ルビーの含浸処理の効果とは?人工処理をされた偽物の見分け方

多くの人が、ルビーの美しい赤色と高貴な存在感に魅了されています。

しかし、ルビーが市場に出回る際、一部の宝石は含浸処理が施されていることがあります。

この背後には何があるのでしょうか?

含浸処理の目的とその影響について解説します。

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ルビーの含浸処理とは?

天然ルビー鉛含侵 タンザニア産

天然ルビー 鉛含侵 タンザニア産

含浸処理(がんしんしょり)がされたルビーとは、天然ルビーの透明度を改良するために人為的に特定の物質をルビー内部に浸み込ませたものを指します。

天然ルビーには、時折、内部に不透明な部分や割れ(クラック)があります。

それが破損の原因になるものや、美しさに悪影響を及ぼすものは欠点とされ、その度合いによって品質の低いルビーと判断されます。

品質が低いと判断されると宝石としての価値も下がるので、加工業者が、ひびや割れなどを目立たないように、透明な物質を浸み込ませるなどの処理を行います。

これが含侵処理です。結果として宝石ルビーが美しく見え、商品としての魅力度がアップします。

処理のプロセスは、単純にルビーをオイルの中に浸しひび割れに浸み込ませる方法や、高温の炉で鉛ガラスと一緒に加熱処理することで、特定のガラス類似物質をルビーのクラック(ひび)や不純物に浸透させる方法があります。

含浸処理のルビーは外観や透明性が改善され、より鮮やかで美しい宝石として見えるようになりますが、宝石としての価値はほとんど無いので注意が必要です。

含浸処理が行われるようになった理由

天然ルビーは、希少性が高く供給量が少ないのが、その理由です。含浸処理は、ルビーの供給を増やす方法の一つです。

需要に応えるために、含侵処理が行われるようになりましたが、宝石ルビーには、この他にも、加熱処理、充填処理など色々な処理があります。

一般に流通しているルビーで、天然無処理で美しいものはほとんどありません。

含浸処理がルビーの価格に及ぼす影響

含浸処理は、価格に大きな影響を与えます。

ひび、割れなどの欠陥や不透明性のあるルビーを含浸処理で品質改良したものは、見た目としてはきれいな宝石に見えるため、処理していることを知らずに販売されることがあります。

しかし、含浸処理されたルビーは、経験、技術のあるジュエラーまたは宝石研究所、鑑別業者であれば、容易に見分けることができます。

そして、含侵処理されていることが判明すると、宝石ルビーとして手放す時の価値は、ほぼ無くなってしまいますので注意が必要です。

宝石ルビーに交換価値(資産性)を期待して持つ場合は、含侵処理されたルビーはおすすめできません。

しかし、含浸処理されたルビーは天然のルビーよりも圧倒的に手頃な価格で購入できるため、処理されていると分かった上で購入し、ルビーの美しさを手軽に楽しむといった視点では、予算に合った選択肢として考えられます。

含浸処理の効果

含浸処理を行うと、さまざまな効果が得られます。

ここでは、含浸処理の主な効果について解説します。

外観の向上

含浸処理は、ルビーの外観を向上させることが主な目的の一つです。

自然のルビーには、クラック(ひび)や内部不純物が内包されるのが普通です。

それが透明度や色調、色彩に影響を与えます。

含浸処理は、これらの欠点を改善し、より透明で鮮やかなルビーに品質改良するものです。

含侵処理されたルビーをジュエリーに着けると、一般の方には見分けられなくなります。

耐久性の向上?

含浸処理は、ルビーの耐久性を向上させる目的で行うという意見もありますが、含侵処理でルビーの耐久性が改良されることはありません。

天然のルビーには微小なクラック(ひび)や割れ目が存在し、含浸処理によって隙間が埋められ、ルビーの耐久性が向上するという意見もありますが、元々あったひび割れに、鉛ガラスやオイルを含侵させたところで、ルビー本来の丈夫さは得られません。

日常の装着や取り扱いにおいて、ルビーの保護と長寿命を確保するために、含侵処理が役に立つという意見もありますが、根拠はありません。

色の改良

含浸処理に使用される物質は、ルビーの色調に影響を与えます。

ルビーの価値の大きな部分は、その美しい赤色にあります。

含浸処理は、ルビーの色を改良するために行われます。

これにより、市場でより高額な宝石として販売されることがありますが、含侵処理だと判定されると、宝石としての価値は、ほぼ無くなってしまうため注意が必要です。

含浸処理はどのように行われる?【工程について解説】

含侵処理

含浸処理はどのような流れで行われるのでしょうか。

ここでは、マダガスカル産、タンザニア産ルビーに鉛ガラスを含侵させる加熱処理方法の工程を説明します。

基本的な工程は以下のとおりです。

  1. 選別と前処理
  2. 加熱
  3. 含浸
  4. 冷却と洗浄

流れ①:選別と前処理

まず、鉛ガラスを含侵させる原石は透明度が低く、アクセサリーに使われる原石以下の低品質のものです。

外部の不純物や不透明な部分を取り除くために洗浄と鉛ガラスを深部まで含侵できる大きさまでカットし、成形するなどの前処理が行われます。

マダガスカル、タンザニアの原石業者は、タイランドのチャンタブリ市などにある業者まで直接原石を持ち込んできますが、その時には、加熱処理に適したサイズまで加工されていることが多く、選別、前処理は原産地で行っています。

