ルビーは、赤色の貴重な宝石で、太古より国王の宝石として大切にされ、多くの文化で愛されてきました。
その希少性により最も高額で、そのため最もよく似たものの種類が多く、難しい宝石です。
ルビーの価値の見分け方と価格について解説します。
なぜルビーは宝石の中でも特別な価値があるの?
最高のルビーは、四大宝石、ルビー/エメラルド/サファイア/ダイヤモンドの中で、桁違いに希少性が高く、鮮やかな赤色は「ピジョンブラッド」と称され、特別な宝石とされてきました。
財宝の頂点として、金やお金よりも貴重なものとして、大切にされてきた歴史があります。
その為に、歴史上はじめての人工合成石問題もルビー、一般的に販売されているほとんどのルビーは人為的に品質改良されたものであり、ルビーの歴史の裏側は「よく似たものの歴史」です。
ここでは、ブランド価値や、ジュエリーとしての価値は、別にしておいて、交換価値を中心にルビーについて説明していきたいと思います。
まずルビーの価値の根源は「人を魅了する赤」と「希少性」です。
コランダムという鉱物(Al₂O₃)酸化アルミニウムで、結晶する時に2~3%のクロム(Cr)という元素が取り込まれて赤く発色する宝石で、天然無処理で美しいミャンマー産ルビーが強い蛍光性をもち最高とされ、その希少性の高さは、他の宝石と比べて君を抜いて高く、需要と供給のバランスから太古より最高の宝石とされています。
ルビーが特別視される理由
ルビーの価値を決める3つの要因あります。
- ルビーの品質
- ルビーの希少性
- ルビーの伝統と慣習
①ルビーの品質
ルビーの品質を見るときの要素は、①宝石種 ②処理の有無 ③原産地 ④美しさ ⑤色の濃淡 ⑥欠点 ⑦サイズの7項目をそれぞれ、確認することが大切です。
品質の高いルビーは、色が良いだけでも、透明度が高いだけでもありません。
処理の有無についても原産地と同じうように、鑑別業者へ分析を依頼することが可能です。
ここで注意していただきたいのが、鑑別業者の発行する分析結果報告書には、コメント欄に、「No indication of heating」、「加熱された痕跡が認められない」と記述されているものの、品質を保証するものではありません。
あくまでも、購入されるお店の名前で、品質保証をして貰えることを確認しておいてください。
ルビーの美しさ (色調、透明度、明度、彩度)
ルビーの価値を決定する最も重要な要因の一つが色調です。
強い赤色とわずかに紫味を帯びた色調、合わせて高い透明度と彩度、そして紫外線365nmの長波光に鮮赤色に反応する性質、すべてが揃った最高品質を「ピジョンブラッドルビー」と呼びます。
インクルージョン(内包物)の種類と内包のされる場所、入り方にも影響を受けます。
ピジョンブラッドと呼ばれるルビーは、非常に少ないということです。
鑑定書に「ピジョンブラッドカラー」、「ピジョンブラッドレッド」とコメントされていることもありますが、それぞれの鑑別業者が独自の基準をクリアしたモノに対する参考意見であり、品質を表すものではないことを理解しておいた方が良いでしょう。
ルビーの美しさ (研磨のスタイル)
ルビーは結晶そのもので価値が決まります。
カット研磨技術で価値が大きく変わるダイヤモンドとは違うところです。
一般的な人為的な加熱処理などで美しさを改良したルビーは、ある程度、研磨のスタイル、プロポーポーションの良し悪しは価値に影響を与えますが、最も価値の高い天然無処理で美しいミャンマー産ルビーの場合は、ルビーの品質は、産出した時の原石の質によって決まります。
少し歪んだ形のルビーがあったとしたら、それは貴重な原石の結晶の生地をなるべく大きく残そうとした跡であり、美しさに悪影響を与えない限りは許容します。
品質判定をする時は、そのプロポーションを基準となるスタイルに整えた場合に、どのくらいのサイズになるかを割り出した上で、クオリティスケールを使って判断することになります。
ルビーの色の濃淡
ルビーの色の濃さについては、宝石品質判定のクオリティスケールを使うのが便利です。
色の濃さを判断する時には、色調や透明度、彩度などの「美しさ」の要素と分けて、黒から白のトーンで見分けると良く分かります。
クオリティスケールでは、濃淡を#10が黒、#0を白に設定した10段階のモノサシです。
ルビーは、#6~#5が最も良い濃さ、続いて#7と#4~#3の順番です。
ただ、ルビーの場合は、#2と更に淡いものをピンクサファイアと呼びますが、その境目は、各鑑別業者によって判断が違います。
ある鑑別業者ではルビー、別の鑑別業者ではピンクサファイアと宝石名が変わるところが紛らわしいところですが、重要なのは、値段は品質で決まるものであり、呼び名ではないということです。
