着け心地よく、永く身に着けるためにルビージュエリーは構想が大切

ジュエリーのスタイルによって、宝石の種類・形・大きさに適不適があります。宝石の美しさや耐久性などの特性をよく理解できていれば、適した宝石を選び、美しさを引き出し、適した貴金属を使用し、宝石を守り、仕立ての手順を工夫して、永く身に着けられるものに仕上げられます。

ジュエリーをデザインで選ばれる方は多くいらっしゃいますが、ジュエリーを構想で選ぶことで永く身に着けられる宝物を見つけることができるはずです。

この記事ではジュエリーの設計としての構想がなぜ大切かを解説していきます。

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ジュエリーの設計構想のポイントは4つある

ジュエリーの仕立て用の指示書には構想が書き込まれ、職人に伝えられます。

構想のポイントは以下の4つです。

  • 宝石の選択・組み合わせ
  • 石留めの選択・構造
  • ジュエリーとしての意匠
  • 貴金属の選択

宝石の選択・組み合わせ

サイズによる輝きの違いを理解したうえでの宝石の選択・組み合わせは、構想の善し悪しの重要なポイントです。

大粒の宝石は、ソリテールあるいわ両脇にバランスのとれた宝石を添えて、美しさを引き出すことができます。1~2ctサイズの宝石を主石にして大粒のスタイルをそのまま真似ても、バランスが悪く美しさを十分に出せません。一見すると良くできていても全体的に小ぶりであると、どこか魅力に欠けるものになるのはサイズに対する構想の欠如によります。

潜在力のある原石ルビーの場合

ルビーの原石

宝石は、地球が育んだ潜在力ある原石を、人が見つけて美しさ引きだしたものです。

人が一から美しいものを作り出したのではなく、地球が創ったものから、研磨と仕立ての工夫によって美しさをひきだしたのです。

原石に入り込んだイメージで5つの要素を考える

ダイヤモンド研磨地を訪れた際、カッターから「石に入り込んだイメージで5つの要素を考え、仕上がりを想定して原石の値付けをする」と教わりました。

原石を見分ける5つの要素は相互に結びついており、1つでも大きく欠けると潜在力を損なわれます。(宝石の可能性がなくなる)

その要素は以下の5つです。

  1. 大きさ
  2. 透明度
  3. 形(Shape)
  4. 色(Color)
  5. 不完全性

①大きさ

宝石は身に着けて楽しむものなので、適度な大きさであることが重要です。たとえばラウンドブリリアントカットのダイヤモンドの場合、1.5~2ctぐらいが最もこのましいサイズとされています。それ以上大きくなるとリングを指にはめたときに品が感じられません。ダイヤモンドやルビーの原石は大半が小粒であるため、大きいものほど価値があります。逆に、アクアマリンやトルマリン、アメシストは大きな原石がよくとれるため、サイズが大きくても価値はさほどあがりません。

②透明度

透明度の高い原石を研磨して面とつける、宝石らしい強い輝きときらめきが生まれます。とりわけ4大宝石(ダイヤモンド、ルビー、サファイヤ、エメラルド)に顕著です。一方、トルコ石やラビスラズリのように透明度を低い石の場合は、面をつけずにカボションカットにして、石そのものの色や光沢、模様を生かします。

③形

宝石の形は、原石の形状によって決まります。原石を無駄に削って目減りさせないよう、ダイヤモンドはできるだけ原石の形に合わせたシェイプにカットするのが定石です。その意味では、自然が宝石の形を決めているともいえます。

④色

色は「色相」「濃淡」「彩度」の3つに分けて考えます。

  • 「色相」は色合いのことで、同じ石でも産地によって微妙に異なります。たとえばミャンマー・モゴック産のルビーは純色に近い赤が多いですが、モザンビーク産のルビーはややオレンジ味を帯びた赤みが特徴です。また、アンダリュサイトやアイオライトのように、見る角度によって色が異なる「多色性」を持つ石もあります。
  • 「濃淡」は宝石の種類にもよりますが、基本的には石の粒が大きければ濃い方が、小さければ若干淡い方が美しく見えます。
  • 「彩度」は、純色の度合いです。濁りが内ほど鮮やかであり、彩度の高低が美しさに大きく影響します。

⑤不完全性/インクルージョン

傷や欠損、インクルージョン(内包物)は、天然石ならではの特性です。宝石としての美しさを大きく損ねる場合には、カットや研磨によって取り除きます。ダイヤモンドは1960年代までは可能な限り研磨の目減りを抑えるために、ガードルまわりに原石の肌(ナチュラル)を残していることがあります。そこに見られるトライゴンは欠点ではなく、宝石の魅力ある不完全性と考えられます。

原石の潜在力を引き出す

ルビー研磨

カッターはこうした5つの要素を勘案し、シュミレーションを行い、最も色みや輝きがよいと思われ、かつクラック(内部の亀裂)やインクルージョンが目立たないテーブル面のポジションを決めます。透明度の程度に応じて、ファセットとカボションのどちらにするかも判断します。この工程は、宝石の仕上がりを大きく左右し、カッターのセンスと技量が問われます。