流れ②:加熱

加熱処理は、ガス炉または電気炉の高温炉で加熱されますが、現在は電気炉が一般的になっています。

ルビーの加熱処理は、1990年代から盛んに行われており、加熱処理によってルビーの色調や透明度、色の濃淡を改良することができます。

含侵処理と同じく、ベリリウム(Be)を一緒に加熱することで、色調を改良するベリリウム加熱も同じ手順で行われます。

技術者によるとテキサスインスツルメンツの電気炉が使いやすいとのことで、温度は500度以上で加熱処理の効果は表れますが、含侵処理の場合は1800度以上の高温で行われます。

流れ③:含浸

加熱処理をする際に、鉛ガラスに浸し、特定の物質、通常は、ホウ砂、ガラス、硫酸鉛などの化合物に浸され加熱されます。

このプロセスでルビー内部の欠陥やクラック、フラクチャーが埋まり、透明度が向上し、光りが透過することで、色合いが改良され、輝きが増します。

鉛ガラスの含侵処理がされたルビーの、鏡を使った観察では、紫色の光が波を打って線状に輝くフラッシュと呼ばれるインクルージョンを観ることができます。

非常に分かりやすいので、慣れるとルーペで十分に見つけることができます。

流れ④:冷却と洗浄

加熱含侵処理されたルビーは冷却されます。

冷却されて固まった鉛ガラス、ホウ砂を砕いて、中から処理済みのルビーを取り出し、溶剤で洗浄した後、最終研磨し、作業は完了します。

宝石はきれいで透明な状態に仕上げられますが、顕微鏡で表面を観察すると鉛ガラスが含侵された跡の細いヒビが確認できます。

この処理をされたルビー表面のヒビ(クラック)の部分には、ルビーとは屈折率の違う鉛ガラスが詰まっているため比較的簡単に見つかるはずです。

含浸、重鎮処理に使用される物質

含浸処理には、様々な処理方法が存在します。

主な処理方法は、以下の3つです。

  • 鉛ガラス含侵(透明度向上)
  • オイル含侵 (透明度向上)
  • ガラス充填 (充填処理をしてキャビティを埋める処理)

ガラス充填

この方法では、ルビーの内部の微細なクラックやキャビティ(表面の生地不足)を埋めるためにガラスを充填します。

(詰めもののようなモノ)ルビーの透明度を向上させたり、外観を改良します。

ガラス充填されたルビーは、処理石と呼ばれて、市場では低価格で出回ります。

鑑別書には「充填処理」が明記されるので、鉛ガラス含侵処理と同じく分析に出せば分かりますが、通常の加熱処理したルビーの生地不足の部分、仕上げの研磨をした後に、表面にボラックス(ホウ砂)が残っている場合も、充填処理と分析結果が出ることがあります。

オイル処理

ルビーの内部の微細なヒビ(クラック)などを植物油(通常はシダーウッドオイル)が使って改良する原始的な処理方法です。

オイル処理により、ルビーの透明度が向上し、美しさが改良されますが、アセトンなどの揮発性の高い溶剤で洗浄するとオイルが抜けてしまうので、時間と共に劣化します。

この処理も、鑑別書に含侵処理されていると記載されることがあります。

含侵処理されたルビーを見分ける方法

含浸処理されたルビー、見た目は良いのですが、宝石としての価値は、ほぼないので注意が必要です。

ここでは購入時に気をつけておきたい、含浸処理ルビーの見分け方を紹介します。

  • 宝石鑑別業者、宝石研究所に分析を依頼する
  • 自分で判断する場合は拡大鏡や顕微鏡を使う
  • 含侵処理を見分けられるジュエラーに相談する

宝石鑑別業者、宝石研究所に分析依頼する

ルビーに含浸処理されているかどうかについては、宝石鑑別業者、宝石研究所に分析に出すのが手軽で確実な方法です。

海外では、スイスのGubelin Gem LabかSSEF、日本では、GIA JAPANか中央宝石研究所で分析して貰えます。

また、ジュエラーや宝石店の評判を調査しましょう。

信頼性のあるジュエラーが含浸処理のルビーを提供することは少ないため、評判の高い店舗を選ぶことが重要です。

自分で判断する場合はルーペーや顕微鏡を使う

ジュエラー

ルビーひとつ、ひとつをルーペで確認しています

基本的にはプロの鑑定士に依頼することをおすすめしますが、自身で含浸処理を確認する場合は、拡大鏡や宝石用の顕微鏡を使用しましょう。

含浸処理の兆候として、顕微鏡で内部を観察した際、フラクチャー(ヒビ、割れ)の部分が、虹色または、白濁して見えます。

強いライトを当てて角度を変えながら観ると分かりやすいでしょう。

表面に出ているフラクチャーを観察するのも有効です。

また、価格も注意深く確認しましょう。

含浸処理されたルビーと天然無処理で美しいルビーの販売価格を比較すると、ケタ違いですので、思ったより値段が安い時には、分析に出してみるのが賢明です。

含浸処理されたルビーは、天然無処理のルビーより、遥かに安価で購入できる点は魅力的ですが、手放す時、受け継ぐときに宝石としての値段はつかないため、割り切って美しさを楽しむことを目的にした方が良いでしょう。

まとめ

鉛ガラス含侵処理、オイル含浸処理、充填処理を含めた処理は、美しさに欠ける天然無処理の原石を人為的に処理することで美しさを改良し、販売価格を上げることが目的です。

ルビーの見た目は、改良されますが、分析すれば分かることですので、手放す時、受け継ぐときに、宝石としての評価は、ほぼ無くなりますので、美しさを楽しむと割り切って使うことです。

ルビーは、人工合成石の種類、人為的な処理の種類が最も多い宝石なので、ご購入の際は、専門的な知識のあるお店に相談されることをおすすめします。

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