ルビーの欠点
ルビーを選ぶとき欠点を見抜く眼は非常に重要になります。
見た目は立派なのに比較的安価なルビーによく見られるのが欠点です。
- 破損の原因につながるフラクチャー(割れ欠け)があるもの
- プロポーションが極端に悪いもの、例えば宝石の厚みが深すぎたり、浅すぎたりするもの
- ルビーの耐久性に影響するインクルージョン(内包物)があるもの
-
これらの欠点を見分けるには、ある程度の経験が必要ですので、プロの宝石商(ジュエラー)に相談して確認してもらうことが大切です。
ルビーのサイズ(大きさ)
品質が同じであれば、ルビーの価格はサイズに比例します。
大きなルビーは、同じ品質の小さなルビーよりも高価になります。
ただ注意が必要な点は、一般的には、カラット(重さ)だけを見てサイズを判断してしまうことです。
ラウンド型のブリリアントカットが主流であり、重さと寸法がある程度決まっているダイヤモンドは、カラット(ct)である程度サイズが分かりますが、ルビーの場合は、縦/横/深さの寸法に加えて重さ(ct)を見て判断します。
1ctの重さのルビーは、オーバル型のミックスドカットの場合、縦6.5㎜/横4.5㎜/深さ4㎜ぐらいが平均的です。
しかし、天然無処理で美しいミャンマー産ルビーの場合は、原石の結晶が非常に希少であるため、結晶の生地をなるべく多く残すべく苦心しながら研磨しますので、プロのジュエラーに、バランスの良いプロポーションについて説明をしてもらうことが大切です。
②ルビーの希少性(天然無処理で美しいミャンマー産ルビー)
ルビーは、1500年代ルネッサンス期には、1カラットあたりの値段が、ダイヤモンドの8倍もする超高級品であり、一般の人々には高嶺の花でした。
希少性が極端に高いことが原因でした。
そのため、ヨーロッパでは、ルビーとよく似たスピネル、ガーネットもルビーとして取引された歴史があります。
現在でも、ルビーと呼ばれているものの中には、人工的に合成されたもの、天然ではあるが人為的な処理をして美しさを改良したモノがほとんどであり、天然無処理で美しいものはごく一部です。
ミャンマー産ルビーが特別な理由は、接触変成岩起源であり、他の産地、モザンビーク、スリランカなどの広域変成岩起源、インドやタイランド、ケニアなど玄武岩起源のルビーとは、違う特性があり、ピジョンブラッドと呼ばれる最高品質はミャンマーのモゴック鉱山とナヤン鉱山で発掘されるものです。
その最も高級なルビーと言われる天然無処理で美しいミャンマー産ルビー(GQジェムクオリティ)の1ct以上の大きさのものは、世界に1㎥ほど、想像を絶する希少性の高さを持っており、サザビーズやクリスティーズなどの高級美術品が落札されるオークションで、非常に高値で落札されます。
そのため、130年前には人工合成石がルビーとして販売され、ルビーの価格が大暴落しました。
そしてその後、人為的な加熱処理によって美しさを改良したものが市場に溢れました。
1990年代には、人為的に数が増えすぎたため、ダイヤモンドよりも安い値段で取引されるようになっていました。
ダイヤモンドは、そのほとんどが天然無処理であるのに対して、ルビーは加熱処理されているものが一般的だとされました。
どんどん増えていき、値段が下がり続けたルビーは、消費者にとって最も分かりにくい宝石になってしまいました。
しかし、2000年頃から、人為的に処理したものを見分けるための分析技術が発達しました。
これによりルビーの中には、天然無処理でも美しいものと、そうでないものが存在することが周知されていきました。
そして、同時期にインターネットの普及したことにより、天然無処理で美しいミャンマー産ルビーの需要が上昇しましたが、鉱山での産出量が非常に少ないため、供給不足となり、取引価格は上昇し続けることになりました。
現在も天然無処理で美しいミャンマー産ルビーの取引相場は、GQジェムクオリティの1ct以上のものは、5~7%/年に取引価格が上昇し続けています。
最近では、モザンビークなどの新しい産地も発見されて市場で見られるようになりましたが、ベトナム産、マダガスカル産、タンザニア産ルビーのように、新しい産地が見つかってもブランドとして価値が確立できていません。
産地も処理の有無に続いて、価値に影響する重要なポイントです。
そして、気を付けなくてはならないのが、天然無処理であれば希少性が高いのか?といえばそうではありません。
天然無処理で美しい必要があります。
美しさに欠けるもの、欠点があるものでは、価値は高くありません。ルビーは難しいと言われる所以です。
ルビーを選ぶときには、ルビーを見分ける眼を持った専門のジュエラーに相談してみましょう。
まずは、自分が持っているルビーを何時、どこで買ったか?を伝えて見て貰ってください。
