【宝石の色について】宝石の色の原因となぜ色づくのかをを解説

宝石の色は物体色で、宝石に光が当たって起こる反応を、人間の目が知覚して色を判断します。

光はX線、紫外線、赤外線、電波などと同じように電磁波です。

宝石の色を正確に伝えるために、この記事では色とはなにかについて解説します。

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宝石の色(人間の目が感知できる可視光)

電磁波はその波長ごとにエネルギーが異なっており、また領域ごとに異なる名前がついています。

このうち、人間の目が感知できるのはごく一部で、波長400nm~700nmの範囲だけです。

これを可視光と呼びます。

太陽からの白色光は、赤色から紫色まですべての波長の光を含んでいます。この白色光が宝石の中を経過する際、すべての波長を透過すればその宝石は無色として見えます。

すべての波長を反射すれば白色に、そしてすべての波長を吸収すれば黒色に見えます。

また、すべての波長にわたり可視光線が等量吸収されると灰色にみえます。

これらが無彩色のグループです。一方、有彩色の場合には、その中の特定の波長が吸収され、残りの波長が透過あるいは反射され、残りの波長の複合が、その宝石の色としてあらわれます。これは、白色光の場合です。

同じ物体でも白色光とは異なる波長成分の光(光源)が当たると、宝石の色を違って見える。このように物体色を決定する光源の性質物体色を決定する光源の性質を演色性と呼びます。したがって、色の比較をするためには標準光源が必要になります。

一般に、光源の色は色温度であらわし、それを目安とすることが多いです。

宝石の場合も例外ではなく、ルビーやアメジストなどは、タングステン・ライトのように赤味の強い光源と、蛍光灯のように青色の強い光源では、まったく色調が異なって見えてしまいます。

宝石の色の見え方と呼称

無色・白色・灰色・黒色が無彩色で、無色は透明体に、そして白色は半透明~不透明帯に対してつ使われる言葉です。これらの違いは明度差によります。

有彩色は色の三属性、色相(色合)・明度(色の明るさ)・彩度(色の鮮やかさ)で定量的に表現されます。

それぞれの色が最もその色らしく見える明度と再度の位置は色相によって大きく異なります。

赤色・橙色・黄色などの本来明度、彩度が高い位置にある色では、明度および彩度変化の影響が大きいです。

そのため、同一色相内に印象のまったく異なる色が出現します。たとえば赤色色相では、中明度・高彩度は赤色として見えるが、明度が高く彩度が下がるとピンク色に、明度も彩度も低くなるとあずき色に見えるようになります。

また橙色色相では、高明度・高彩度ではオレンジ色であるが、明度が同じでも彩度は下がると肌色に明度、彩度ともに低くなると褐色になります。

緑色、青色、紫色などもともと中明度・中彩度の色では、明度と彩度が変化しても同一の色相におけるカラー・ボーダーが問題となります。

たとえば、赤色のルビーとピンクあるいはパープルのサファイアの境界をどこに定めるかなどがこの種の問題です。

有彩色を客観的に判断するためには、色の3属性を十分理解しておくことが基本です。

色を定性的に表現して呼ぶ場合も同じで、それぞれの色について、およその3属性を示した呼び方が一般色名(分類色名)で「色相に関する修飾語+明度、彩度に関する修飾語(トーン)+基本色名」の形で表現される。

色相に関してはそれぞれ「帯赤(赤色の)、帯黄(黄味の)、帯緑(緑味の)、帯青(青味の)帯

紫(紫味の)」と表現し、明度・彩度に関しては「冴えた(鮮やかな)vivid・明るいbright・強いstrong・濃いdeep・浅いlight・鈍いdull・暗いdark・淡いpale・明るい灰色味のlight grayish・灰色味のgrayish・暗い灰色味のdark grayish」とあらわされます。

基本色名は4つずつの純色および中間色「赤色、橙色、黄色、黄緑色、緑色、青緑色、青色、青紫色、紫色、赤紫色」です。

これに対して、動物、植物、鉱物などをはじめ、実際の実物にたとえられた呼称が固有名色(慣用色名)です。

宝石の色の原因

可視光の選択的吸収を引き起こす原因を着色原因と言い、さまざまな種類があります。

宝石の色は、複数の着色原因が組み合わさった結果があることが多いです。

ここでは主な着色原因の5つを解説します。

  1. 遷移元素
  2. 電荷移動
  3. 着色中心
  4. 禁止帯幅着色
  5. 有色インクルージョンの存在

物質に色がついて見えるのは、その物質が可視光のある波長を吸収するからである。物質によって光の吸収が起こるのは、物質中の電子electronが光のエネルギーの一部を吸収し、吸収されなかった波長が透過するからです。光は波長ごとに違ったエネルギーを持っています。

物質を構成する原子は原子核とその周りの複数の軌道(電子殻electric-shell)上を動く電子からなります。一つの軌道には最大2個までの電子が存在し、そのエネルギー準位は電子殻ごとに一定で、隣の電子殻とは異なっています。電子が所属する軌道の中にとどまっているときは、そのエネルギー準位は最低の状態にあります。この状態を基底状態と呼びます。

電子がより高いエネルギー準位に移動します。(隣の電子殻に移る)と、その電子は励起状態excited stateにあると呼ばれ、相互の準単位の差に相当する一定量のエネルギーを獲得、つまり吸収することになる。逆に、物質に光が当たると、可視光のエネルギーが加えられるので、電子を励起状態へ移すことができます。このとき必要とされるエネルギー量が可視光のある波長と一致すれば、その波長が吸収されます。その結果、透過する光は残った波長だけとなり、宝石に色がついて見えることになります。

