、内部に「空席」がひとつある。白金原子はこの空席を埋めるために、電子をひきつける性質があります。このような白金原子の性質は、白金の表面に有害な分子をくっつけてバラバラにし、無害な分子へとつくりかえて解放する。 チタンは、ルチル(金紅石)などから取り出される。白金は「パラジウム」や「ロジウム」といった、白金と化学的な性質の似た元素(白金族)と一緒に鉱石に含まれている。

光触媒は日本から

光触媒のはじまりは、日本人研究者の発見からでした。1967年に、当時東京大学大学院の学生だった藤嶋昭博士が偶然実験に酸化チタンを使ったことが光触媒の発見へとつながった。世界でははじめ、光で水を分解することに成功し、1972年に科学雑誌「nature」に論文が掲載された。この発見はアメリカやヨーロッパで一躍注目浴びることになった。

自動車の俳ガスを浄化する触媒

ガソリン車では、遺産化炭素や窒素酸化物、炭素と水素の化合物といった人体に悪影響をおよぼす物質が生成される。これらを水などの無害な物質に変えるのが排ガス浄化装置だ。

引用「Newton別冊美しく奥深い鉱物の世界 鉱物事典」発行ニュートンプレス

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