宝石として知られるルビーは、実は「コランダム」と呼ばれる鉱物の一種です。
コランダムは酸化アルミニウムを主成分とし、ダイヤモンドに次ぐ硬度9を誇る鉱物で、無色透明の状態が基本ですが、微量に含まれる元素によって多彩な色を生み出します。
その中でも、クロムを含み赤く発色したものがルビーで、鉄やチタンを含むと青く発色しサファイアと呼ばれます。ルビーの深みある赤は、地球の内部で起こる化学的な偶然の積み重ねによって生まれる希少な存在です。
モリスでは天然無処理のミャンマー産ルビーを店舗で見学することもできるので、興味がある方はぜひ一度ご覧になってみてください。(来店予約はこちら)
この記事では、ルビーとコランダムの関係性やその特徴、種類、価値について解説します。
コランダムとは?(何の宝石?・特徴)

ルビーやサファイアの美しい輝きを生み出す鉱物が「コランダム」です。
酸化アルミニウムを主成分とする鉱物で、ダイヤモンドに次ぐ硬度を誇ることから、古くから宝石として重宝されてきました。
ここでは、コランダムの意味や構造、そしてその特徴について詳しく見ていきましょう。
コランダムとは?(意味と語源)
コランダム(Corundum)は、酸化アルミニウムを主成分とする鉱物です。
その語源はサンスクリット語「Kauruntaka」に由来し、英語では「Corundum」と表記されます。和名は「鋼玉(こうぎょく)」と呼ばれ、その名の通り非常に硬い性質をもつことからこの名が付けられました。
コランダムは、色によって名前が変わる珍しい鉱物でもあります。赤色のものは「ルビー」、青色のものは「サファイア」と呼ばれ、どちらも宝石の代表格として世界中で高い人気を誇ります。
つまり、コランダムとは「ルビーとサファイアを生む母体」ともいえる存在です。
コランダムの化学式と結晶構造
コランダムの化学式は「Al₂O₃(酸化アルミニウム)」です。
酸素とアルミニウムのみで構成される非常にシンプルな鉱物でありながら、結晶構造は六方晶系(トリゴナル)という高い対称性をもっています。この構造が、ダイヤモンドに次ぐモース硬度9という圧倒的な硬さを生み出しています。
また、透明度が高く、ガラス光沢から金剛光沢にかけて強い輝きを放ちます。その硬度と安定性から、宝飾品だけでなく時計の軸受や研磨剤などの産業用途にも利用されてきました。
コランダムは科学的にも、物理的にも、非常に安定した鉱物といえます。
結晶構造とは、鉱物を構成する原子が、どのように規則正しく並んでいるかを示す「骨組み」のようなものです。
六方晶系(トリゴナル)とは、コランダムの結晶が「六角形の柱」のように成長する構造を指します。安定していて割れにくい形状が特徴です。
コランダムの主な特徴と性質
コランダムの最大の特徴は「硬度」「光沢」「色の多様性」の3点です。
コランダムの比重は約4.0と重く、耐久性にも優れています。無色透明の状態が本来の姿ですが、微量の元素が加わることで多彩な色を見せる点が魅力です。
コランダムは、クロム(Cr)が含まれると赤く発色してルビーとなり、鉄(Fe)やチタン(Ti)が混ざると青くなりサファイアになります。
コランダムはわずかな不純物の違いで印象が大きく変わる「奇跡の鉱物」です。宝石としての美しさと耐久性を兼ね備えることから、世代を超えて愛され続けています。
比重とは、宝石の体積あたりの重さを示す指標で、同じ重さでも比重が高い宝石ほど体積が小さくなります。
ルビーの比重について知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
ルビーとサファイアは同じコランダム?(違いも解説)

先程も少し触れましたが、ルビーとサファイアは見た目の色こそ異なりますが、実はどちらも同じ鉱物のコランダムから生まれた宝石です。
発色の違いは、微量に含まれる金属元素によるもので、同じ素材でも含まれる不純物によって、全く異なる表情を見せるのがコランダムの魅力なのです。
ここでは、ルビーとサファイアの関係性と、その違いを詳しく見ていきましょう。
赤色のコランダムはルビー
ルビーとは、コランダムの中でも「クロム(Cr)」を含むことで赤く発色したものを指します。クロムが光を吸収し、深みのある赤を生み出します。
特にミャンマー(旧ビルマ)・モゴック産のルビーは、深い鮮やかな赤色が特徴で、「ピジョンブラッド(鳩の血)」と呼ばれる最高品質のルビーが産出することで知られています。
同じコランダムでも、クロムを含む発色が見られないものはルビーとは呼ばれません。ルビーは「赤色の奇跡」とも称され、その希少性と華やかさから古くから王侯貴族にも愛されてきました。
ルビーについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
青色のコランダムはサファイア
サファイアは、鉄(Fe)とチタン(Ti)が組み合わさることで青く発色したコランダムです。
代表的なのは「ブルーサファイア」ですが、コランダムは不純物の種類と量によって、ピンク・イエロー・グリーン・オレンジなど多彩な色合いを見せます。
これらは総称して「ファンシーサファイア」と呼ばれ、近年では個性あるカラーとして人気を集めています。サファイアは青だけではなく、青以外のコランダムにも広く使われる名称です。
サファイアについて知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
ルビーとサファイアの違いは「色」だけ
ルビーとサファイアの違いは、成分や構造ではなく「色」のみです。どちらも化学式はAl₂O₃(酸化アルミニウム)で、結晶構造も同じです。ただし、赤みが強ければルビー、青みや他の色であればサファイアと分類されます。
中でも「ピンクサファイア」と「ルビー」の境界は非常に曖昧で、国や鑑別機関によって判断基準が異なるのが実情です。宝石業界では、クロムによる赤みが一定以上あるものをルビーとし、それ以下をピンクサファイアと呼ぶことが一般的です。
ルビーとサファイア両者の違いは、色彩の度合いによるもので、どちらも同じ「コランダム」という鉱物に属しています。
ルビーの色に関しては、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
コランダムの種類(特殊効果)

コランダムは、ルビーやサファイアに代表される鉱物ですが、その発色や結晶内の微細構造によって、多彩な種類が存在します。宝石としての価値は色や希少性によって大きく変わるため、種類を理解することは購入する際に非常に重要です。
ここでは代表的な色のバリエーションと、特殊な光学効果を持つコランダムについて解説します。
コランダムの代表的な種類
コランダムは赤色のルビーと、それ以外のサファイアに大別されます。
赤色のルビーはクロムによる発色で、特にミャンマー産のルビーは世界最高峰とされ、鮮やかな赤「ピジョンブラッド」が最高評価の基準です。
一方のサファイアは、鉄とチタンの組み合わせで青く発色し、ピンク・イエロー・グリーン・無色など、多彩なファンシーカラーも存在します。
中でも橙と桃色が混ざる「パパラチアサファイア」は極めて希少で、宝石市場でも特に高い価値を持ちます。
コランダムは同じ鉱物でも色によって印象や評価が大きく異なることが特徴です。
特殊効果を持つコランダム
一部のコランダムには、結晶内の微細な構造や内包物(インクルージョン)によって、光を当てたときに特有の光学現象が現れるものがあります。これを「特殊効果」と呼び、代表的なものがスター効果です。
スター効果は、光を反射させると表面に六条の星形模様が浮かび上がる現象で、結晶内の針状ルチルや同質の微小結晶が光を反射することで生じます。
赤いコランダムでは「スタールビー」、青やその他の色では「スターサファイア」と呼ばれ、色は異なりますが現象の仕組みは共通です。
また、カラーチェンジサファイアは、光源の種類によって色が変化する珍しい性質を持ち、見る角度や光によって印象が変わるため、希少性と鑑賞価値が高いのが特徴です。
特殊効果を持つコランダムは、色彩だけでなく光学的な美しさも楽しめる宝石です。
コランダムの価値と価格

コランダムの価値は、単に美しい色や輝きだけで決まるわけではありません。色の鮮やかさや透明度、そして加熱や含浸などの処理の有無が評価の基準となります。
特に天然無処理のルビーは希少性が高く、宝石市場で非常に高い価値を持ちます。また、信頼できる専門店での購入は、鑑別書や品質保証といった安心感にもつながります。
ここでは、コランダムの価値を決める要素、天然と合成の価格差、購入時の注意点について解説します。
価値を決める3要素
コランダムの価値を決める主な要素は「色」「透明度」「処理の有無」などの品質です。
まず色は、発色の鮮やかさや彩度が美しいほど高く評価され、透明度は内包物(インクルージョン)の少なさに直結し、視覚的に純粋で美しい石ほど希少性が高まります。また、加熱や含浸などの処理の有無も重要です。
特に天然無処理のルビーは市場価値が高く、最高品質のミャンマー産ルビーの「ピジョンブラッド」などは別格の評価を受けます。
