「ジュネーブで開催されたサザビーズで、5ctのルビーリングが何億円で落札された!」とインターネットニュースなどで話題になり、「ひょっとしたら私のルビーの指輪も高く売れるのではないか…」と思い、近くの買取り店に持って行ったら、驚くほど安く買取り価格を提示されてショックをという経験もあるのではないでしょうか?
今回は、ルビーの買取りとは何か?その時に提示される金額が適正なのかどうか?について知っておいた方が良いポイントを解説したいと思います。
ルビーの買取りとは?
ルビーの買取りとは、今持っているルビーを売って現金を受け取ることです。
このように説明するとシンプルで良いのですが、例えば…実際にいまルビーの指輪を持っていて、手放そうかな?と考えている人からすると、どのくらいの値段で、どこで手放すのが良いのか?全く分からないと思います。
手放す側の動機としては、
・あまり気に入っていないから、不要だから現金に換えてしまおう。
・お金が必要になったので価値がありそうなものを換金しよう。
・私が持っていても価値が分からないから、価値が分かる人に譲ろう。
手放す人がいれば買いたい人もいる
手放す人には、色々な理由がありますが、売りたい人がいれば、買いたい人もいます。
「高く買います!」という看板を出し、商品をみて買取り価格を出すのが「買取りのお店」です。
買ってばかりのお店だとお金を使うばかりじゃないですか?という素朴な疑問が浮かんできそうですが、心配する必要はありません。買取った商品(ルビーの指輪)は、販売するルートがあるので、ビジネスとして成り立っているのです。自動車の買取センターがあるのと同じです。宝石ジュエリーも還流していく商品なのです。インターネット上で検索すると沢山のお店の情報が出てくると思いますが、手放したい方々がいる一方で、それを再度、流通させる仕組みがあるので、商売として成り立っているのです。
買取り後の販売ルート
・アンティーク、ビンテージと呼ばれて、そのままの形で販売される。
・オークションなど競売にかけられて販売される。
・買取った商品をバラバラの素材に戻し、新たに作り直され販売される。
買取りをする方の立場から考えると、少しでも安く買い取りたいでしょう。しかし、あまりに低い金額を提示すると「そんな安いのであれば持っておこう…」「もっと他に高く買ってくれる買取り店はないか?」と売ってくれなくなります。売ってくれなければビジネスが成り立たない。これが「高く買います!」という文言を町中の看板やインターネット上で多く目にする理由です。
買取りとは、このような買取った宝石ジュエリーを再度、販売する仕組みがあり、成り立っているのですが、今回の主題である「ルビー買取り」と検索すると「ジュエリー買取り」や「ダイヤモンド買取り」と比べて広告の数が一気に少なくなると思います。その理由は、宝石ルビーは、価値判断が難しい宝石の代表格だからです。見た目は同じように美しいのに、実際に価値判断をすると1000倍の差になることも普通にあり、非常に難易度の高い宝石であり、専門的な経験や知識に基づいた査定ができないと扱うのが難しいとされます。
ルビーの買取り価格に高低差が大きくつく理由
ルビーの買取り価格で、思っていたよりも高いのは…
天然無処理で美しいミャンマー産ルビーは、思っていた値段よりもはるかに高く手放すことができることで知られています。5ct以上のジェムクオリティであれば1億円以上するものも珍しくはありません。
人工合成石がルビーを本物として大切にしている人が多い
宝石でないものを宝石だと信じていたため、期待していた値と大きく違うためガッカリする。
天然無処理ではなく、人為的に処理をして美しさを改良しているルビーであることを知らずに大切にしている人が多い
ルビーは、一般的に流通してきたものが「人工合成石」か、もしくは「処理をして美しさを改良したもの」であるため、買取りする側が、ジュエリーとしての査定はできても、処理されているかどうかの判断ができないため、宝石ルビーとしての査定ができない。
処理が必要なルビー
査定価格が、驚くほど低い理由
①天然無処理ではないルビー
ダイヤモンドでは、天然無処理なのが当たり前ですが、ルビーはそうではない…
