人工合成ルビーと宝石ルビーの違いは?【成分や価格と作り方を解説】

宝石ルビーの鮮やかで魅力的な赤色は、太古より多くの人に愛され、価値の高い宝石としてコレクターによって高く評価されています。

その中でも、天然無処理で美しいミャンマー産ルビーの希少性は、とても高く「ロイヤルファミリーなどの特別な人のみ手にすることができた宝石でした。

「高嶺の花」として人々の憧れの対象だったルビーは、約130年前に発明され、120年前から発売された人工合成ルビーの登場により、多くの人の手に届くようになりました。

この記事では、人工合成したルビーの成分や作られ方について解説します。

Contents

人工合成ルビーとは?基本的な定義と概要

人工合成ルビー

天然のルビーと同じ化学組成のコランダムを人工的に合成するした石が人工合成ルビーです。

人工合成ルビーの成分や材料は、科学的なプロセスに基づいて細かく調整され、純度が高いほど合成石の品質が向上しており、天然ルビーと同等か、それを上回る純度の人工合成ルビーの生産が可能です。

英語ではSynthetic Rubyと呼ばれ、酸化アルミニウムに赤の着色要因であるクロム(Cr)を配合していますが人工合成石は、宝石の定義から外れるため、宝石には含まれません。

見た目、耐久性についは、ほぼ天然ルビーと変わりはありません。

そもそも宝石には定義があります。定義3つからなります。

  1. 美しく
  2. 希少性が高く
  3. 経年変化のない

そのため、人工的に合成した石は宝石の定義の希少性の高さを立証できないことから、人工合成ルビーは、宝石とはみなさないのです。

なぜ人工合成ルビーが作られるのか?

人工合成石

天然ルビーの希少性が高く、供給が不足するため

天然ルビーの中でも、人為的な処理を受けていないものを指して天然無処理のルビーと呼びます。

これらのルビーは、天然のままの状態であるため、希少価値が非常に高く、高額なジュエリーに使われます。

希少で高価な天然無処理で美しいミャンマー産ルビーは、欧州の産業革命以降、旺盛な人々の需要に対して供給が不足していました。

そのため、1883年にフランスのベルヌイ博士がルビーと同じ化学組成を持つ人工合成ルビーを発明し、フランス産ルビーとして販売され、世界中で大流行しました。

多くの人が美しい赤色の人工合成石を、手頃な価格で購入できる代替品として買い求めました。

人工合成石を自由にできるポインは以下の3点です。

  • カラット
  • カット
  • クオリティ

人工合成石は天然のルビーと比べ、人工的に生産できるため量産することができます。

そのため、加工の自由度があがりファッショ性の高いアクセサリーなどに使用できます。

人工合成方法と技術進歩

貴重な宝石であったルビーを人工的に合成して生み出すことは、当時の人々からすると相当な衝撃的なことでした。

しかし、技術進化が進み、人工の石など珍しくなくなった現在では、低コストで量産もできるようになりました。

人工合成ルビーの作り方

人工合成石はどのように作られるでしょうか。

主な人工合成石の加工法は2つをご紹介します。

  • 火焔溶融法
  • 水熱合成法や融剤法(結晶引上げ法)

火焔溶融法

ベルヌイ博士が発明した酸化アルミニウムの具体的な合成方法は例えば、火焔溶融法(前述のベルヌイ博士が発明した方法)であれば、高温のノズルに粉末状のアルミを溶解させながら酸化アルミニウムを氷柱のように成長させていくプロセスです。

顕微鏡で結晶の状態をみると、円周状の成長線が見られます。

要するに鍾乳洞のように合成石が成長していくような感じです。

水熱合成法や融剤法(結晶引上げ法)

