ルビーは誰もが知る特別な宝石です。
しかし、ルビーの化学式や構造などルビーについて詳しく知っている方は意外と少ないかもしれません。
この記事では、宝石の中でも特別なルビーの化学式について詳しく解説します。
ルビーの化学式はAl2O3
宝石のルビーの 鉱物名は「コランダム」構成成分は化学式で、Al2O3です。
構成成分は元素の組み合わせである化学式によって表されます。
家に例えると、柱の組み立て方(結晶構造)と材料(構成成分)で決まります。
鉱物名は、主要構成 元素(と結晶構造)が同じものに対して名付けられるので一般的にはなじみが薄い方も多いです。
宝石名「 ルビー」の方が鉱物名「コランダム」よりよく知られています。
ミャンマー産ルビーに含まれる微量元素クロムの特徴
ルビーの赤い色を生み出す微量元素はクロム(Cr)ですが、結晶全体の1%~2%の含有率といわれており、4%ぐらいになると赤灰色になってしまいます。
その他、結晶に含まれる鉄分(Fe)もその赤色に影響を与えると言われており、玄武岩起源のルビーに多く含まれます。
タイランド、インド、アフリカ産の玄武岩起源のルビーが紫外線に当たった時に、蛍光性が弱いのは、この鉄分が影響しており、成分分析をすれば分かります。
ミャンマー産ルビーは、成分分析の表では、クロムの量が多く鉄分がほとんど検出されないのに対して、タイランド産などの玄武岩起源のルビーは、クロムと同じぐらいの鉄が検出されます。
コランダム(ルビー)に関わりのある元素
アルミニウム【Al】
アルミニウムの元素名の語源は古代ギリシャやローマの「ミョウバン」の古名「アルメン(alumen)」です。1807年にデービーが、ミョウバンから得た金属の酸化物を「アルミニウム」と名づけました。
アルミニウムの特性
アルミニウムは飲料の缶や食品用アルミホイル、硬貨(一円玉)や自動車など日常生活で私たちが良く使うものに用いられます。
また、ルビーやサファイアは宝石としての需要のほか、ルビーレーザーや薄膜基板としての用途もあります。
ここではアルミニウムの特性10点をご紹介します。
- 軽い:アルミニウムの比重は2.7で、鉄の約1/3の軽さです。
- 強い:純アルミニウムの引っ張りの強さは大きくないが、マグネシウムやマンガン、銅を添加すると強度が増します。
- 腐食しにくい:空気中では緻密で安定な酸化皮膜を生成するため、腐食が防止されます。
- 加工しやすい:加工がしやすく、さまざまな形状に成形されます。
- 電気を良く通す:送電線の約99%がアルミニウムです。
- 磁気をおびない:非磁性体で、磁場に影響されません。
- 熱をよく伝える:熱伝導率は鉄の約3倍。
- 低温に強い:液体窒素の極低温下でも破壊されない。
- 光や熱を反射する:良く磨いたアルミニウムは、赤外線や紫外線、電磁波をよく反射します。
- 毒性がない:無毒、無臭です。
クロム【Cr】
クロムの元素名の語源はギリシャ語の「色」の「chroma」です。ボークランは、シベリア産の紅鉛鉱からクロムの酸化物を発見しました。
鉄【Fe】
鉄(Iron)の元素名の語源はケルト語で「聖なる金属」です。紀元前5000年ごろから使用されていたといわれています。
身の回りの物質の元素
古代ギリシャの時代から、人々は身の回りの物質が何からできているのか、不思議に思っていました。
それを科学的に検証できるようになったのは、18世紀末になってからです。
19世紀に物質をいくつかの元素に分解する精密な装置が発明されると、多くの化学者たちが身のまわりにあるものを調べはじめました。これによりさまざまな元素が明らかになり、周期表が誕生しました。
化学式とは
化学式(かがくしき)とは、化学物質の成り立ちを原子の記号と数字で表した式のことです。
「原子の記号」は「元素記号」とも呼ばれ、酸素や水素などをアルファベットで表します。
