ルビーの元素は?アルミニウムと酸素の酸化物が美しい色になる理由

なぜ宝石ルビーが美しい色をだすのか、気になる方は多いと思います。

その秘密は「遷移元素」と呼ばれる元素の一員がポイントになってきます。

この記事ではルビーの元素について詳しく解説していきます。

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遷移元素と宝石の色について

遷移元素と宝石の色について

遷移元素が存在することと、宝石の色についてどういう関係があるのでしょう。

同じ元素であっても、どういう母材の中に入っているかによって発色の効果が全く違うということのあります。第四周期の遷移元素であるクロムは、珪酸塩鉱物であるひすいやエメラルドでは緑色の発色のもとでしたが、酸化鉱物であるルビーでは一転して鮮やかな赤い色のもとになっています。その理由を解説します。

クロムは第4周期の遷移元素

ルビーでは微量のクロムが宝石の発色を担っている紹介しましたが、これらの元素は第4周期の遷移元素です。

宝石も、酸化化合物や珪酸塩鉱物などというある種の化合物です。その中の遷移元素は酸素や珪素という他の元素と結びつき、囲まれた状態にあります。

遷移元素のd軌道の電子はすでに原子核からの束縛が弱くなっているのですが、加えて化合物の中にあることから、結びついた相手元素の原子核からもエネルギー的に影響されるようになります。この結果として、遷移元素のd軌道はエネルギーの高い軌道と低い軌道の2つに分裂してしまいます。

この分裂した軌道のエネルギーの差は、問題とする遷移元素の周りの状態、他のどんな元素がどのように取り囲んでいるかということに依存しますが、大体可視光(白色光)のエネルギーの程度の差です。

こういう関係があるため。遷移元素を含む物質に可視光が当たると、低エネルギーの軌道にいたd電子が光のエネルギーを吸収して、高エネルギーの軌道にジャンプする現象がおきるのです。これを「d-d遷移」と呼びます。

この現象のため、遷移元素を含む物質を透過してきた、あるいは物質から反射されてきた光では、白色光の一部の特定の波長(エネルギー)が吸収されてしまいます。

これを「選択吸収」と呼びます。選択吸収の結果、物質からみた私たちの目に届く光は白色光から一部が吸収された残りの部分となり、物質が色づいて見えるのです。

d軌道の分裂の程度は遷移元素の周りの状態、つまり周りに他のどんな種類の元素がどういった具合に配置されているかによって決まります。

ルビーはアルミニウムと酸素が結びついた酸化物

ルビーの化学式

コランダムは、アルミニウムと酸素が結びついた酸化物で、化学の世界では「典型元素」と呼ばれるグループの元素だけからなる、本来無色の鉱物です。

典型元素の性質の一つとして、そればかりでできている物質は七色の光が混ざった自然光と相互作用して色を表す性質を持ち合わせないので無色になります。

自然界で含まれる不純物

実験室とは違う不純な自然環境で鉱物が育つ間にほんの少し不純物が含まれることがあります。

典型元素だけでできた無色の鉱物に微妙な色づけをしてくれる不純物元素は、鉄、マンガン、クロム、ニッケルなど多種多様です。

このような金属元素は、イオンの状態で水溶液や化合物の中にいると自然の白色光と相互作用する性質を持つ、特別な「電子」をもっています。

この特別な電子を持つ性質が、これらの元素に金属としての性質をもたらす背景でもあります。

これらの金属元素は、本来無色の鉱物に微量元素として含まれると、それぞれの特徴ある色を発揮します。

元素と電子

元素は、中心のプラスの電荷を持つ原子核の周りを、マイナスの電荷を持つ電子が原子核の電荷と釣り合う数だけ回って成立しています。

元素についてはこちらで解説しています。

原子番号の小さな原子では、電子は単純なルールに従って一個ずつ、割り当ての軌道を埋めていきます。この性質のため、元素の化学的な性質が系統的に変わり「族」が成立します。

原子番号が増え、周期の番号が大きくなるにつれ、電子の入る軌道は原子核から離れた遠方になって原子核の束縛が弱まり、このため電子の入り方のルールが複雑になります。

ナトリウムから始まる第3周期電子を所容するのは「M核」よ呼ばれる電子殻で、中には「3s」「3p」「3d」という3種類の電子軌道があります。

第3周期は8種の元素

これらの軌道を全部使うと最大18個の電子が収まります。18種類の元素があってもいいのですが、実際の第3周期にはナトリウムからアルゴンまでの8種の元素しか存在しません。

あと10個の電子を収めることのできる3d軌道は、実際には次の第4周期で使われるのです。

第4周期では、「N核」を呼ばれる電子殻を使い、その中の「4s」という軌道から電子が入ります。4s軌道は2つまでしか電子が入らないため、この軌道を第4周期初めのカリウムとカルシウムで使い切ってしまうと、続くスカジウム以降では電子は別の軌道に入らねばなりません。この時に使われるのが、周期本来の「4p」と呼ばれる軌道ではなく、第3周期で使われなかった3d軌道なのです。

ここで不規則性が発生します。スカジウム二続く元素では電子が順ぐりに3d軌道に入っていきますが、中にはクロムや銅のように一度いっぱいにしたはずの4s軌道から電子の1個が3d軌道にお邪魔して成立する元素もあります。こういった遷移元素に対して「電子の入り方が規則正しい」と表現してきた「典型元素」たちは、周期番号のついた軌道を順に電子が埋めていって成立しています。

地球の中で宝石ルビーができるまで

クロムの入るルビーの産地

特別なミャンマー産ルビー

ミャンマー産ルビーの母岩

ミャンマー産ルビーが一番高く評価される理由は、結晶する時の環境が「接触変成岩起源」のため、元素クロム(Cr)を多く含む地質地下40㎞の深いところで結晶したからです。

ルビーの赤色には、クロム(Cr)と鉄(Fe)の割合が関係しますが、鉄分の多い地下20㎞と地殻とクロムの多い地下40㎞ではルビーが結晶する時の環境が違うということです。

ミャンマー産ルビーは、365nmの紫外線にクロムが反応して鮮赤色にまるで電源を入れたように輝きます。

これはFluorescence(フローレッセンス)と呼ばれる性質で、ピジョンブラッドルビーの条件の一つです。

クロム(Cr)とアルミニウム(Al)の出会いは地球化学的に奇跡

ミャンマー産ルビーは、クロムとアルミニウムという、一緒に存在し難い元素が奇跡的に偶然出会うことで、ルビーの結晶ができています。

コランダムの結晶は成長段階でクロム(Cr)が混入した場合は赤く輝くルビーとなります。

ルビーは微量のクロム(Cr)を含有していますが、この元素はコランダム(化学式:Al2O3)の主元素であるアルミニウム(Al)とは地球化学的に相反する性質を有しています。

アルミニウムは地球の表層部あるいは大陸地殻と呼ばれる陸地を形成する地域に多く存在するのですが、クロムは地球の深部あるいは海洋地殻と呼ばれる海底を形成する地域に分布する傾向にあります。

原産地については、宝石種と同じように、鑑別業者へ分析を依頼することができ、専門的な機器を使った分析が可能です。

ルビーの産地については、専門の宝石研究所、鑑別業者に依頼して分析結果報告書(鑑別書)を取るのが良いでしょう。

まとめ

この記事ではルビーの元素について詳しく解説してきました。

化学の世界でいう遷移元素が宝石ルビーの色の発色の鍵を握っていることがわかりました。

ルビーのひとつづつの品質についてはこちらで詳しく解説しています。是非参考にしてみてください。

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