1900年代初頭には登場している結晶引き上げ法は、シリコンや金属の単結晶化のプロセスを宝石に応用したものです。

るつぼ内で液から引き上げる際に生成される天然ではありえない円心円状の気泡が入ることがあります。

人工合成ルビーと天然ルビーの違い

ルビーは、アルミニウム(Al)が2つと酸素(O)が3つで結合し、結晶化しコランダム(Al2O3)になり、そこに着色要因であるクロム(Cr)が2~3%入ると赤くなります。

人工合成ルビーと天然ルビーは、外観、物理的特性、化学的特性においては、ほとんど同じですが、大自然の造形美である宝石と人間が量産できる商品という点では根本的に違うものです。

以下では人工合成ルビーと天然ルビーの違いについて3点解説します。

  1. 化学組成
  2. 内包物
  3. 硬度と輝き

①化学組成

天然ルビーも人工合成石も同じ鉱物でコランダム(Al₂O₃)で、化学組成は同じです。

ルビーは、アルミニウム(Al)が2つと酸素(O)が3つで結合し、結晶化しコランダム(Al2O3)になり、そこに着色要因であるクロム(Cr)が2~3%入ると赤くなります。

②内包物(インクルージョン)

シルクインクルージョン

天然ルビーの赤色は、コランダムにクロムが含まれて赤く発色したもので、その美しく濃い赤色は太古より人々を魅了してきました。

大自然の造形美である天然ルビーには、少し歪んだプロポーションや生地不足があります。

また、自然に内包されるインクルージョンインクルージョン(内包物)は結晶た環境によって差異があり、無数の組み合わせがあり、ルビーのひとつひとつに個性があります。

人工合成石ルビーも同様の色調や性質(二色性)を持ちます。

そして、火焔溶融法であれば円周状の成長線が見られたり、溶融法、結晶引上法、の合成石の場合は、ルチルの針状結晶などインクルージョンを内包することも可能です。

しかし、大自然の造形美である天然ルビーのインクルージョン(内包物)と比べると、その石の個性と呼べる自然の美しさはありません。

③硬度と輝き

天然ルビーと人工合成石は研磨した際の光の反射においても似たような性質を持っています。

モース硬度スケールで9と非常に硬度が高く、高い屈折率(1.76~1.77)です。

人工合成石、人為的に品質改良されたルビーの判別方法

外観だけで天然ルビーと人工合成石を区別するためには、かなりの知識と訓練が必要です。

宝石鑑別業者(鑑別機関)では、専門的な光学機器を使い、宝石種の判別を行ってくれます。
ルビーの具体的な鑑別方法は、以下の4つです。

  • 目視の検査、顕微鏡を使った拡大検査
  • 光学スペクトル分析(FTIR、ラマン分光)
  • レーザートモグラフィー(結晶成長構造の解析)
  • ICPMAS(微量成分分析)など

このように、宝石の種類と処理の判別については、専門知識、経験、判別するための機器が必要になるため、宝石鑑別業者、宝石研究所に相談されるのが良いでしょう。

人工合成ルビーの価格はなにで決まる?

人工合成ルビーは、製造された当初は、天然のルビーと混合されていたため高額な金額で取引されていました。

しかし、人工合成されたルビーは宝石ではないと定義されるようになり、発売から100年以上経った現在は供給され続け、増える一方です。

そのため、価格が下がることはあっても、希少性の高まりによって高値で取引されることはありません。

格安の人工合成ルビーは、安いものであれば、数粒セットで数十円〜百円で取引され、手作アクセサリーや手芸品などの材料として利用され現在では、1ctあたり数百円と非常にお手頃な価格で取引されています。

