宝石ルビーには誰もがとりこになる美しさがありますが、ルビーはなぜキラキラ光るのか?そのような疑問を持った方も多いと思います。
この記事ではその輝きの秘密のひとつ屈折について解説していきたいと思います。
学生時代に習った記憶があっても、「屈折」を説明できない人もいるのではないでしょうか。どのような現象なのか、分かりやすく紹介します。
ルビーの屈折率
ルビーは複屈折で、屈折率は約1.76〜1.77です。
屈折率が高いほど光が屈折しやすく、輝きが強くなります。
同じ赤い石のスピネルは単屈折で、屈折率は約1.72のため輝きはルビーに劣ります。
「屈折率」は、鉱物の種類ごとに異り、宝石を鑑別する上で最も重要なデータとなります。
空気中から宝石内部に入った光が折れ曲がる屈折の程度を示す値が「屈折率」です。
屈折率が高いほど、反射する光の量も多くなります。
そもそも光の屈折とは?キラキラしてみる理由
光が境界面で曲がる現象
光はこの世の中で最も速いものであり、一秒間に地球7周り半に相当する秒速約30万Kmのスピードがあると知られています。しかし、このハイ・スピードは真空中を進む場合であり、空気の中、水の中、そして透明な宝石の中を進む場合は真空中より遅く、かつ物質ごとに違った速度になります。そして、光が2つの違う物質を通るときには、進む速度が変化し、これに起因して進路が物質の境界面で折れ曲がる現象がおきます。これが「光の屈折」です。
中学生時代に習った方が多いと思います。
懐中電灯や太陽光のように、光は真っすぐ進む性質を持っていますが、一定の条件下では屈折します。
例えば、光が空気中から水やガラスなどに入射するとき、空気と水(またはガラス)の境界面で光は折れ曲がります。水やガラスに対して斜めに光が当たると、その一部が反射し、残りが曲がって進む性質があるためです。
水が入っているコップにストローをさして上から覗いてみると、ストローが水の中で折れて見えるのも、光の屈折によるものです。
屈折率から結晶系のや結晶の方位が測定できる
可視光線の通過速度(光速)は、物質の種類によって異なりますが、光の通過速度を実測することは簡単ではありません。しかし、光の速度は屈折率二反比例するので、屈折率が鉱物の光学特性を示す数値として用いられることが一般的です。
水やガラスのような非晶質に加え、結晶構造が等方的な立方晶系(等軸晶系)の結晶中では、可視光は、どの方向においても一定の速度、同じ屈折率を示します。それに対し、正方晶系とそれよりも対称性の低い結晶構造を持つ物質では、結晶に対する光の進行方向により、速度(屈折率)が変動することが特徴です。
この特性を利用して屈折率の測定から結晶系が推定でき、結晶の方位がわかる場合もあります。
一定の屈折率と変動する屈折率
鉱物の光学特性は2つあります。
- 光学的等方性:どの方向にも一様な屈折率を持つ鉱物の光学特性
- 光学的異方性:方向により屈折率が変動する鉱物の光学特性
光学的異方性の結晶の中では、侵入した可視光が、2つ異なる屈折率により、異なる速度でことある方向に進みます。2つの屈折率が現れることを複屈折と呼び、方解石のように複屈折が顕著な結晶では透かした文字などの像が2重に見えます。
宝石の光学的性質とは?
光の作用は宝石には欠かせない要素です。光は宝石の美しさや輝きの源であり、鉱物種ごとに光学的な性質が異なるので種を見分けるのにも役に立ちます。
たとえば、赤い宝石は10種類以上ありますが、それぞれの種ごとにいろいろな色相の違いや濃淡の差があります。
しかし、そういう性質はどれも鑑別の手がかりになるが、1つだけで必ず種を特定できるものではありません。光学的な性質には、光沢などのように主観的な観察による分類もあれば、屈折率などのように客観的な分類もあります。
石の種類を見分けるため、いくつもの手法や道具を使って、可能性を絞り込んでいきます。
石の光学的な性質を調べると、光の透過や屈曲、反射の仕方がわかります。
ルビーの透明度
ルビーの美しさ(色調、透明度、明度、彩度)
ルビーの美しさについては、宝石品質判定のクオリティスケールを使うのが一番分かりやすいでしょう。
ルビーの美しさを観るときのポイント6点
- 強い赤色とわずかに紫味を帯びた色調であるか
- 透明度はどうか
- 彩度はどうか
- プロポーションはどうか(ルビーの美しさその2カット、研磨)
- インクルージョン(内包物)が美しさを引き立てているか、または悪影響を与えているか
- フローレッセンス(蛍光性)の有無
紫外線365nmの長波光に鮮赤色に反応する性質、そして深紅で透明度が高く、色の濃い結晶に、シルクインクルージョンが絶妙な密度で内包されるなど、すべての条件が揃った最高品質を「ピジョンブラッドルビー」と呼びます。
鑑定書に「ピジョンブラッドカラー」、「ピジョンブラッドレッド」とコメントされていることもありますが、それぞれの鑑別業者が独自の基準をクリアしたモノに対する参考意見であり、ここでいう「美しさ」を表すものではないことを理解しておいた方が良いでしょう。
ルビーの美しさその2 (カット、研磨のスタイル)
ルビーは結晶そのもので価値が決まります。
カット研磨技術で価値が大きく変わるダイヤモンドとは違うところです。
一般的な人為的な加熱処理などで美しさを改良したルビーは、ある程度、研磨のスタイル、プロポーポーションの良し悪しは価値に影響を与えます。
希少性の高い、天然無処理で美しいミャンマー産ルビーの場合、基本的にカットはせずに、研磨だけで潜在的な美しさを引き出します。
産出した時の原石の形によってプロポーションが決まります。
少し歪んだ形のルビーがあったとしたら、それは貴重な原石の結晶の生地をなるべく大きく残そうとした跡であり、美しさに悪影響を与えない限りは、そのルビーの個性として認識します。
品質判定をする時は、そのプロポーションを基準となるスタイルに整えた場合に、どのくらいのサイズになるかを割り出した上で、クオリティスケールを使って判断することになります。
ルビーの色の濃淡
色の濃さを判断する時には、色調や透明度、彩度などの「美しさ」の要素と分けて、黒から白のトーンで見分けると良く分かります。
クオリティスケールでは、濃淡を#10が黒、#1を白に設定した10段階のモノサシです。ルビーは、#6~#5が最も良い濃さ、続いて#7と#4~#3の順番です。
ルビーなのかピンクサファイアなのか?