これまで一般的に流通するダイヤモンドは、そのほとんどすべてが「天然無処理」のものであったため、人工合成石、処理石を同じように取り扱うことはありません。ルビーについては、その全く逆で、流通するほとんどのルビーには、美しさを改良する目的で人為的に処理をしたものが一般的です。鑑別業者が発行する分析結果報告書に、「一般に流通するルビーには加熱処理が行われています」などのコメント、2000年前後の書類であれば、「天然ルビーは一般的にエンハンスメントが行われています」とコメントされていました。どちらにしろ、ほとんどすべてが「天然無処理ではない」のがルビーであり、ダイヤモンドとは全く逆です。ちなみにダイヤモンドの場合、処理していると分かると宝石としての価値はほとんどゼロになることからも宝石は天然無処理であることの重要性が分かります。
②そもそも天然の宝石ではない
1900年代初頭に販売された人工合成石問題がルビーの格を下げた。
人工合成石が約130年前にフランスからルビーとして販売され、それが世界中に広まりました。
宝石ジュエリーとしては先進国であった「おフランスのルビー」として世界を席巻しました。
発売当時は、ブランド価値によって天然ルビーより高く取引され商業的には成功したのですが、手放す際に宝石としての価値がほぼ無いため「宝石には価値があってないようなもの…」という不名誉な言葉が世の中に広がってしまいました。ルビーとして販売された人工合成石が宝石としてのイメージを大きく損ねる原因になりました。人工合成石であっても経年変化がないため100年以上経ってオークションなどに出品しようとすると受け付けてくれないことなどにより、宝石ルビーだと思っていたものが違ったと気づくケースが多いのが残念なところです。
ルビーを手放す時に気を付けたいこと
前述の通りルビーには、様々な種類の合成石、処理石があるため通常の宝石ジュエリーの買取りをしているお店では正確な価値判断が難しい場合があります。いろいろな理由で手放すことになった場合でも、適正な価値判断してほしいと思うのが持ち主の気持ちです。そこでルビーを手放すときに気を付けたいポイントをご紹介します。
宝石ジュエリーの買取り店ではなく、宝石ルビーの品質判定ができるお店を見つける
宝石ジュエリーとして買取りを依頼した場合、装着されている宝石を一般的な色石として査定するか?
宝石ルビーとして品質判定をした上で査定するかによって評価価格が大きく違ってきます。
例えば、1ct以上のルビーの指輪であった場合、そのルビーの品質が、GQ(ジェムクオリティ)だった場合、買取価格が、200~500万円になることもありますが、AQ(アクセサリークオリティ)だった場合は数万円になることもあり、宝石の価値によって査定価格が大きく違ってきます。
複数のお店で買取り価格を査定してもらう
もちろん一番査定価格が高いお店で手放したいはずなので、数か所で査定してもらうのが良いでしょう。それぞれのお店によって得意な宝石の種類も違います。
宝石ルビーを手放す方法を複数紹介してもらう
宝石を買い取って、転売することを目的とするお店(買取り店)があれば、プロの宝石商がいるお店もあります。プロの宝石商は、手放す際に、買取りをするときの査定額を提示してくれるだけでなく、オークションに出品できる宝石ジュエリーかどうか?など、換金する方法をアドバイスしてくれるでしょう。
ルビーを手放すときに気を付けておきたいことは、宝石ルビーは見た目で価値判断するのが非常に難しい宝石なので、査定する人が価値の分からない場合が多く、とても高い価値があるルビーであることが見逃されることがあります。適正な価値判断をしてもらうためにも品質判定できるお店を探しましょう。
ルビーの買取り価格は何で決まるか?
ルビーの買取り価格については、まずルビーの品質を見分ける必要があります。
宝石の品質(ルビー)は、
①宝石の種類: その赤い石の宝石の種類(天然ルビーなのか、他のものなのか)
②原産地: どこの産地か?(ルビーは産地によって価値が大きく違います)
③処理の有無: 天然無処理? 加熱処理? 重度な処理?
④美しさ: 色調、透明度、彩度、色むら等々
⑤色の濃淡: ルビーとして適切な色の濃さか?
