「ルビー」は美しく、で、価値の高い特別な宝石です。
ルビーはどのような漢字なのか調べてみようと思うきっかけは様々だと思います。
この記事では、「ルビー」の漢字の由来と、その成り立ちや漢字がもつ意味、文字が組み合わさったときの音の響きやイメージを感じながら、古代の人がどのようにルビーをとらえていたのかもご紹介します。
『ルビー』の漢字は紅玉です
「紅」「玉」と書きます。
ルビーは赤い宝石で(鉱物名コランダム)最も高価な宝石の一つです。
最高のルビー「ピジョンブラッドルビー」は、若干の紫味を帯びた深い赤色でありながら、蛍光性を持つ神秘的な色調です。
紅の漢字の成り立ち
「紅」の漢字の成り立ちは、(糸+工)の形声文字です。
左に「より糸」の象形と右に「工具(のみ又はさしがね)の象形」(工は「作る」という意味ですが、同じ読みを持つ、「烘」と同じ意味のあぶる・乾かす・温めるという意味を持つようにもなり)
「赤いかがり火」の意味から、「あかい」、「べに」を意味する「紅」という漢字が成り立ちました。
憧れの紅【紅】
赤の染料は4世紀ごろまでは茜や朱がメインでしたが、五世紀頃「紅花」が加わり、より鮮やかな赤を表現できるようになりました。
紅花染めは、濃い紅色を出す為には何度も重ね染めしなければならず、大変手間がかかり、かつ高価な物でした。
そのため平安時代まで濃い紅染めは禁色と呼ばれ使用禁止されていた特別な色です。
桜色や紅梅など紅染によって作られた美しい色は殿上人の装束に使用され、華麗に彩りました。
紅染は茜染と同様に染められた諧調によって異なる色名がつけられています。
更に時は流れ鎌倉時代になると男性的なはっきりした色が好まれるようになりました。
赤の染料に蘇芳(すおう)や禁色の紅も広く使用されるようになりました。
赤の話
最も古い日本の基本色は「あか、あを、しろ、くろ」です。
中国の書物、魏志倭人伝(ぎしわじんでん)の中には238年、卑弥呼は絳青稴(こうせいけん)と呼ばれる織物を献上したとあります。
絳(こう)は絳(こう)は茜で染めた色の事で、当時より赤は特別な色として用いられていました。
ここでは赤の歴史を掘り下げて、日本の伝統色や日本人の色彩感覚にどのような影響を与えたのか探ってみようと思います。
魔除けの赤
古墳時代には壁画に赤が使われ、壁画や土器などから赤の痕跡が強く残っています。
柩に朱の粉を大量に敷き詰めていた古墳も発見されています。
茨城県ひたちなか市の虎塚古墳では、凝灰岩のうえに白色粘土で下塗りをし、酸化鉄を用いた赤色顔料で模様が描かれています。
この壁画には大きな蛇の目が描かれており、呪術的な意味合いが込められていたとする見方が強いそうです。
先史から古墳時代の人々は、呪術など特別な意味を込めて赤を使用していました。
玉の漢字の成り立ち
玉の漢字の成り立ちは象形文字です。
「3つの美しいたまを縦に紐(ひも)で通した」象形から
「たま」を意味する「玉/⺩」という漢字が成り立ちました。
玉の源流
古代から勾玉は特別なもので、皇位のしるしとされる「三種の神器」の一つです。
奈良時代の初めに完成したとされる『古事記』に玉は登場します。
天岩戸あまのいわとに閉じこもってしまった天照あまてらす大御神おおみかみを外に出すために、鏡作りの女神らが作った大きな鏡と、玉づくりの神が作った勾玉を連ねた玉飾りをかかげて儀式を行い、芸能の女神が舞い踊ります。
そしてのちに、天照大御神は、この時に作られた八尺瓊やさかにの勾玉まがたまと八咫鏡やたのかがみ、そして草薙剣くさなぎのつるぎを、天上界から地上へと降くだる邇邇芸命ににぎのみことに持たせました。
美しい玉(たま)は、魂・霊(たま)に通じる特別なものだったといわれます。
玉(たま)と玉(ぎょく)の違いとは?
