同じような見た目のルビーの指輪なのに、価格が全く違うルビーの指輪を見つけると「どうして?」と疑問に思うことはありませんか?
この記事では、なぜ「ルビーの指輪の価格」に違いがあるのかを解説します。
ルビーの指輪が安い理由とは?
ひと言でいえば品質が違うからです。
品質が低ければ安いし、高ければ値段も高くなります。
ルビーの品質を観るときにチェックするポイントは以下の7つです。
- 宝石種 同じように見えるが、人工合成石、類似石、模造石がある
- 原産地ミャンマー産がおすすめ、タイランド、インド、スリランカ等々
- 処理の有無人為的な処理をして品質改良しているかどうか?
- 美しさ色調、色彩、透明度、プロポーション等々
- 色の濃淡トーンをみる
- 欠点破損の原因になるようなフラクチャー(割れ)などが無いか?
- サイズカラット(ct)だけでなく、縦</横/深さの寸法
これで、そのルビーの品質が分かります。「ルビーは色が一番重要だ」「非加熱ルビーがいい」「ミャンマー産がいい」など色々な情報がありますが、そのルビーの品質は①~⑦のどれ一つ抜けても判定できません。
しっかりと抑えておきたいところです。
ルビーは、歴史的に長く大切にされてきた宝石です。
欧州の文献では紀元前にスリランカより伝わったものが最古だとされていますが、約3500年前の古代エジプトでルビーのスカラベリングが残っています。
ルビーが産出しない(最近ではアイスランドで発掘されていますが)欧州では、謎の宝石だったのでしょう。古代インドでは、2000年前には既に、ルビーとスピネル、ガーネットの宝石種を見分けていたので、ルビーに関してはアジアの方が先進国ということになります。
①宝石種が違うもの
日本では心配する必要はありませんが、香港やタイランドの街中では、人工合成石やプラスチックの模造石を「きれいなルビーの指輪」として売っている人がいます。
面白半分で見るのは良いのですが、宝石ルビーだと思って買ってしまうと宝石としての価値は無いので注意が必要です。
少し宝石を知っている人が引っかかってしまうのが、人工合成石を加熱処理して液体インクルージョンを入れたものです。
それも宝石としての価値はおろか、普通の人工合成石と比べても価値が低くなります。宝石の種類が違ったら、ケタ違いに安くなる一例です。
②原産地が違う
ルビーは産出する産地で特徴に違いがあります。
ルビーの産地で最高なのはミャンマー産です。サファイアだとカシミール地方のものが最高ですが、同じ品質だと、オーストラリア産は、1/100の値段です。
産地の違いでも100倍の値段差になることがあります。産地の違いも安い理由の一つです。
③処理の有無の点で違う
鉛ガラスを浸み込ませながら加熱処理をしたものは、大きなルビーでも、処理をしている集積地では、数千円1ctあたりで仕入れられますので、宝石としての価値は無いと考えた方が良いでしょう。
薬品や添加物を加えないで熱だけで処理したモノを通常の加熱処理と呼んで業界は許容していますが、やはり宝石としての価値を天然無処理で美しいものと比較するまでもありません。
④美しさ⑤色の濃淡の違い
クオリティスケールというモノサシを使って美しさと色の濃淡を見分けますが、一番価値の高いといわれる天然無処理のミャンマー産ルビーでも、品質によって10倍から50倍の値段差があります。
安いルビーは、品質が低いということです。
⑥欠点がある
これは、プロのジュエラーが説明してあげないと一般の人に見分けて下さいというのは、少し酷な話ですが、パッと見たら分からないが、破損の原因になるようなインクルージョン(内包物)が入っているものや、破損の原因になる可能性のあるプロポーションの欠陥などは、業者の間で安く取引されます。
そういったルビーが安く売りに出されることがあります。
手放す際に、また業者が分かりますので、値段が低くなってしまいますので、買えても喜べません。
⑦サイズが小さい
高品質のものでもサイズを小さくしていくと値段は安くなります。
これは日本人の特徴ですが、小さくても高品質なルビーを好みます。
もちろん海外でも個人の好みは色々ありますが、比較すると多少品質が低くても大きなものを選ぶ傾向があります。
安いルビーの指輪は、安い理由があります。
しかし、売っている人(説明する人)が品質の判定の仕方が分かっていないケースがほとんどです。
買う人が、宝石の品質を見分ける方法を知っているだけでも、キチンとした説明なのかどうか?分かると思います。
①~⑦を質問してみて下さい。
「こんなキレイなルビーは見たことがない」とか「今まで見たルビーで一番良い」、「鑑別書にピジョンブラッドと書いてある」などの説明は、品質の説明ではありませんのでお気を付けください。
ニセモノの安いルビーと天然のルビーを見分ける方法
