【新しい誕生石】4月の誕生石は桜色ピンクの宝石「モルガナイト」 

新しく4月の誕生石に選ばれたのは「モルガナイト」です。

この記事では淡いピンク色が愛らしい宝石、モルガナイトを解説していきます。

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4月の誕生石、モルガナイト

もともと4月の誕生石はダイヤモンドでしたが、ここにモルガナイトが追加されました。

なぜ4月の誕生石に選ばれたのか?日本に住む人なら想像がつくのではないでしょうか。

モルガナイトの色は、この月の花「桜」のイメージに重なる石の色合いです。

北半球の多くの国々が厳しい冬の寒さから解放せれる月でもあり、ホッと心を和ませてくれるモルガナイトの淡いあたたかい色は4月の石にピッタリかもしれません。

引用「深堀り誕生石 宝石大好き地球化学者が語る鉱物の魅力」著者:奥山康子/発行築地書館

モルガナイトの色

桜

モルガナイトの代表的な色は淡いピンク色ですが、その周辺の色も許されています。

紫に寄った淡いライラックでも杏色を思わせるピンキッシュ・オレンジも、モルガナイトにあります。鉱物とは、天然自然の力でできた無機物の結晶です。無機物限定という定義は、鉱物科学が進んで少し変わってきましたが、鉱物界が圧倒的に無機質の世界であるのは確かです。

結晶とは

鉱物の広範囲の性質でもある「結晶」とは、物質を構成する原子が三次元的に規則正しく並んだ状態を指します。内的な規則性に合わせ、結晶は外形もきちんとした幾何学的な形になるのが普通です。多くの面で囲まれた外的な規則性から、結晶を分類する「晶系」という考え方が生まれました。

モルガナイトの兄弟

淡いピンク色のモルガナイトには実は宝石界の兄弟がたくさんいます。

ここで兄弟と呼ぶのは、同じ種類の鉱物であるという意味です。モルガナイトの兄弟には、誕生石に限っても、3月のアクアマリン、そして5月のエメラルドがあります。

3月、4月、5月とモルガナイトとその兄弟が誕生石に並びます。この兄弟たちは「緑柱石」という同じ種類の鉱物です。

緑柱石は日本語名(和名)で、英語ではベリルと呼びます。ベリルは普通正6角形の柱のような形で産します。この形になる結晶のグループを「六方晶系」と呼んでいます。

モルガナイトは新しい宝石

モルガナイトは、20世紀になってようやく発見された新しい宝石です。

1902年、アメリカ、ティファニー社の上級技師ジョージ・フレデリック・クンツ博士は、カリフォルニア州サンディエゴ群のペグマタイトを調査していました。彼はいわゆる幼少のころから鉱物収集に打ち込み、コレクション点数は10歳の頃には4000を超え、しかもそれがミネソタ大学に買い上げられるほどでした。

大学進学の年齢になって芸術系の学部に入ろうとしたのですが、入学の許可が出るころにはすっかり興味を失い、結局進学しなかったという逸話が残っています。

そんな彼の、鉱物学についての才能と美的センスを見出した当時のティファニーの社長チャールズ・ルイス・ティファニーは、彼を技術上の右腕として採用し、宝石鉱物の探索を全面的にサポートしたのです。

クンツ博士が発見したピンク色の石

クンツ博士が調査していた「ペグマタイト」とは、石材に使われる花崗岩(御影石)の拡大コピーのような岩石です。花崗岩を作っているのと同じ鉱物が、数センチメートルから場合によってはメートル級のサイズまで大きく育っています。

隙間の多い岩石で、そこでは鉱物たちが本来の形、つまり自形結晶をなしてのびのび育っています。花崗岩にはごく微量しか含まれず、したがって独立した鉱物を作らない元素が濃集していることもペグマタイトの大きな特徴で、ベリルを作る元素であるベリリウムのそんな元素のひとつです。このため、ベリルは、よくペグマタイトに出てくるのです。

サンディエゴ群のペグマタイトでクンツ博士は、ピンク色で透明な2つの未知の鉱物、しかも宝石向きの性質がありそうな鉱物を見つけました。1つはベリルそっくりの6角形の柱のような結晶です。もうひとつのピンクの結晶に至っては謎だらけでした。