①遷移元素

宝石のもっとも代表的な着色原因は、8種類の遷移元素が宝石の主成分あるいは微量成分として含まれていることによります。

普通、一つの電子殻には電子が2個入ることができ、内側の電子殻から順次満たされていきます。

2個の電子が入った電子殻のことを閉殻とよび、その中では電子ペア(電子対)で存在します。

ところが、遷移元素では、電子が一つしか入っていない電子殻が内側に存在します。この電子殻中の電子はペアをなさず、それゆえ不対電子と呼ばれるますが、化学結合から受ける制御の影響が小さい(より高い準位へ移るのに必要なエネルギーが小さくてすみ、容易に励起状態になることができます)そのとき、吸収されるエネルギーと可視光の波長はよく一致しているので、色の原因になりやすく、遷移元素が着色の原因となるのはこのような理由です。

同じ遷移元素でも、周りの結晶構造によって、電子がより高準位へと移るためのエネルギー量は違ってくる。これを結晶場の影響といいます。

不純物のクロムが、コランダムではルビーの赤い色の、ベリルではエメラルドの緑色の原因になるのはこのためである。

遷移元素が着色原因となる宝種は数多い。宝石の化学組成の主要部分を構成するものとして含有される遷移元素が着色原因となるものを自色と呼びます。良く知られているのがトルコ石やマラカイトであるが、この種の宝石はたとえ微妙な色合いの違いはあったとしても、基本的には同じ色を示す。したがって色名をつけないで呼ばれています。

一方、主成分として遷移元素を含まない宝石は、化学的に純粋であれば、無色透明あるいは白色となります。しかし、この中に不純物として微量の遷移元素が含まれると、さまざまな色があらわれ、バラエティーごとにその色が異なります。この種の宝石を他色といいます。

②電荷移動

実際の電子は、隣り合ったイオン間で移動することができる。電荷の異なる複数の遷移元素のイオンが、宝石の中に含まれていると、電子はそれぞれのイオン間を移動し、一方のイオンから他方のイオンへと電荷も移動します。

このとき、電子が必要とするエネルギーに相当する波長の光が吸収されると、残留色が現れます。ブルーサファイアでは、主成分のAI(アルミニウム)の一部を、不純物元素のFe(鉄)とTi(チタン)が置換すると、FeとTiの間で電荷が移動してともに3価となり、青色があらわれます。このような原因の着色を電荷移動といいます。

電子が移動して、移動に必要なエネルギーに相当する赤色から黄色の可視光が吸収される結果、青色に見えます。

③着色中心

宝石の多くは結晶で、それぞれ固有の構造を持っています。

結晶構造の図はモデルのようなもので、原子は整然と並び一点の乱れもないように描かれていますが、現実の結晶の中では、原子の並びに狂いが生じています。これを格子欠陥と呼び、点状・線状・面状の格子欠陥あり、その中で、色の原因になるのは点状の格子欠陥で、とくにイオン結晶における格子欠陥で、とくにイオン結晶における格子空孔(正規の格子位置から原子が抜ける欠損)は、光の吸収を担う着色中心として重要です。

結晶は放射線照射を受けると格子の一部が壊され、点欠陥が新しく生まれ、その結果着色中心できて着色あるいは変色します。その原因が地質学的スパンでの自然放射線であっても人工的な放射線処理であっても同じです。

このような色はまた、熱や光などにより着色中心の状態が変化すると消えるが、宝石種によりその安定度は大きく違う。中には容易に褪色してしまうものもあります。

着色中心が色の原因となっている宝石種は多いが、遷移元素の存在と相乗的な役割を果たす場合も少なくないです。

④禁止帯幅着色

金属結晶においては、原子間は金属結合です。

この結合様式では、電子は個々の原子ではなく、固体全体に所属し、固体中を自由に動くことがでいます。(自由電子とよばれる)これが金属の持つ高い熱、または電気伝導や不透明性などの原因です。

そのため、ごくわずかなエネルギーが与えられるだけで、より高い準位への移行が容易におきます。①~③で解説した着色原因はすべて、絶縁体に関するもので、この中では電子が個々の原子やイオンに所属している。金属と絶縁帯の中間に位置するのが半導体で、その場合、不純物や点欠陥の存在によって自由電子が生まれ、個々の原子に所属する電子と自由電子が共存する状態になります。

この時、純粋な場合には本来絶縁体である物質も、電気的な伝導性を示すようになる。これは、半導体では電子が自由に動ける帯(価電子帯、伝導体)と動けない帯(禁止帯)の間のエネルギー差が小さいために起こる。

宝石における禁止帯幅着色の代表側はダイヤモンドですが、微量のホウ素が含有された場合にはIIb型のブルーとなり、このタイプは半導体です。

⑤有色インクルージョン

①~④で述べた着色原因は、宝石の本質的な色にかかわるものです。

しかし、宝石によっては、もともとのボディ・カラーではなく、高密度で含まれたインクルージョンの色が、その宝石の見かけの色として見えるものがあります。

「この記事の主な参考書籍・参考サイト」

  • 「ジュエリーコーディネーター検定2級 テキスト」著者露木宏、他20名共同著/発行:社団法人日本ジュエリー協会刊)
  • 「図説 鉱物の博物学第2版」著者:松原聡/宮脇律郎/門馬綱一 / 発行:秀和システム

まとめ

この記事では宝石の色を正確に伝えるために、色とはなにかについて解説してきました。

ルビーの色ランクについてはこちらで詳しく解説しています。

赤い石についてはこちら・青い石についてはこちらで詳しく解説しています。

 

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