以上のように「色」「透明度」「処理の有無」の3要素が揃うことを前提とし、他の品質要素も含めたうえで、コランダムの価値は決まります。
ルビーの品質判定について気になる方は、以下の記事を参考にしてみてください。
天然と合成の価格差
コランダム(ルビー)の場合、天然と合成では、同じカラット数でも価格は大きく異なります。
天然ルビーは1カラットあたり「数万円から数百万円」に対し、合成ルビーは同サイズでも「数千円から数万円」程度の価格です。
天然と合成の価格差は、天然ルビーの希少性や自然の成長過程による個体差、処理の有無などが要因です。特にミャンマー産の天然無処理ルビーは市場で最も価値が高く、色や透明度が優れる石はさらに価格が上昇します。
天然ルビーと合成ルビーの価格差を理解することは、購入するかどうか判断する際に必要不可欠です。
購入時に注意すべきポイント
コランダム(ルビー)を購入する際は、以下の3つのポイントに注意しましょう。
- 品質判定がある
- 鑑別書がある
- 専門店で直接購入する
コランダム(ルビー)を購入する際は、品質判定がある店舗で、加熱や含浸処理の有無を確認することが重要です。また、信頼できる鑑別書が付属しているか、販売店が専門知識を有しているかも判断の基準になります。
加えて、天然無処理ルビーの希少性や価値を正しく評価するためには、専門店で直接購入するのが最も安全です。
モリスでは、厳格な鑑別と品質保証のもと、天然無処理ミャンマー産ルビーを取り扱っています。特別な宝石を購入する際は、ぜひ一度店舗で実物をご覧ください。(来店予約はこちら)
コランダムの発色の仕組み

コランダムは化学組成自体はAl₂O₃(酸化アルミニウム)で統一されていますが、色は微量元素の影響で決まります。
結晶内に含まれる金属元素が光の吸収や反射に作用し、多彩な色彩を生み出します。また、宝石としての価値や希少性は、この自然な発色の美しさに大きく左右されます。
ここでは、主要元素による色の違いと、加熱などの処理による色彩調整について解説します。
コランダムの元素ごとの発色の仕組み
コランダムの色は、結晶内に微量に含まれる金属元素によって決まります。
| 元素 | 発色 | 宝石名 |
| Cr(クロム) | 赤 | ルビー |
| Fe(鉄)+ Ti(チタン) | 青 | サファイア |
| V(バナジウム) | 紫・オレンジ | パパラチアサファイア |
例えば、クロム(Cr)が含まれる場合は赤色に発色しルビーとなり、鉄(Fe)とチタン(Ti)の組み合わせでは青色に変化しサファイアとして認識されます。
さらに、バナジウム(V)は紫やオレンジ系の色を生み出し、パパラチアサファイアなどの希少な宝石に見られます。元素が存在しない場合は、無色コランダムとなります。
コランダムは微量な元素の違いによって、宝石として多様な表情を示してくれます。
コランダムの処理による色の調整
天然のコランダムは、そのままでも美しい色を持ちますが、加熱処理により色彩の鮮明化や透明度に手が加えられていることもあります。
加熱することにより微細構造や不純物の分布が変化し、見た目の印象を整えることができます。また、鉛ガラスを使用した含浸処理は、亀裂が目立たなくなり、見た目は改善しますが、耐久性や価値に影響します。
こうした処理を行わない天然無処理コランダムは希少性が高く、宝石としての価値も最も高いとされます。宝石を選ぶ際は、天然無処理の宝石の価値を理解しておくことが重要です。
ルビーの加熱処理について知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
コランダムの天然と合成の違い

コランダムは天然でも合成でも美しい色彩を持ちますが、その生成過程や希少性、価値には大きな差があります。天然か合成かの違いを理解することは、宝石選びの際に非常に重要です。
ここでは、天然コランダムと合成コランダムの特徴、見分け方と鑑別のポイントについて解説します。
天然コランダム
天然のコランダムは、地球内部の高温・高圧環境下で長い年月をかけて自然に形成されます。この過程で微量元素が結晶内に取り込まれることで、ルビーやサファイアの鮮やかな色が生まれます。
天然のコランダムの主な産地にはミャンマー、スリランカ、マダガスカルがあり、それぞれの地域で色合いや透明度に特徴があります。
天然ならではの微細なインクルージョンや成長痕は、宝石としての価値や希少性を高める要素です。天然コランダムは、長い地質学的プロセスによって生まれた唯一無二の宝石と言えます。
合成コランダム