新発見の宝石 モルガナイト

新たに見つかったピンク色の六角柱状の結晶は、やはりベリルの仲間でした。

しかし、そんな色のベリルはそれまで知られていなったのです。鉱物本体としてはすでにベリルとして知られていたので、新鉱物の発見ではありませんでした。この石を新しい宝石として世に出すには宝石名が必要です。

クンツ博士はこのピンク色のベリルに、彼の宝石探索のもう一人の友人であったJ・Pモルガンの名をもらい、「モルガナイト」と名づけました。

ベリルについて

ベリルは、水晶の成分である珪酸、つまりシリカが骨組みを作っている鉱物です。

シリカとは、半導体にも使われる珪素(シリコン)と、空気の1/4を占める酸素が結びついたもので、一個の珪素原子の周りを4個の酸素原子が四面体の形で取り囲んだ姿をしています。珪素は地球の表層近くでは酸素の次に多い元素です。

珪素は他の何とも結びつかない単体としては半導体の材料になるほど面白い特性がありますが、酸素の潤沢な地球の表層近くでは酸素と結びついた酸化物であるほうが安定であり、このため珪素(シリカ)として存在するのが普通です。

珪酸塩鉱物とは?

シリカが骨格をなす鉱物を「珪酸塩鉱物」と呼び、ベリルもその一員です。普通の石は、何かの珪酸塩鉱物が集まった「岩石」と呼ぶもののかけらです。

珪酸塩鉱物は世の中で最もありふれた物といってもよいのです。

珪酸塩鉱物では、シリカの骨格になにか他の金属元素が結びついて鉱物が成り立っています。

シリカが単独でいる場合もありますが、互いに結びついてしっかりとした骨格をなすことの方が多いです。ベリルでは、6個のシリカが手を取り合った6角形が骨格をなします。

ベリルの結晶の6角柱状の外形は、こうした原子レベルでの骨格が姿を現したものなのです。

珪素と酸素からなるシリカ4面体は大きなマイナス電荷を帯びているため、電気的に中立な鉱物になるためには、プラス電荷の「巣」みたいないろいろな金属と結びつく必要があります。

ベリルの場合は、アルミニウムとベリリウムが、その役割を果たしています。

アルミニウムは地球の表層近くではありふれた元素の一つですが、ベリリウムはそうではありません。ベリリウムの存在度は珪素やアルミニウムより何桁も少なく、まれな元素のひとつです。

珪酸塩鉱物は地球の表層近くでたくさん見ることができるのにベリルが珍しい鉱物なのは、このためです。

珍しいということも、宝石の大事な条件です。

ベリルの中は、「海の水のような青緑色の貴石」を意味する古代ギリシア語「ベリロス」に由来するとされます。ですから、三月の誕生石アクアマリンと5月のエメラルドは古来の定義にかなっていますし、宝石向きではないただのベリルも地味な薄緑色であることが多いので、「べリロス」といえましょう。この色と、6角形の柱のような結晶外形から、和名が緑柱石となったわけです。

でも、モルガナイトは明らかに「べリロス」らしくありません。

それでもかまわないのです。なぜなら、「色」は鉱物としてのベリルにとって本質ではないからです。ベリルは本来は、色づく理由のない鉱物です。ベリルを作る珪素も酸素もアルミニウムもベリリウムも、化学的には「典型元素」と呼ばれるグループの元素です。

典型元素の性質のひとつとして、そればかりでできている物質は七色の光が混ざった自然光と相互作用して色を現す性質を持ち合わせない、つまり無色になるということがあります。

典型元素ばかりでできたベリルは、本来無色であってしかるべきなのです。このことから和名の緑柱石は鉱物本来の性質を表さないと考えれら、鉱物学の世界では使うことが勧められなくなりました。本書でも緑柱石とは呼ばないとのはこのためです。

自然界でベリルが、べリロスの名にふさわしい淡い緑色になるのは、実験室とは違う不純な自然環境で鉱物として育つ間にほんの少し不純物の鉄を取り込んでしまうことが原因です。

化学的には複雑というしかない自然界で起きることですので仕方ありません。それどころかこういった現象があるからこそ、本来そっけない無色であっただろうベリルが、多彩な宝石として私たちを楽しませてくれます。

