宝石にはそれぞれ「和名」があるのをご存じですか?
宝石の和名を知りたい方は意外と多いです。
この記事では、宝石の中でも特別なルビーの和名を詳しく解説します。
ルビーの和名について、また日本人が憧れた赤色についてや、鉱物の和名・日本名についてご紹介します。
宝石ルビーの和名と名前
ルビーの和名は「紅玉」です。
名前の通り美しい赤い宝石であることからこの名前が付けられました。
数々の色の中でも、紅色は歴史や色の豊富さなど、日本人にとってとりわけ関わりの深かった色とも言えます。
四季のうつろい、地理的、歴史的、文化的背景などさまざまな影響を受け、日本の伝統色とされている「紅色」は赤の中でも特別な色です。
古来、日本人は、色彩や色の表現について特別な感情や独自の感性を持っていました。
【紅】の語源
古代の日本で「いろ」といえば、赤色でした。
「紅」は赤い色の鮮やかさを強調する時に使うものと言われ、「紅葉」など赤の鮮やかさを強調したい時に使われることが多い言葉です。
くれないの語源は、「紅花(べにばな)」の異名「くれのあい」の変化とされています。
紫色の色調が加わることで、赤い色の鮮やかさが際立つ「紅」という美しい色は特別な色でした。
日本人も憧れた「紅色」
日本国旗である日章旗、いわゆる日の丸の赤い色に決まりがあることはご存知でしょうか?
実は、日の丸の色は「赤」ではなく「紅色」と定められているのです。
「赤色」にしてしまうと、その意味する範囲が広くなってしまうため、鮮やかな赤を指す“紅色”になったようです。
そんな「紅色」は、古来衣服などあらゆるものに使われてきた日本人にとって非常に馴染みのある色であり、かつ羨望の色でもありました。
紅色は染織に手間がかかるため希少な色であり、特に濃い紅色は一部の貴人のみしか着用を許されない禁色(きんじき)でしたが、貴族たちの間で衣服や化粧品用として大人気になり“流行”の意味を持つ“今様”という言葉を冠した「今様色」と呼ばれるようになりました。
あまりの人気ぶりに、延喜18(918)年には紅花の使用を禁止したほどです。
地位や身分を示す色を「位色」といい、それぞれの位階に相当する色を「当色」と言いました。
「当色」より上位の色の使用は禁じられ(禁色)、色彩が明確に位階と結びついたことによって、色に対する社会的な価値観も生まれたのです。
そんな紅色の流行は、平安時代は貴族の間にとどまっていましたが、江戸時代になると庶民にも拡大します。
当時、紅は「紅一匁(もんめ)、金一匁」といわれるほどの高級品で、庶民にはなかなか手が届かないものでした。
宝石ルビーから知恵の光明を放つお釈迦様
お釈迦様の額の赤い珠「肉髻珠(にっけいしゅ)」をご存知でしょうか?
お釈迦さまの頭頂には隆起した「こぶ」がありこれを肉髻(にっけい)といいます。
その前面中央に肉髻珠(にっけいしゅ)という赤い珠は「紅玉=ルビー」です。
肉髻珠は、仏の智恵の光を表わす珠とされ、智慧の光明を表し、赤で表現をします。
「肉髻の上に薄皮が張りつめられている時に赤色に見える」
阿弥陀如来の智慧から放たれる光明は、人間の力によってはとても量り知ることができない
いつの時代も、どんな国のどのような衆生もみな、この如来の光照をこうむって、煩悩の闇をはらし明るい世界をたまわらないものはない
このように経典にも説かれており、お釈迦様の生まれたルンビニは、ミャンマーのルビーの産地から離れておらず、ルンビニの近くでも昔ルビーが採れたといわれています。
赤は特別な色
ルビーの語源は、旧ラテン語の「赤」です。
そしてルビーが人類の歴史に登場するのは、とても古く、旧石器時代です。
ニューヨーク市立大学のTED THEMELIS博士の著書「Mogok」では、200万年前の原人がルビーの原石を集めていた形跡を確認したと記述があります。
集めた理由は分かっていないそうですが、その時代は、まだ現人類になる前ですが、旧石器時代といわれ打製石器を使い、火を使ったといわれます。
夜になると夜行性の大型肉食動物に捕食されていた時代です。
夜行性の動物は、火種を嫌がり、夜に火種を使いこなせた原人は、漆黒の暗闇の中で赤く輝く、炭火の光に守られて、その人口が一気に増えて行ったのは夜に食べられることが少なくなったからです。
暗闇にトラたちの光る目に囲まれていた恐怖からルビー色は人類を守ったということで、【赤】は「怖いものから守られる」と認識するようになったのかも知れません。
鉱物の和名
鉱物にも種が定義されて、それぞれの種名があり、模式標本(タイプ標本)があります。
国際的にも通用する種名は、その種の特徴、産地名、貢献のあった人物名などにちなみ、「石」を意味するiteで結ぶのが原則です。
和名の由来
ここでは、「和名」の基本的なことをおさらいします。
「和名」とは、学問規約的に指定された名ではなく、一般的に使用されている慣習的名称で主に漢字で表記されます。
「学名」にはラテン語が用いられることが多いです。
ラテン語になじみのある欧米諸国とは異なり、日常的にラテン語やその語を用いない日本では「学名」は入門者や一般向きでなく、馴染みにくいので、「学名」と同様に使える日本語の名前があった方が便利という目的で慣用的に使われるのが「標準和名」です。
日本語の鉱物名の「和名」は、「鉱物」が科学的に定義されるより前には中国から、次いで科学とともに欧米からもたらされた鉱物名の訳名として使われてきますしたが、時代とともに変化し、今は全く使われてないものもあります。
宝石ルビーは違う和名(日本名)でも呼ばれていた?
日本装身具史(露木宏先生著)の年表で今から約200年前に、ルビーは日本では「ロペイン石」と呼ばれている記述があります。
1829年 ガラス技法「玻瓈精工全書」に(はりせいこうぜんしょ)ルビーに関する記述。
金で紅色に発色させる金赤ガラスの解説の項にその色「舶来のロペイン石のごとき」とある。
日本装身具史(露木宏先生著)の年表で「ロペイン石」と呼ばれている記述があった。
(引用ここまで)
使われている文脈からは、ルビーは大変貴重なもので手に入りにくい特別なものであったことが分かります。
日本でも意外と歴史の長いルビー。グローバル化とか、西洋、東洋という分け方自体の意味がなくなりつつある今こそ、日本古来の美意識を世界に発信していく時代かも知れません。
まとめ
ここまで宝石の中でも特別なルビーの和名を詳しく解説してきました。
和名は、日本固有の自然や文化など、さまざまなものが今日まで引き継がれて、蓄積した存在であると気づかされます。
「紅色」は、日本人にとっても貴重で高価な特別な色であり、羨望の色でもありました。
ルビーを伝えるのに相応しい「紅玉」は希少なルビーにはぴったりな名前です。