そのルビーの品質判定をし、買った時の値段を当てたらそのジュエラーは、価値判断できます。
プロは「鑑別書を見せて下さい」とは言わないでしょう。
③ルビーの伝統と慣習
ルビーが特別視される理由は、世界中でその伝説が残っています。
- 旧約聖書の中に登場する「ノアの方舟の中で輝いたカーバンクル=ルビー」
- 聖書で登場する「人の知恵はルビーにも勝る」
- 仏教では「お釈迦様の肉髻珠」、頭上に輝く紅玉(ルビー)
- 古代インドでは「宝石の王ラトナラジュと呼ばれた」ルビー
- 古代バビロニアでは、さそり座のアンタレスを象徴する宝石ルビー
- 古代ギリシャ、ローマ神話では、軍神マルスを象徴する宝石ルビー
- 英国の英雄でブラックプリンスと呼ばれたエドワード王子がスペインに進軍して異教徒の王国に打ち勝った時の戦利品として持ち帰った大きなルビー(その当時はルビーと考えられていたが、分析の結果レッドスピネルだと分かった)が、今の英国の象徴「インペリアルステートクラウン」王冠のメインストーン
- イタリヤの最後の王妃「マリア.ジョゼ」の結婚指輪はルビー
このように、世界中に残るルビーの伝説は、ルビーの価値に大きく影響しています。
もちろん原産地ミャンマーでは、「母なる大地の心臓から落ちた血のしずく」といわれ、お守りとして今も着けられています。
ルビーは赤い宝石であり、人類が赤を大切にしてきたのは、人類最初の染料も赤であること、人類最古の文字も氷河期時代にオーカーで書かれた赤い文字であり、世界中の文化が赤を大切にしてきたことは、明白です。
ルビーの語源は、旧ラテン語の「赤」を意味するルビヌス、地球上で最も丈夫な赤色です。
ルビーの価格帯と市場動向
価格帯というトピックでルビーを語るなら、お手軽なAQアクセサリークオリティのルビーもあれば、交換価値があり、サザビーズなどのピカソやゴッホの絵画などの高級美術品が出品されるようなオークションで高額落札される天然無処理で美しいミャンマー産ルビーのGQジェムクオリティのようなものまで、価格帯では、数千円のアクセサリーから数億円のハイエンドジュエリーまで幅が広いのですが、まずは、低価格帯の市場動向について、アクセサリークオリティを使った宝飾品のお店での販売価格については、この20年変化していません。
ほぼ同じか、むしろ値段は安くなる傾向にあります。
つづいて、天然無処理で美しいミャンマー産ルビーのGQジェムクオリティ、最高級品については、過去20年間、価格は上昇し続けています。
その理由は、ルビーの希少性の部分で説明した通り、インターネットの発達によって情報開示が進んだことと、分析技術が発達したことにより、天然無処理のものと、人為的に処理をして美しさを改良したモノを見分けられるようになったことで需要と供給のバランスが変化したからです。
ルビーの価格は品質によって大きく違う
ルビー(ジュエリーに装着されたもの)の価格には、ブランド価値が加わってお店に並んでいますので、そのブランドのジュエリーが欲しいのか?ルビーが装着されたジュエリーが欲しいのか?またルビーその物が欲しいのか?目的を明確にしておきましょう。
ルビーの価格は、天然無処理で美しいミャンマー産ルビーの中でもGQジェムクオリティ(最高品質)とJQジュエリークオリティでは、同じ大きさでも、2倍から3倍の価格の違いがあります。
AQアクセサリークオリティ(宝飾品質)になると同じ大きさでも10分の1、サイズによっては、更にその差が広がります。
ルビーの価格は、そのルビーの品質によって大きく違いますので、品質判定をしっかり行うことが大切です。
ルビーの価値を最大限に引き出す保管方法
ルビーの価値を最大限に引き出す保管方法は、ありますか?と質問をされたことがあります。
ハッキリと申し上げられるのが、失わないようにしておくことです。
耐久性の高い宝石ルビーは、普段の使用で破損することは、まず無いでしょう。
しかし、ルビーをジュエリーに留めるプロング(爪)が変形したり、破損することでルビーを失うことがあります。
ルビーの価値を最大限に引き出す方法はありませんが、ルビーを失わないように、ジュエリーに仕立てる際には、しっかりと構想を考える必要があります。
プロのジュエラーに相談するべきポイントです。見た目が良くても気が付いた時にルビーが無くなっている、なんて最悪の事態です。
そして、どれだけしっかりと構想を考えていたとしても、長く使っているうちにプロングが緩んでくることがあります。
普段からチェックをしておくことが重要ですが、金属の弱り具合を見極める必要があり、やはり重要なルビーを留めるジュエリーは、プロのジュエラーに相談することをおすすめします。
ルビーに投資価値はある?