定義だけ聞くと難しいように感じますが、普段の生活の中で当たり前のように存在している水や空気、金属なども化学式で表すことができるのです。
化学式では、酸素や水素、鉄などの元素は、それぞれ「O」「H」「Fe」というようにアルファベットで表記されます。
このアルファベットで表したものを「元素記号」といい、それぞれに「原子番号」が割り当てられています。
原子を原子番号の順に並べ、性質の類似した元素が縦に並ぶように配列した表が「周期表」です。
その後、無機化学者たちの手により、未知の元素や元素に関する法則が次第に明らかにされていき、20世紀に入り、半導体や電池の開発につながっていきました。
鉱物は、目に見えないほど小さい原子が決まった形に並んだ結晶
鉱物は、目に見えないほど小さい原子が決まった形に並んだ結晶です。
原子は、物質を構成する基本的な粒子で、地球上にある物質はすべて何らかの原子で構成されています。
たとえば、「水」は酸素と水素に分けることができ、酸素と水素は、それ以上別の物質に分けることができません。このような1種類の原子からなる物質のことを元素といいます。
鉱物を原子のレベルでみると、原石に含まれてる鉱物をさらに拡大していくと、原子が構成しているのがわかります。
原子がいくつか集まって分子をつくり、多くは原子や分子などが方向性を持ち、規則的な並び方をくりかえしていて、これを「結晶」といいます。
規則正しい形がいつもあらわれるのは、結晶内での原子や分子の配列が、結晶全体にわたって規則正しい方向性をもちます。
結晶は以下の2つに分けられます。
- 「単結晶」:固体がひとつづきのもの。
- 「多結晶」:単結晶が集合したもの。
引用文献 Newton大図鑑シリーズ 化学大図鑑
ルビーとサファイアは同じ宝石?
「紅玉」と呼ばれることもあるルビーと、「青玉」とも呼ばれるサファイア(ブルーサファイア)は、一見するとまったく違う宝石に見えますが、実はどちらも酸化アルミニウムAl2O3が天然の結晶として産出した「コランダム」の一種です。
わずかな原子の違いによって吸収される色が違う
サファイアとルビーは98パーセント以上の主成分が同じであるにもかかわらず、微量な不純物の差によって劇的に違う色をしています。
純粋なコランダムは無色透明ですが、ルビーの場合、「クロム(Cr)」を数パーセントを含むものは、紫色の光や黄緑色の光を吸収し、主に赤色の光だけを透過・反射して赤く色づきます。
サファイア(ブルーサファイア)の場合、不純物として「鉄(Fe)」と「チタン(Ti)」を含むものは、主に青色以外の光を吸収し、残った光で深い青色(濃紺)に色づきます。
エメラルドとルビーの違いとは?
また、不純物が同じであっても、原子の規則的な並び方(結晶構造)のわずかな違いで、まったく別の色になることもあります。
エメラルドは「ベリル」(緑柱石 ベリリウムとアルミニウムを含むケイ素塩鉱物)の一種で、ルビーと同じくクロムを不純物として含みますが、緑色をしています。
エメラルとルビーの結晶には、どちらもクロム原子が6個の酸素原子にかこまれた8面体の構造があります。
しかし、エメラルドとルビーは吸収する光の波長の領域も違います。そのわずかな違いにより、エメラルドは緑色に見え、ルビーは赤い色に見えます。
まとめ
この記事では、宝石の中でも特別なルビーの化学式について詳しく解説してきました。
さまざまな化学組成から、原子や分子の性質を知り、宝石は地球が生み出した元素の芸術であることがわかりました。
ミャンマー産ルビーは、地下40㎞の深いところクロム(Cr)の多いところで結晶したため、鉄分がほとんど含有されておらず、ほぼクロムだけで赤く発色します。
ミャンマー産ルビーが紫外線に強い蛍光反応を示すのは、この微量元素の割合の違いによるものです。
最高なルビーをお探しの方はクロムを含んだミャンマー産のルビーを探してください。