ニセモノが本物に見えてしまう、宝石の世界では、歴史的に事件が起こっています。
フランスのベルヌイ博士が発明した人工合成石は「宝石ではない」と確定するまで、最も高額な天然無処理で美しいミャンマー産ルビーよりもフランスということもあり、高値で取引されました。
目の前の赤い石を売る人がルビーなのか、ニセモノなのかを見分けているかは分かりません。
ニセモノだと知らずに売ってしまうかも知れません。
その時に役立つのが、鑑別業者が発行する鑑別書です。
ニセモノ(宝石種が違うもの)は確実に見分けてくれます。
宝石種は、鑑別業者の発行する鑑別書に明記されている
同じ赤い石であっても、合成石、模造石、類似石があります。
宝石ルビーの場合は、「天然コランダム」「宝石名ルビー」と記されているはずです。
バラスルビー(スピネル)、ルベライト(トルマリン)など紛らわしい名前がありますので、鑑別書で確かめて下さい。
ルビーの原産地を見分けるのは、意外と簡単
ここでは、ルビーの産地による価値の違いを解説します。
ルビーの産地の中でも特別なミャンマー産ルビーについて解説します。
嵐の中で輝いた伝説の宝石ルビーです。
「嵐の中、漂流するノアの方舟の中で輝いた赤い宝石」がカルブンクルス、またはカーバンクルですが、ドイツでは今でもルビーのことをカーバンクルと呼びます。
嵐の日は、雲が暑くなっているので紫外線は地表に届かないのでは…と考えてしまいますが、違います。365nmの紫外線は、雲に反射した散乱光は、直接の太陽光が届かなくても、晴れの日よりも強い紫外線が届くのです。
それがルビーに当たると、接触変成岩起源(ミャンマー産)のルビーは、まるでスイッチオンにしたかのように鮮やかな赤色に蛍光反応します。
ルビーに紫外線ライトを当てたときの反応
見分けるのは少し慣れると簡単です。
長波光の紫外線ライトでミャンマー産ルビーを照らすと、「燃える石炭のように輝いた」という伝説の輝きを見ることができます。
この特徴は、最高のルビーの呼称である「ピジョンブラッド」の条件の一つですが、ミャンマー産の特徴でもあり、Gubelin Gem Lab、SSEFで、ピジョンブラッドレッドとコメントされるルビーがミャンマーのモゴックかナヤン産のものしか出ない理由の一つです。
ルビーの産地は大きく分けて玄武岩起源のものと非玄武岩起源がありますが、非玄武岩起源のルビーにこの蛍光性が観られます。
ただ、その非玄武岩起源の中でも、ミャンマー産は特別です。場所は、ヒマラヤ山脈の麓、約5000万年前から2000万年前に南半球から移動してきたインドがユーラシア大陸に衝突してヒマラヤ山脈ができたわけですが、その衝突したあと、沈み側プレートにのって地下40㎞という深さまで沈んだところでマグマと接触して結晶したのがミャンマー産ルビーです。
地球は、地下20㎞以深はクロム(Cr)が多く、そこで結晶したルビーには、クロムが多く含まれるのが、その蛍光性の輝きの理由です。
- 長波の紫外線に対する蛍光反応は、ピジョンブラッドの条件の一つ
- ミャンマー産ルビーは、クロムが多く、鉄分が少なく蛍光性が強い。
- タイランド産ルビーなどの玄武岩起源のルビーは、クロムと同じぐらい鉄分が多く、それが蛍光反応を阻害していると考えられる。
ミャンマー産ルビーを探すときは、紫外線のライトを持っていると便利ですが、その時に365nmの波長であることが大切です。
ブラックライトでも蛍光反応は見られますが、東アフリカ(広域変成岩起源のルビー)産も蛍光しますので勘違いすることがあるので、注意が必要です。
加工された安いルビーのメリットとデメリット
メリット:安く大きいルビーを購入できる
加工されたルビー(重度な処理をして美しさを改良したもの)の材料となる原石は希少性が高くないので供給が多く、結果的に値段は安くなります。
その為、大きなものを手ごろな値段で購入できます。
安くて大きなルビーは、アクセサリーとして「見た目」に存在感があり、その迫力を楽しむとことを目的としている方にとってはひとつの選択肢となるでしょう。
デメリット:破損しやすく、売る時に宝石としての価値はない
加工されたルビーは、透明度が低く茶色い茶色美しさに欠ける原石を鉛ガラスなどと一緒に加熱することで、フラクチャー(割れ)にそれが浸み込んで透明度と色合いを改良する処理のことです。
ハンバーグのつなぎのように鉛ガラスが浸み込んでいますので、その部分の強度はガラスと同じです。
ヒビ(フラクチャー)がたくさん入っている原石の状態よりは、割れ難くなるのでしょうけど、意外と簡単に割れてしまったりします。
宝石ルビーの耐久性はありません。
また、鉛ガラス含侵処理など重度の処理がされたルビー(加工したルビー)は、宝石としての価値はありません。
手放す時に値段がつくことはありません。