人工合成ルビーも販売価格は、いくつかの要因に影響を受けます。

  • 商業的な要素
  • ブランド価値
  • 市場需要と供給のバランス

人工合成ルビーはすでに、高度な技術で簡単に高品質のルビーが製造できるようになっています。

しかし、新しい技術開発によって今後、人工合成石が価格があがっていくことはありません。

大自然の造形美である宝石と人間が量産できる商品という点では根本的に違うものです。

商業的な要素

量が増やせる宝石

商業的な要素によって価格は上がることはあり、誰かが持っているブランド、エシカルな宝石、等々、商業的なイメージで販売価格が高い場合もあります。

最近、「環境にやさしい宝石」としてマーケティングするエシカルなダイヤモンドが市場で多く取引されはじめましたが。

しかし、人工合成ルビーの歩んできた歴史をみれば、100年後、人工的に数を増やした人工合成石は経年変化せず、たどる未来は人工合成ルビーと同じ道です。

過剰供給による供給過多になる人工合成石は、近い未来、宝石とみなされなくなります。

ブランド価値

ルビーを使ったジュエリーには、使用価値と交換価値(資産価値)の両方が混在しています。

人工合成ルビーの価格も、ブランド価値が加わっていると判断が複雑になります。

ブランド価値も一部のジュエラーや宝石メーカーは高級な人工ルビーを提供しており、ブランドの製品はプレミアム価格で取引されることがあり価格に影響を与えます。

また、有名な宝石ブランドが製品にサインを入れた場合、それにより価格が上昇することがあります。

アクセサリーとして使うのであれば人工合成ルビーという選択もありますが、購入される人が、持つ目的を明確にしておくことが重要です。

市場需要と供給のバランス

市場の需要と供給のバランスも価格に影響を与えます。

商業的な流行りによってイメージよく広告を出すことで、市場の需要が高くなった場合、価格は一時、上昇することもあります。

しかし、商業的な流行りによってつくられた需要は、時間が経てば価値が陳腐化するため、人工合成石は宝石として交換価値(資産価値)は期待しない方が良いでしょう。

人工合成ルビーが宝石業界に与える影響

価格が下がり、多くの人に届くことでおきた変化

約130年前に発明され、120年前から発売された人工合成ルビーの登場により、美しい宝石を安く手に入れやすくなり、ルビーは多くの人の手に届くようになりました。

人工合成石は、天然ルビーと同等か、それ以上の価格で販売され、人生で重要な結婚指輪などで宝石としても使われていました。

しかし、残念ながら現在では、人工合成石は宝石ではないため還流市場で宝石として値段がつくことはありません。

次の世代へ受け継ごうとする際に査定すると宝石としての価値は、ほぼゼロということです。

「資産になるだろう」と大切にされてきた人は、大変なショックを受けています。

ルビーを長く楽しんで、将来は大切な誰かに受け継いでゆくことを考えるのであれば、受け継がれる時にも価値が変わらない、天然無処理で美しいルビーを選ぶことが重要です。

宝石商(ジュエラー)により価値観の違い

宝石商(ジュエラー)が人工合成ルビーを導入することで、使用価値(使うことを楽しむ価値)を楽しむジュエリーを増えてきました。

ブランドとして、身に着ける価値を打ち出し販売する宝石商(ジュエラー)もいるでしょう。

このように顧客に多様なルビーの選択肢が提供されることは良いことですが、人工合成ルビーを天然ルビーと見た目が同じだから、価値のあるミャンマー産天然無処理で美しいルビーと同じ交換価値(資産価値)があるだろうと安易に考えるのは間違いです。

人工合成ルビーは、使用価値(身に着けて、使って楽しむ)は同じであっても交換価値(資産価値)は全くなく、あくまでも使う楽しみを購入するのだと認識しておくことが重要です。

まとめ

ルビージュエリーを購入する際は、信頼できるジュエラーから、そのルビーの価値についてアドバイスを受けて、目的にあったルビージュエリーを購入することが重要です。

天然のルビーと人工合成石を比べて観ると、人工合成石の方が綺麗に見えるかもしれません。

しかし、人工合成ルビーには、自然の個性はありません。

価値の高い宝石ルビーを探す時は、整い過ぎていない、自然の痕跡を残した個性的なルビーを探すのもコツの一つです。

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