合成コランダムは、天然のコランダムと同じ化学組成を持ち、人工的に結晶を成長させて作られたコランダムのことです。ベルヌイ法やフラックス法などの手法により、天然に近い色彩や透明度を再現できます。
しかし、生成期間は短く、希少性は天然より低いため価格も大幅に異なります。見た目だけでは天然か合成かを判別することは難しく、宝飾用として流通する場合もあります。
合成コランダムは、天然の美しさを手頃な価格で楽しめる一方で、希少価値や投資性の面では天然と異なることを理解しておきましょう。
ベルヌイ法とは、高温で溶かした酸化アルミニウムをゆっくり冷やしながら結晶化させる、天然に近いルビーやサファイアを作る方法です。
フラックス法とは、溶媒(フラックス)を用いて低温で時間をかけて結晶を成長させ、天然に近い宝石を人工的に作る技法です。
人工合成ルビーについて知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
見分け方と鑑別のポイント
天然コランダムと合成コランダムは、内部の特徴や鑑別書によって区別することができます。
天然のコランダムにはシルク状のインクルージョンのような自然な成長痕が見られる一方、合成では均一な結晶構造や人工特有の成長パターンが確認されます。
また、鑑別書では「加熱」「合成」「含浸」の表記が重要です。宝石選びでは、これらの確認を専門家に依頼するか、信頼できる販売店での購入が欠かせません。
コランダムであるルビーやサファイアを購入する際は、天然か合成かを正しく理解することで、価値に見合った選択が可能となります。
ルビーの鑑別書に関する内容は以下の記事を参考にしてみてください。
コランダムに関するよくある質問
コランダムはルビーやサファイアを含む鉱物ですが、その専門的な性質や価値について、初めて触れる方には疑問が多い宝石です。
ここでは、コランダムに関するよくある質問をまとめているので、参考にしてみてください。
質問①:コランダムにも石言葉や意味はある?
コランダムには、ルビーとサファイアの2つの宝石の象徴的な意味があります。
ルビーは「情熱・勇気・愛情」、サファイアは「誠実・知性・真実」を表すとされ、古代から王族や聖職者に愛用されてきました。勝利や守護の象徴としても扱われ、現代でも特別な贈り物として選ばれています。
コランダムであるルビーとサファイアは単なる美しい宝石ではなく、歴史や石言葉としての深い意味も持っているので、贈り物や投資に適した宝石です。
質問②:コランダムとアルミナは違う?
コランダムは化学的には酸化アルミニウム(Al₂O₃)であり、工業材料として使われる「アルミナ」と同じ成分ですが、用途や価値が異なります。
宝石としてのコランダムは結晶構造や透明度、発色によって希少性が評価され、無色のものでも美しさを持つ点が特徴です。一方、工業用アルミナは加工性や硬度などの実用性に焦点が当てられます。
つまり、成分は同じでも、評価の軸が宝石か工業用かで大きく異なることを理解することが重要です。
質問③:コランダムの中で最も価値が高いのは?
コランダムの中で最も希少価値が高いのは、天然無処理のルビーです。
特にミャンマー産の「ピジョンブラッド」と呼ばれる赤色は市場で別格の評価を受け、色の鮮やかさと透明度の高さが価格に直結します。
サファイアも高彩度・高透明度のものは評価されますが、ルビーほど価格は突出しません。購入や投資を考える場合は、天然無処理かどうか、産地や色の鮮やかさを確認することが重要です。
質問④:コランダムの見分け方や鑑別方法は?
天然か合成か、また処理の有無を見分けるには、インクルージョンや色の均一性などを確認します。
天然コランダム特有の成長痕や「シルクインクルージョン」と呼ばれる特徴が見られることが多く、これが天然の証拠となります。
また、鑑別書の「加熱」「合成」「含浸」などの有無を確認することも大切です。専門店で購入すれば、信頼性の高い鑑別情報を得られ、購入時の安心感も高まります。
質問⑤:コランダムはどんな贈り物に適している?
コランダムは結婚記念日や誕生日など、人生の節目の贈り物として特に適しています。天然無処理のルビーや高彩度サファイアは、特別な贈り物として希少性や価値が高く、受け取った方に特別感を与えます。
実際に手に取り、輝きや色味を確認できる専門店での購入がおすすめです。
特別なルビーを選ぶ際は、専門店で実物を見て判断することが、後悔のない選択につながります。
ルビーをプレゼントに検討されている方は、以下の記事を参考にしてみてください。