ルビーすべてに投資価値があるかどうか?と聞かれたらほとんどのルビーには、投資対象としての価値は無いと思った方が良いでしょう。
たくさんある中のごく一部、「品質の高い」ルビーに交換価値(資産性)があるのです。
天然無処理で美しいミャンマー産ルビーのGQジェムクオリティ(最高品質)には、確実に交換価値(資産性)があります。
これは不動産(土地)を例に説明すると分かりやすいです。
一坪の土地の価値について考えるとき、銀座四丁目の角地の一坪なら、当然、資産性は高く、購入できたとしても一坪、8000万円以上するでしょう。
対して山奥のどこか分からない一坪だと、恐らく数万円~20万円ぐらいで、山奥に、たった一坪を持っていても手放すことは難しいです。
要するに、投資価値があるかどうか?は、その対象になるルビーが、どういう品質なのか?に依りますので、品質をキッチリと見分けておくことが大切です。
品質が分からないと価値判断はできません。プロのジュエラーが「宝石品質判定」の基準で、しっかりと品質判定されたものかを確認して下さい。
ルビーは分散投資に有効?
欧州の超富裕層の資産のポートフォリオの3%は宝石です。絵画などの美術品、高級時計や金の地金は含まれていません。
宝石としての額です。日本人にとって現物資産といえば、金か不動産ですが、欧州では違います。
敵国が侵略してきたら、どのどちらもポケットに入れて退避することはできません。
不動産は、論外ですが、金の地金も1億円で10㎏になってしまいます。とても非常時に隠して逃げられる大きさではありません。
天然無処理で美しいミャンマー産ルビーのGQジェムクオリティなら1gで3億円の価値を持つものも存在しています。
領土が変わる欧州では最後の頼みの綱は、伝統的に「宝石」でした。
宝石文化がしっかりあって、宝石ジュエリーのブランドのほとんどが欧米である理由です。
世界のグローバル化が進んでいく昨今、宝石の価値判断ができるのは重要な教養です。
ルビーを投資対象とする際の注意事項
ルビーを投資対象と考えるのは、専門家が少ないため、非常にハードルが高く難しいと認識することです。
それでも投資対象としたい場合は、下記の注意点を参考にしてください。
注意点1:専門知識が必要
天然無処理で美しいミャンマー産ルビーのGQジェムクオリティの1ct以上のサイズが最低条件です。
そして、鑑別業者によって発行される鑑別書(分析結果報告書)は、重要な参考資料ですが、その宝石ルビーの価値判断(査定)をするものではありません。
ルビーを投資対象とする場合には、宝石品質判定、そして価値判断できる技術だけでなく、そしてその分野に精通しているプロフェッショナルである必要があります。
専門家に相談するのが良いでしょう。
欧米のブランドは、高いブランド価値を持っているのは確かですが、宝石ルビーの価値判断が出来ている訳ではありません。
注意点2:資産保全を目的とするのがよい
天然無処理で美しいミャンマー産ルビーのGQジェムクオリティ最高品質になると、数億円の価値をポケットに入れて持ち運びできる携帯性の高さ、経年変化がないこと、そして何より、その美しさを楽しむことができます。
万一のことが起こって、国外に退去しないといけない事態になった時には、頼りになる資産です。
しかし、国が変わると貨幣価値、価値観も違います。
そして換金する時にも、誰に依頼して良いか分からない可能性があります。
ルビーを投資対象として考える時は、儲けようと考えるのではなく、資産の保全を目的として考えた方が良いでしょう。
まとめ
ルビーほど、多様な人工合成石の種類、人為的な処理の種類のある宝石はありません。
伝統的に高い価値があるからよく似たものが多く、価値も大きく違います。
ルビーの値段が定期性かどうかは、品質判定ができないと判断できませんので、プロのジュエラー(専門家)に相談することをおすすめします。
投資対象として考える場合は、資産を保全する目的で持つこと、そして手放す時のことも相談しておきましょう。