宝石とされる鉱物がどのようにして形成されるのか、それを知る手がかりは、宝石の原石が含まれている母岩(岩石)にあります。母岩を調べると、宝石ができる大まかな形成のプロセス(起源)を推定することができるからです。
ここでは、宝石・鉱物のできる場所を解説します。
地球の材料=岩石
地球の体積の8割以上が岩石でできています。岩石を良く調べると、大昔に起きた大陸どうしの移動や衝突などの地球の大事件や大気や海の変化、みたこともない地球の奥深くの様子を知る手がかりが得られます。
岩石は鉱物の集合体
岩石は地球を作っている材料です。岩石の多くは、人類が地球に登場するよりずっと前に生まれていました。そして岩石は、壮大な地球活動によって移動し続け、その姿を変えていきます。身近な石ころからでも、岩石の生まれたところ、できたしくみを、たどってきた歴史が読み取れます。
宝石・鉱物が採れる場所は鉱床といいます
金や銅を含む鉱物など、役に立つ鉱物(鉱石)がとれる場所を「鉱床」といいます。
また人の役に立たなくても、地球には多くの鉱物や宝石があり、それぞれ決まった場所で見つかります。
鉱物は、主にマグマや「熱水」からできますが、ある鉱物が、熱や圧力などの作用で別の鉱物になることもあります。
熱水とは?
地中には、雨などがしみ込んだ水がたくさんあり、それがマグマに熱せられて「熱水」になります。また、マグマからできた熱い液体も、熱水です。熱水は周りの岩石の成分(ケイ素や銅)などを溶かし込んでいきます。
やがて冷えたり、圧力が下がったりすると、その成分は結晶して鉱物になります。
鉱物のできる場所を詳しく解説
鉱物ができる場所は10種類あります。
- 熱水脈
- 鉱床の地表近く(酸化帯)
- 温泉、噴気孔
- 火成岩の中
- 海底の熱水鉱床
- 層状マンガンの鉱床
- 広域変成岩
- 接触変成岩
- 塩湖、蒸発岩(化学岩)
- 花こう岩ペグマタイト
以下に詳しく解説します
鉱物・宝石ができる場所①熱水脈
マグマに熱せられた水(熱水)が岩石のわれ目に入り、とけていた成分が結晶したもの。
熱水脈で出る鉱物は以下の鉱物です。
- 金
- 銀
- 銅
- 亜鉛
- 石英(水晶)など
鉱物・宝石ができる場所②鉱床の地表近く(酸化帯)
鉱床が空気に触れる場所では、銅や亜鉛などが酸素や水と反応して、別の鉱物になります。色鮮やかな鉱物がよくみられ、その地下に役立つ鉱物があることの目印になります。
鉱床の地表近く(酸化帯)で出る鉱物は以下の鉱物です。
- 孔雀石
- 菱亜鉛鉱 など
鉱物・宝石ができる場所③温泉、噴気孔
火山の噴気孔のそばでは、マグマは熱せられた水が湧き出して温泉となり、その湯から鉱物が沈殿したり、ふき出したガスから鉱物ができたりします。
温泉、噴気孔で出る鉱物は以下の鉱物です。
- あられ石
- せっこう など
鉱物・宝石ができる場所④火山岩の中
マグマが浅い場所で固まり、成分が結晶します。地下深くでできた結晶が、噴火のいきおいで運ばれ、ここに入っていることもあります。
急に冷えてできる火山岩
地下から上がってきたマグマが、地表や浅い地下で急速に冷えてできた岩石が火山岩です。細かい結晶の中に、角ばった結晶がばらばらに入っているのが火山岩の特徴です。
火山岩の中で出る鉱物は以下の鉱物です。
- ふつう輝石
- かんらん石
- ダイヤモンド
- 頑下輝石 など
鉱物・宝石ができる場所⑤海底の熱水鉱床
海底にしみこんだ海水が、地中深くからあがってきたマグマに熱せられ、熱水となって海中にわき出します。すぐに海水で冷やされて、成分が結晶します。
海底の熱水鉱床で出る鉱物は以下の鉱物です。
- 黄銅鉱
- 閃亜鉛鉱
- 方鉛鉱 など
鉱物・宝石ができる場所⑥層状マンガン鉱床
海底の地殻が動いてきて、大陸の下におしこまれた場所では、海底でできた岩石が層をなしています。その間にはさまれた、マンガンを多くふくむ層です。
層状マンガン鉱床で出る鉱物は以下の鉱物です。
- パイロクスマンガン石
- 菱マンガン鉱
- ばら輝石 など
鉱物・宝石ができる場所⑦広域変成岩
海底近くが大陸の下におしこまれると、大きな圧力がかかるため、中の鉱物が変化し、別の鉱物ができます。押し込まれ、変化する範囲は広大です。
地下におしこまれる
地球の表層を形づくっているプレートはゆっくりと動いていて、広がったり重なったりしずみこんだりしています。プレートのしずみこむところや、大陸同士がぶつかるところでは、地表の岩石が地下にもちこまれ、引き伸ばされり、折り曲げられたりします。
広域変成岩で出る鉱物は以下の鉱物です。
鉱物の粒が並んだり、縞模様をつくったり、一定の方向性を持つ特徴があります。
- 紅れん石
- 苦ばんざくろ石
- 十字石 など
鉱物・宝石ができる場所⑧接触変成岩
岩石がマグマに触れると(接触する)と、その部分の鉱物は熱で変化し、別の鉱物になります。もとの岩石が石灰岩の場合は「スカルン」、泥岩では「ホルンフェルス」といいます。
マグマの熱で焼かれる
高温のマグマが地表近くにでてくることによって、浅いところにある地層や岩石が変化してできる変成岩もあります。地下深くにおしこめられずに温度が高くなるので、プレートのしずみこみでできる広域変成岩とは見かけがことなります。
接触変成岩で出る鉱物は以下の鉱物です。
鉱物のならんでいる様子が見えず、割れ方の方向性もない点が、特徴です。
- 灰ばんざくろ石
- 透輝石 など
- ミャンマー産ルビー
鉱物・宝石ができる場所⑨塩湖、蒸発岩(化学岩)
湖や海が干上がると、水の中に溶けていた鉱物が結晶します。塩湖(塩分が多い湖)では、岩塩などの鉱物ができます。
塩湖、蒸発岩(化学岩)で出る鉱物は以下の鉱物です。
- 岩塩
- ウレックス石 など
鉱物・宝石ができる場所⑩花こう岩ペグマタイト(巨晶花こう岩)
深成岩の中に、特別に大きな結晶が集まっている部分を「ペグマタイト」といいます。
特によく見られるのは、花こう岩のペグマタイトです。マグマが深い場所でゆっくり冷えて深成岩になるときは、固まりやすい成分だけが先に岩石になり、水分やガス成分などはマグマの中に残ります。やがて、水分の特に多くなったマグマの残りから、長石、水晶、トパーズなどの大きな結晶が育ちます。
花こう岩ペグマタイト(巨晶花こう岩)で出る鉱物は以下の鉱物です。
- トパーズ
- アクアマリン
- 煙水晶
- 白雲母など
まとめ
ここでは、宝石・鉱物のできる場所を解説してきました。
鉱物は、壮大な地球活動によって移動し続け、その姿を変えていきます。そして、地球のできたしくみとたどってきた歴史が読み取れます。少しでも、宝石の楽しみ方をお伝えするお手伝いができたら嬉しいです。