ルビーの場合は、#2と更に淡いものをピンクサファイアと呼びますが、その境目は、各鑑別業者によって判断が違います。
ある鑑別業者ではルビー、別の鑑別業者ではピンクサファイアと宝石名が変わるところが紛らわしいところです。
モリスでは、宝石品質判定の基準で、#2のものはピンキッシュルビーという独自の呼び方で呼びます。
重要なのは、値段は品質で決まるものであり、呼び名ではないということです。
鉱物の透明度
結晶中を可視光線がどのように通過するか、その見た目から透明、不透明、そして半透明を区別します。
光の透過状態の違い
濃い色で不透明に見える結晶でも、薄い部位や、薄く割ったり削ったりすると透けることがあります。金属光沢をもっていて光をまったく通さないように思える金でも、箔のようにすると透けてみえます。
大粒の結晶でも内部にひび割れが多い場合や、細かい粒子の集合体では、光の乱反射により通り抜けることが出来ないので、不透明二なることもあり、同じ鉱物でも光の透過の状態は違うことがある点に注意が必要です。
光沢
鉱物の表面が光を浴びた時の輝き方(つや)を光沢と呼びます。鉱物種によっては特有の光沢があるため、肉眼観察の助けとなることも少なくありません。
鉱物の光沢
鉱物の光沢は、光の反射率、屈折率、透明度など表面の状態の特性に依存しますが、数値化することができず、よく知られた物質や鉱物になぞらえて表現されることが多いです。
それぞれの光沢の区別に厳密な基準はなく、それぞれに「亜」をつけて「それに近い光沢」の意味で使われます。
光沢の8個を紹介します。
- 金属光沢
- ダイヤモンド光沢
- ガラス光沢
- 樹脂光沢
- 脂肪光沢
- 真珠光沢
- 絹糸光沢
- 土状光沢
金属光沢
光を透過しない不透明鉱物で平滑な表面で強烈な反射を伴います。
表面の変質のない金属鉱物や硫化物に顕著で、ほとんど半導体であり、自由電子による光の反射が要因です。玉虫などの甲虫類に見られる金属光沢のように、キチン質の多層膜による干渉が要因の構造色もあります。
ダイヤモンド光沢
透明鉱物の光沢の中で最も強い輝きを示し、高い屈折率による著しい内部反射に起因します。
ガラス光沢
透明鉱物に多く、多くの造岩鉱物や宝石がこの光沢を示します。屈折率は、ダイヤモンド光沢と樹脂光沢のおおむね中間です。
樹脂光沢
やや透明度に乏しく、屈折率のやや低い鉱物に見られます。琥珀や自然硫黄など、合成樹脂に似た光沢が特徴です。
脂肪光沢
グリースのような光沢。樹脂光沢よりも透明度が低く、優しい輝きが特徴です。
絹糸光沢
絹糸の束のような艶やかな光沢。繊維状の結晶の集合組織で見られます。
土壌光沢
光沢に乏しく、光沢がないといってもよいくらいです。
「この記事の主な参考書籍・参考サイト」
- 「決定版 宝石」著者:諏訪恭一/発行:世界文化社
- 「図説 鉱物の博物学第2版」著者:松原聡/宮脇律郎/門馬綱一 / 発行:秀和システム
まとめ
この記事ではその輝きの秘密のひとつ屈折について解説してきました。
光の作用は宝石には欠かせない要素です。光は宝石の美しさや輝きの源であり、鉱物種や宝石種ごとに光学的な性質が異なるので種を見分けるのにも役に立つかもしれません。
宝石種について詳しくはこちらで解説しています。