天然無処理で美しい(ミャンマー産)ルビーの優れている点
天然無処理で美しいミャンマー産ルビーは非常に希少性の高い宝石です。
需要と供給のバランスが変わったことによる流通価格の変化で、この20年間、四大宝石の中で最も取引価格が上昇した宝石がルビーです。
原産地での産出量の減少、インターネットの発達、情報拡散によって、天然無処理で美しいミャンマー産ルビーの宝石としての価値が、末端に伝わったのが理由です。
高級美術品などが落札されるサザビーズやクリスティーズでスイスのGubelin Gem LabやSSEFなどの宝石研究所が発行する分析結果報告書に「天然無処理で美しい」こと「ミャンマー産」であることがコメントされると、高額で落札されます。
天然無処理で美しいミャンマー産ルビーGQジェムクオリティ(最高品質)の場合、買った時よりも高い値段で手放すことも期待できます。
大切なポイントは、ブランド価値、デザイン性ではなく、宝石ルビーそのものの品質を確認しておくことです。
詳しくは、宝石品質判定をご覧ください。(リンク)
天然無処理で美しいミャンマー産ルビーを購入する際の注意点
探す時に知っておいた方が良いこと
- 希少性が高いため、見つけるのが難しい
- 一番値段が高い類のルビーだが品質によって値段は様々
- 相性の良いルビーが高品質なルビーだとは限らない
希少性が高いため見つけるのが難しい
天然無処理で美しいミャンマー産ルビーは、高価な宝石ですが、それと同時に唯一無二の個性です。
相性の良いルビーを探すには、複数のルビーをみて比べた方が良いでしょう。しかし有名店であっても、複数のルビーを比べて選ぶことができないという問題点があります。
希少性の高い宝石ならではの難しさです。
インターネットで検索することで、ある程度の情報を入手できますが、高額な宝石ですので、手に取ってみること、そして詳細を確認することが大切です。
専門店に相談するのが良いでしょう。
一番値段が高い類のルビーだが、品質によって値段は様々
天然無処理で美しいミャンマー産ルビーは、一番値段が高い類ですが、それぞれの品質によって値段は様々です。
それがGQジェムクオリティ(最高品質)であれば、非常に高額ですが、AQアクセサリークオリティ(宝飾品質)であれば、意外と手の届く値段のものがあります。
品質の高さと好みは必ずしも比例しませんので、複数のお店をまわって天然無処理で美しいミャンマー産ルビーを見比べ、「目を養う」ことも選ぶ楽しみであり、「宝石を見分ける眼」は、国際的には重要な教養といえます。
同じ天然無処理で美しいミャンマー産ルビーでも、品質によって値段は様々です。
相性の良いルビーが高品質なルビーとは限らない
ルビーを購入する時に注意するべきポイントは、相性の良いルビーは、品質が高いルビーとは限らないということです。
まずは、自分の手の上に乗せてみて「好きなルビー」かどうか?判断して、その後、品質についてしっかりと説明を受ける、その順番を意識して下さい。
宝石品質判定で使うモノサシであるクオリティスケール上で、最も美しい「S」クラスの2つのルビーがあったとして、一つは色の濃淡が「#5」、もう一つは少し淡い「#4」であった場合、色の濃い方はGQジェムクオリティの判定、色の淡い方はJQジュエリークオリティと判定されます。
このGQとJQのルビーの値段は、同じサイズでも2倍~3倍になり、ほんの僅かな色の濃さの違いで購入する値段が大きく違いますが、この値段、相場の違いは「需要と供給のバランス」によるものであり、買う人の好みではありません。
それぞれの天然無処理で美しいミャンマー産ルビーは、この地球上にたった一つの個性であり、それは選ぶ人も同じことです。個性が2つ以上あると必ず相性が生まれます。
そちらを優先するのが良いでしょう。
人間に例えると分かりやすいと思います。一目惚れした人と、~大学卒、身長~㎝、体重~kg、性格が明るい、年収~円といったスペックで選んだ人の違いです。
そのスペックを表したのが宝石品質判定です。
日頃からルビーの指輪として着けることを想定して考えれば、一目惚れでしょう。
交換価値(資産性)を考えるなら高スペックが良いということです。
まとめ
安いルビーの指輪は、メインストーンのルビーの品質が高くないから。
宝石ルビーの中で一番高級品とされる「天然無処理で美しいミャンマー産ルビー」を探すのは意外と難しく、安く入手できる宝石ではない。
非加熱ルビーは、天然無処理で美しいミャンマー産ルビーとは限らない。
品質が高い天然無処理で美しいミャンマー産ルビーであれば相性が良いルビーとは限らない。
実物を手の上に乗せてみて、好きなルビーを選ぶ、そして品質についての詳細を説明して貰う順番が大切。
信頼できるジュエラー(専門店)でルビーを探すのが良いでしょう。