どの元素にも、発見の歴史や名称の由来があります。宝石を知るには、どのような元素でできているかを知るとその性質に理解が深まります。元素の語源をしるとその特徴がわかります。
この記事では宝石に関わる元素の語源【ルビーの原料】の語源について調べていきます。
元素の名前はどのようにつける?
発見者に与えられる命名権
私たち人間にも、一人ひとりに名前がついているように、それぞれの元素に名前がついています。古代から知られている元素は、発見年や発見者も記録に残っていません。
そのため、どのように命名されたのかもわからないままです。私たちは、長い時間をかけて定着した名前を使っています。
元素は基本的に発見者に命名権が与えられます。新しい元素の発見者は、その証拠となる化学的なデータを示し、他の科学者がそのデーターを検証していきます。そして、示されたデーターが正しいと認められれば、晴れてその人が元素の発見者となり、発見した元素に名前をつけることができます。
そもそも、語源とは
語根
語源としてたびたび登場するギリシャ語やラテン語は、単語の一部(基本的には語尾)を様々に変化させることで文法的な機能を示すという特徴を持った、屈折語に分類される言語です。
その語の意味を中心部分を表す、変化しない部分を「語根」と呼びます。
語幹
語根に文法機能を表す要素(語幹形成接尾辞)が付加されたものを「語幹」といいます。語幹の語尾がついて単語ができあがります。
ルビーの原料の語源をさぐります。
ルビーは誰もが知る特別な宝石です。
ルビーの名は、ラテン語の「赤い」ruber(ルベル)に由来しています。
ルビーの化学式や構造などルビーについて詳しく知っている方は意外と少ないかもしれません。
宝石のルビーの 鉱物名は「コランダム」構成成分は化学式で、Al2O3です。
構成成分は元素の組み合わせである化学式によって表されます。
家に例えると、柱の組み立て方(結晶構造)と材料(構成成分)で決まります。
サファイアとルビーの原料の由来
コランダム(酸化アルミニウム)にクロムが不純物として1%程度混入し、赤色を呈するものをルビーと呼びます。クロムの代わりにFe(鉄)とTi(チタン)が混入すると青色のサファイアになります。
宝石素材の元素と原子についてはこちらで解説しています。
このことを解明したのは、クロムの発見者のルイ=二コラ・ヴォ―クランです。
①「Al」(アルミニウム)の語源と名前の由来
ルビーと関わりのある元素①「Al」(アルミニウム)の語源と名前の由来について解説します。
アルミニウムの名はラテン語の「明礬」alumenアル―メンに由来します。1761年フランスの化学者ルイ=ベルナール・ギトン・ド・モルヴォ―は、明礬の中の酸化アルミニウムをalumineと命名しましました。1789年フランスの化学者アントワーヌ=ローラン・ドラヴァジエは、これを純物質と仮定してalumineの名で元素表に記載しました。
1807年イギリスの化学者ハンフリー・ディヴィーは、酸化アルミニウムを電気分解してアルミニウムの単離を試みましたが、成功しませんでした。しかしながら、彼はこれが未知の金属元素の酸化物であることを確信し、その金属元素にalumiumという名称を提案しました。そしてその後、aluminiumに改めました。
1825年ハンス・クリスティアン・エルステッドがようやくアルミニウムの単離に成功しました。その2年後の1827年フリードリヒ・ヴェーラーが高純度のアルミニウムを得ました。このような発見上の複雑な経緯のためアルミニウムの発見者は、文献によって異なります。
②「O」(酸素)の語源と名前の由来
ルビーと関わりのある元素②「O」(酸素)の語源と名前の由来について解説します。
ギリシャ語のオクシュス「鋭い、酸っぱい」とゲイノマイ「私は産む」に由来し、「酸を産む」を意味します。これは、非金属元素の燃焼により酸性の物質が生成するため、酸素が酸の元であると誤解したためです。
酸素はイギリスの化学者・神学者ジョゼフ・プリ―ストリとスウェーデンの薬剤師・化学者カール・ヴィルヘルム・シェーレが同時期に発見しました。プレーストリは1775年に酸素を発見し、ただちに発表しました。
一方、シェーレは1771年から1772年にかけての実験で酸素を発見しましたが、出版社の遅滞のため、発表が1777年まで遅れてしまいました。
③「Cr」(クロム)の語源と名前の由来
ルビーと関わりのある元素③「Cr」(クロム)の語源と名前の由来について解説します。
クロムは、1797年フランスの薬剤師・化学者ルイ=二コラ・ヴォ―クランが発見しました。
クロムは酸化状態により様々な色を呈することから、彼の師でフランスの化学者アントワーヌ・フランソワ・ド・フルークロアとフランスの鉱物学者ルネ・ジュスト・アユイの提案により、ギリシャ語の「色」 (クロ―マ)にちなんで命名されました。
④「Fe」(鉄)の語源と名前の由来
ルビーと関わりのある元素④「Fe」(鉄)の語源と名前の由来について解説します。
元素記号Feはラテン語のferrumから来ていますが、その語源は不明です。古代メソポタミアで話されていた、記録が残る最古のセム語派の言語であるアッカド語では、鉄をparzillu(パルジッル)といい、これがフェニキア語の形を経て、現在の形になったのではと考えられています。
フランス語のferやイタリア語のferrumは、ferrumから派生しています。
⑤「Ti」(チタン)の語源と名前の由来
ルビーの兄弟でもあるサファイアに関わりのある元素「Ti」(チタン)の語源と名前の由来について解説します。
チタンの名は、ギリシャ神話の巨人の一族であるティーターン族に由来しています。ティーターンは、天空神ウーラノスと地母神ガイアとの間に生まれた13柱の巨神たちです。
1791年イギリスの牧師でありアマチュア鉱物学者であったウィリアム・グレガーがイギリス・コーンウォール州マナカンの川で採取した鉱物のなかに未知の元素が含まれていることを発見し、マナカイトと命名しました。4年後の1795年ドイツの化学者マルティン・ハインリヒ・クラプロートが独自に再発見し、チタンと命名しました。
まとめ
この記事では【ルビーの原料】の語源について解説してきました。
元素は元素周期表に並んでいる元素名や数字だけ見ても、その本当の意味を理解するのはとても難しいことです。今回は語源を探るという方法で探求してみました。
語源を記憶にとどめるコツを文豪の森鴎外は彼の自伝的小説のなかで、
寄宿舎では、その日の講義のうちにあった術語だけをギリシャラテン語原を調べて、赤インキでぺエジの縁に注して置く。教場の外の為事殆どそれきりである。人が術語を覚えにくくて困るというと、僕は可笑しくてたまらない。なぜ語源を調べずに、器械的に覚えようとするのだと云いたくなる