石留めの選択・構造

宝石の美しさを引き出す鍵となり、構想の善し悪しを左右します。

石留は、宝石と貴金属を結ぶ唯一の接点です。宝石の種類、形状、輪郭、面の取り方の特性を理解して、宝石を守るように石留めされているか、宝石の脱落や破損を防げるような留め方になっているか、がとても重要です。

一般的な宝石の留め方は以下の5つです。

  • プロングセッティング:爪留目という。石座や腕についた爪で宝石を留める。立爪をはじめ角爪や平爪、フクロ爪など爪の形状や数はさまざま。
  • ビーズセッティング:彫り留めという。貴金属を彫り起こして玉(ビーズ)を作り、その玉で留める。石畳みのようにぎっしりと敷き詰めて留めるパヴェセッティングもある。
  • バーセッティング:板爪留め。板状の直線の貴金属で左右から挟んで留める。エメラルドカットのように四角いカットの宝石を留める際に用いる。
  • ループセッティング:輪留めの名のとおり、輪状の貴金属で宝石を留める。すっきりと宝石を押さえることが可能。
  • ベゼルセッティング:覆輪留め。貴金属で石を囲うように伏せ込んで留める。

ジュエリーとしての意匠

繊細な中にも十分な耐久性を持ち、物理的にも長期にわたって身に着けられるか、またつけやすさ、メンテナンスのしやすさが考えられているかどうかもポイントです。

ジュエリーらしい繊細さを備え、永く身に着けたいと思わせる意匠を凝らしているかどうかは、構想の善し悪しを測るうえで重要です。

ブローチやイヤリングにふさわしいモチーフ、ソリテールリングに適したバランス、男性・女性またはユニセックスを意識した考察などが、ジュエリーとしての意匠の適切さや細部へのこだわりにつながり、宝石の完成度を高めます。

貴金属の選択

指輪やブローチなど、ジュエリーのスタイルに最適な貴金属の選択も、優れた構想には不可欠です。

ルビーやエメラルドはイエローゴールドによって美しさが強調され、ダイヤモンドとサファイヤはプラチナが美しさを引き出すことは、宝石を仕立てる側には周知のです。量産品の場合、ブローチの重さの軽減を目的にプラチナより軽いホワイトゴールドを使うことがありますが、この選択は的を得たものです。

貴金属の純度と耐久性

ジュエリーに使われる貴金属はゴールドとプラチナですが、それぞれ純度100%で使用する必要はありません。

純金は黄金色で見た目は美しいですが、装身具として使うには耐久性が十分ではなく、銀や銅、パラジウムなどで硬さと色を調整し、合金として使うのが一般的です。

貴金属の含有量は、1000分率で品位の表示をします。ただし、ゴールド(金)は昔からの慣習で24分率で表示されます。

世間にはK14のジュエリーが存在しますが、重量で見ると金が58%、体積で見ると37%の含有率に過ぎず、ゴールドの装身具としてはもちろん、ジュエリーに使う場合も18金以上が望ましいと考えます。プラチナは、Pt950およびPt900の2種類を使用することが圧倒的に多いです。

ジュエリーに使われる代表的な貴金属は以下の5つです。

  • K18YG:ジュエリーにスタンダードな合金、銀と銅の比率で色を調整する。
  • K18PG:銅の割合を多くしてピンクを引き出している
  • K18WG:ゴールドの黄色味が残る、通常はロジウムメッキされている
  • Pt950:プラチナを95%使用、重さはK18WGの1.5倍
  • Ag925:別名スターリングシルバー、銀92.5%、銅7.5%を使用*通常ジュエリーとして扱われないが、アンティークジュエリーで使用されているこもある

仕立ては構想の実現

仕立ては、石留めと仕上げを見て総合的に判断します。

ジュエリーの仕立ては大きく分けて二つの方法があります。

  1. 貴金属からつくる「手づくり」
  2. ワックスで作る「鋳造(キャスト)」

注意しなくてはいけないのは、「手づくりが良くて鋳造が悪い」とは言えない点です。手づくりでも良くないものもあります。鍵を握るのは、一つ一つ丁寧に仕上げがされているか否かです。

石留めは仕立ての要

宝石と貴金属の唯一の接点である石留めは、貴金属の弾性・粘性を使って手作業で行うジュエリーの仕立ての要です。

その善し悪しは、ジュエリーの品質全体を左右します。

見るべき点は以下の点です。

  • 石座が小さすぎてはみ出していないか
  • 美しさと耐久性のバランスがとれた爪の太さか
  • 爪は石に密着して頭が丁寧に磨かれているか
  • 宝石のテーブル面がきちんと平面または曲面に沿うようにセットされているか

まとめ

構想は考え方であるため、必ずしも仕立てるときにその通り運ぶとは限りません。どんな構想のジュエリーも仕立てながら修正し、完成させます。

宝石が選択され、設計に沿った枠に丁寧に石留めされているかは、結果的に仕上げが良いか、普通か、悪いかに現れます。

モリスは宝石の潜在的な美しさを引き出す構想を大切にしています。

 

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