「玉(たま)」について
「玉(たま)」は、古代の日本や朝鮮半島で、孔(あな)をあけて連ね、ネックレスなどにしたものです。
現代のようにおしゃれとして身につけたのではなく、大人になったしるしや、社会的な地位を表すため、あるいは魔よけのためでした。
縄文時代の遺跡からは、ネックレスのほか、髪飾り、ピアス、腕輪などが出土しており、古墳時代の人物埴輪(はにわ)にはアクセサリーを身につけた姿をかたどったものもあります。
「玉(ぎょく)」について
玉の「玉」の字は(ぎょく)とも読めます。
玉は、古代の中国で珍重された、半透明で深い緑色をたたえる翡翠(ひすい)などの宝石です。
祭祀(さいし)用の道具やアクセサリーなどが作られました。
「翡翠」の字は鳥の翡翠(カワセミ)と同じ漢字です。
中国で本来、カワセミを示す言葉だった「翡翠」の字を、その羽と色が似ている石にも転用したといわれます。
旧石器時代に玉が出現
日本で玉が出現するのは旧石器時代末頃のことです。
当初は動物の牙や骨を素材にしていましたが、縄文時代末頃にはヒスイを加工した美しい石製の玉が作られるようになります。
弥生時代になると、ガラスをはじめ多彩な材料の玉が現れ、有力者の墓に収める風習が始まります。
北陸、山陰、関東では、玉に適した石材が豊富に産出され、加工技術が発達しました。
古墳時代には、大和に専業工房がおかれ、量産体制が整います。
ところが6世紀、玉作りは出雲に集約され、唯一の生産地域となります。
玉飾りの世界
古墳時代には、膨大な数の多彩な玉が使用されました。
日本の歴史上、玉が最も珍重され、玉文化が発展した時代です。
各地の古墳には、玉飾りで美しく身を飾った有力者たちが葬られました。
祭祀の場でも神秘的な力を持つ玉が捧げられました。
日本の歴史上、玉は神話や伝承、儀礼、信仰に欠かせない存在で、古代の人々は玉に特別な思いを込めていました。
漢字の成り立ち
漢字は中国で発祥し、現在も使われている文字ですが、その起源ははっきりしておらず、現存する最も古いものは、中華人民共和国河南省安陽市にある殷墟から出土した亀の甲羅や獣の骨に刻まれた甲骨文字と青銅器に鋳込まれた金文です。
金文は青銅器に鋳込まれた文字のことで、金文の「金」は青銅のことを指しています。
金文は殷の後期から用いられ、西周では銘文が長いものが多くなり、文字も整えられていきます。
東周時代になると周の権威は失われ、各地方ごとで異なる字体が用いられるようになりました。
伝承では、黄帝に仕えていた倉頡が鳥獣の足跡をきっかけに作ったといわれていますが、あくまで伝説に過ぎずその他にも諸説あり、はっきりしたことはわかっていません。
現在最も古い漢字は甲骨文字
現在最も古いとされている漢字は、歴史を遡っていくと甲骨文字といわれる殷の時代に占いの結果を記したものです。
これは紀元前1300年頃だといわれています。
甲骨文字とは占いの結果を亀の甲羅や獣の骨に刻むために用いられた文字の事です。
絵画的ではありますが、このころから文字構成のもととなる四つがみられ、
- 象形
- 指事
- 会意
- 形声
漢字の基礎となる部分がすでに見受けられます。
紀元前221年に文字の統一
紀元前221年に中国統一を成し遂げた秦の始皇帝が文字の統一を行い、大篆を簡略化した小篆が定められましたが、小篆は複雑で書きづらいため、曲線を直線にして書くようになり筆写しやすい隷書が生まれました。
そして、隷書を続けざまに早書きしたものが草書となりました。
楷書は後漢末に現れ、点画を崩さずに書く均整のとれた書体です。
行書は隷書を早書きした楷書を少し崩したような書体ですが、楷書より先に作られたといわれています。
漢字の伝来
漢字が中国で発祥したのはご存知の方も多いかと思いますが、では日本に伝わったのはいつ頃なのでしょうか?
日本の漢字の歴史を遡ってみましょう。
漢字は4世紀~5世紀頃、朝鮮半島を経て日本に伝えられたとされています。
日本の遺跡からは1世紀頃に造られたと思われる貨泉が見つかっていますが、これを当時の日本人が漢字として認識していたかは定かではありません。
現在日本で確認できる最も古い漢字が使用されたものは稲荷山古墳出土鉄剣です。
1968年に埼玉県行田市の稲荷山古墳から出土した鉄剣で、金錯銘鉄剣ともいわれ471年のものとされています。
鉄剣には115文字の銘文が刻まれていました。
また、漢字の認識については定かではありませんが、3世紀頃の中国の歴史書、魏志倭人伝に日本についての記述があり、使者の往来があったのは確かなようです。
7世紀頃には日本語を表すために漢字の音だけを用いた文字である万葉仮名が生まれました。
本来の字義とは関係なく、日本語の音を表記するために作られたものです。
平仮名と片仮名はこの万葉仮名をもとに作られたものです。
平仮名と片仮名は9世紀頃に作られたといわれています。
象形、指事、会意、形声といった漢字の成り立ちについて
漢字の成り立ちや由来は、知れば知るほど面白い発見があります。
漢字はパーツごとに意味があり、多くの場合、パーツとパーツの組み合わせによって、異なった意味が表されています。
小さな基本のパーツを知ることで組み合わさった漢字になった時に、気づきがあることもあります。
漢字の成り立ちは4種類のに分類されます。
• 象形(しょうけい):目に見えるものの形を線でえがいた絵をもとに作られた漢字です。
• 指事(しじ):形として表しにくいことがらを、点や線で示し、その図をもとに作られた漢字です。
• 会意(かいい):象形文字や指事文字などを二つ以上組み合わせ、もともとの漢字とは別の意味を表す文字となった漢字です。
・ 形声(けいせい):発音を表す漢字と、意味を表す漢字が組み合わさってできた漢字です。
漢字の80%以上は、形声文字です。
まとめ
この記事では、「ルビー」の漢字由来と、その漢字の成り立ちについて解説してきました。
ルビーを表現する漢字をつける際に、禁色と呼ばれ使用禁止の特別高価な赤の【紅】と日本の歴史上、神話や伝承、儀礼、信仰に欠かせない存在の【玉】を用いた古代の人々はその頃から、ルビーが特別な宝石だと知っていたことがわかります。
古代の人が宝物として大切にしてきたルビーは経年変化することなく、世代を越え宝石としてしっかりと価値保存してきた歴史があり、これからも人から人へ受け継がれ、その価値を保存していきます。
ジュエリーの貴金属でつくられた枠の部分は、長く使っていると摩耗や変形など劣化した場合は、枠から外され、また別の枠に装着されますが、ルビーはそのままです。
漢字に込められた「宝物」という意味と共に思い出カプセルとして受け継がれていくのが宝石ルビーです。