典型元素だけでできた無色の鉱物に微妙な色づけをしてくれる不純物元素は、鉄、マンガン、クロム、ニッケルなど多種多様です。

こういった金属元素は、イオンの状態で水溶液や化合物の中にいると自然の白色光と相互作用する性質を持つ、特別の「電子」を持っています。この特別な電子を持つ性質が、これら元素に金属としての性質をもたらす背景でもあるのです。これら金属元素は、本来無色の鉱物に微量元素として含まれると、それぞれに特徴ある色を発揮します。モルガナイトの淡いピンク色は、ごく微量のマンガンの賜物です。

ここまで「深堀り誕生石 宝石大好き地球化学者が語る鉱物の魅力」著者:奥山康子/発行築地書館 引用

モルガナイト以外のピンク色の宝石

ルビーの色調(ピンク~赤)

ルビークオリティスケール

ファセットカットしたルビーのクオリティスケール 諏訪恭一氏が考案した「宝石品質判定」

大自然の造形美である宝石ルビーは、唯一無二の個性でありルビーの色は、同じように見えても少しずつ違います。なので、宝石の「色見本」はありません。

ルビーの色調も含めた「美しさ」については、クオリティスケールの横軸「S,A,B,C,D」のどこに相当するかという視点で見分けます。

  • 「S」  輝きがあり特に美しいもの
  • 「A」 特に美しいもの
  • 「B」 美しいもの
  • 「C」 欠点はあるが美しいもの
  • 「D」 美しさに欠けるもの

このスケールの「美しさ」という目線は、宝石を観る上で非常に重要です。

なぜなら、美しさという概念は、数値化できないが私たち人間には感じられるものです。

そして数多くルビーを観ていると、美しいルビーは、クオリティスケールのS~Dに当てはまってくるからです。

鑑別業者の発行する分析結果報告書に「ピジョンブラッドレッド」「ピジョンブラッドカラー」とコメントされているルビーがそれほど美しくないという例があります。

それは、色調や蛍光性など、データで表せるものだけで判断するからです。

人に例えると分かりやすいと思います。

美しい人のスペックだけを数値化して枠をつくって、同じ数値の人を選べば、それは美しいのか?といえば、必ずしも、美しくないのと同じです。

ピジョンブラッドルビーは、素晴らしいルビーの呼称であり、色調(色合い)のことだけではないということです。

そして価値の高いピジョンブラッドルビーの色は鮮やかで濃い赤色ですが、濃ければ濃いほど良いのか?といえば、そうではなく、また別のモノサシがあります。

ルビーの色調を決める元素(着色要因)

ミャンマー産ルビーの母岩

ルビーの赤い色を生み出す微量元素はクロム(Cr)ですが、結晶全体の1%~2%の含有率といわれており、4%ぐらいになると赤灰色になってしまいます。

その他、結晶に含まれる鉄分(Fe)もその赤色に影響を与えると言われており、玄武岩起源のルビーに多く含まれます。

タイランド、インド、アフリカ産の玄武岩起源のルビーが紫外線に当たった時に、蛍光性が弱いのは、この鉄分が影響しており、成分分析をすれば分かります。

ミャンマー産ルビーは、成分分析の表では、クロムの量が多く鉄分がほとんど検出されないのに対して、タイランド産などの玄武岩起源のルビーは、クロムと同じぐらいの鉄が検出されます。

ピンクサファイヤとピンキッシュルビーの線引き

ピンクルビー

ピンクサファイアとルビー線引きの定義に世界共通のものはありません。

淡い赤い色のコランダムをピンクサファイアと呼ぶか、ピンキッシュルビーと呼ぶかは議論の余地があります。

淡い赤色のコランダムを業者によってルビーといったり、また他の業者によってはピンクサファイアと呼んだりしますが、この問題の根底にあるのは、ルビーは高額でピンクサファイアは比較的安価であるという部分です。

鑑別書にルビーと記載されるか、ピンクサファイアと記載されるかによって、販売価格が大きく変わるのです。

しかし宝石品質判定の基準を使って品質をキチンと見分けると淡い色のルビーもピンクサファイアも名前が違うだけで、品質は同じ、要するに値段は同じなのです。

ルビー専門店のモリスは、宝石品質判定のクオリティスケールの色の濃淡(トーン)で、#2のものはピンキッシュルビーと呼んでいます。

呼び名で値段が変わる方がおかしな話です。

 

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