⑥欠点: 破損につながるような内包物の有無や衝撃に弱い形等々
⑦サイズ: 縦横深さの3つのサイズ
の7つの項目を観ることで品質を判定することができます。これによって宝石の品質が分かりますが、買取り査定額に直接影響を与える価値判断ができるわけではありません。
そのルビー(宝石)の価値判断をするためには、需要と供給のバランスや伝統と慣習などを分かっておく必要があります。
モリスルビーの場合は、天然無処理で美しいミャンマー産ルビーの供給を実際に理解するために、ミャンマーのルビー鉱山の採掘権を取得し5年間、最北部カチン州のNam-Ya鉱山を採掘し出現率の調査を続けました。ミャンマーの現地法人であるモリスは現在もルビーの供給について把握し、また需要については、東京銀座、京都三条にある自社のルビー専門店、そして世界各地で開催されているSotheby’s(サザビーズ)やChristies(クリスティーズ)、そして日本国内では毎日オークションなどの還流市場にて調査を続けています。これにより、今現在のルビーの査定ができるということです。
しかし、一般の買取りをする業者、手放そうと考えている人にとって、需要と供給のバランスをいつも把握することは、ほぼ不可能です。その時に便利なのが、日本クラフト宝飾学院やNHK文化センターなどでも有名な「宝石品質判定」です。宝石品質判定では、クオリティスケールというモノサシを使って、最高品質のGQ(ジェムクオリティ)、高品質のJQ(ジュエリークオリティ)、宝飾品室のAQ(アクセサリークオリティ)の3つに分け、そしてそれぞれの品質の相場を価値指数で表すという仕組みです。価値比較表に記されている数値から買取り査定額を割り出すことができます。モノサシがあることで、値段の仕組みが良く分かります。モリスルビーでも、原産地の鉱山でフルに使っていたもので、宝石品質判定のクオリティスケールに何度も助けられた記憶があります。{詳しくは、宝石の品質判定(宝石ルビーの色の種類や色見本【ランク・値段・価格・価値について】 | モリス公式HP)をご覧ください}
このように、ルビーの買取り価格(査定額)は何で決まるか?については、そのルビーの品質と需給のバランスによって決まります。そして、ルビーを買い取った業者や会社は、次に転売できないと仕事になりませんので、経費などを差し引いた額を提示することとなります。
ルビーを買う時に気を付けておきたいこと
ここまでルビーの買取り、手放す際の注意点、買取り価格は何で決まるか?について解説してきましたが、ルビーを手放す時に役に立つのは、逆のパターンでルビーを買う時に気を付けておきたいことです。
安心して相談できるお店を探すところから始める
・宝石品質判定で、目の前にあるルビーの説明をしてくれる。
・手放すときにどうしたら良いか?についても事前にアドバイスができる。
・好きなルビーを選べる環境を用意してくれる。
ルビーを買う目的を明確にする
①何かの記念日の思い出として着けておきたい。
②長く使い、思い出を詰め込んで、いつか子供や孫に受け継いでゆきたい。
③パーティなどで皆に褒められたいので高そうに見えるものが欲しい。
④パワーストーンなどお守りとして何か力をくれそうなので着けたい。
等々、色々な目的でルビーを探されると思いますが、①~④のどれも購入するときのお店が違ってきます。例えば②の長く使い…の場合は、受け継いだ後に手放すことがあるかも知れません。今回は、ルビーの買取りについて解説してきましたが、前述した100年前は値段が高かったが、今は1ctあたり2~300円で購入できる人工合成石だったという話、現在では買取査定額は限りなくゼロに近い、査定に持ち込んだ時に、元持ち主だった人の思い出にキズがつくことになります。②の目的の方は、天然無処理で美しいルビー、できればミャンマー産にされることをおすすめします。
パーティーなどで皆に褒められたいので…③の方は、欧米の有名ブランド店などでよく知られている形の宝石ジュエリーを探されるのが良いでしょう。品質の高いルビーを着けても誰も気づいてくれません。
見た目が重要なのでそれでいいのですが、ジュエリーの枠が古くなって別の枠に作り直すときに、ルビーを取り外すことになり、その時の評価は素材の評価になります。~のブランドについていたルビーだ…といっても意味はなくなりますので注意が必要です。
ルビーを買う時に気を付けておきたいこと…を解説してきましたが、今回は、その逆のルビーの買取り、手放すときの話です。ルビーのついた有名ブランドのジュエリーであれば、枠から外すことなく、そのまま箱や保証書と一緒に売りに出すことがポイントになります。
ブランドとしてはあまり有名ではないが立派なルビーがついているジュエリーなどの場合
- 天然ルビーであるか
- 処理がされているかどうか
- 産地はどこか
上記の項目に詳しい宝石商、または鑑別業者に依頼して見分けてもらうことをおすすめします。
そして、「天然無処理で美しいミャンマー産ルビー」だということが分かったら、宝石ジュエリーとして買い取るお店ではなく、宝石の事に詳しいプロの宝石商がいるお店に持ち込んで買取り査定してもらう方が高い金額でルビーを手放すことができるでしょう。
宝石ルビーを観る眼がある宝石商をどうやって見分けるのか?
一番簡単なのは、ルビーの指輪をお持ちの方であれば、それを着けてお店に行って観てもらうことです。
- 宝石の種類: 天然ルビーなのか?人工合成石なのか?ガラスなのか?
- 処理の有無: 加熱処理やほかの処理がされているか?
- 原産地: そのルビーがどこで産出されたものなのか?
- GQ(ジェムクオリティ)かJQ(ジュエリークオリティ)、AQ(アクセサリークオリティ)なのか?
について、鑑別書などが無くても言い当ててくれるかどうか…それでプロフェッショナルかどうかが分かるでしょう。
まとめ
「ルビーの買取り」について、逆の「ルビーを買う時に気を付けたいこと」も含めて解説してきましたが、宝石ルビーは、長く使って価値を保存することができる「格の高い宝石」で、買う時も売る時も高額なのは、美しいだけでなく、希少性が高く、価値保存することができるからです。しかし「ルビー」という商品名が同じであっても色々な種類のものがあることも知っておくことが大切です。