ルビーには、加熱処理が施されたものと非加熱のものが存在します。一般的に市場で流通しているルビーの多くは加熱処理され、色や透明度を整えることで美しさを引き出しています。
一方、非加熱ルビーや天然無処理のルビーは、自然のままの姿を持ち、加熱処理では再現できない奥行きのある輝きと、希少性ゆえの確かな価値を備えています。
特に、ミャンマー産のルビーは世界的にも入手が難しく、「一生ものの宝石」として贈り物にも選ばれています。
モリスでは、天然無処理のミャンマー産ルビーを取り扱っているので、ご覧になりたい方は、ぜひ一度店舗へ足を運んでみてください。(来店予約はこちら)
この記事では、非加熱ルビーと加熱ルビーの違い、見分け方、価値・品質・価格の考え方について解説します。
非加熱ルビーとは?(加熱処理との違い)
ルビーを探していると、「非加熱」「加熱処理」という言葉を目にすることがあります。どちらも天然ルビーではありますが、その価値には大きな差があります。
非加熱ルビーは、採掘されたままの状態に極めて近く、加熱によって色や透明度を調整していないものを指します。一方、加熱ルビーは美しさを引き出すために人工的に熱を加えたルビーのことで、市場に多く出回っています。
ルビーの希少性や将来の価値を考えるなら、非加熱であることは重要な要素となります。ここでは、非加熱ルビーや加熱ルビーとは何かを明確にし、両者の違いについて解説します。
非加熱ルビーとは?
非加熱ルビーとは、加熱処理による変化が認められない天然ルビーを指します。ここで注意したいのが、「非加熱=天然無処理」ではないという点です。
ルビーには、加熱処理以外の処理方法が存在するため、非加熱はあくまでも熱を加えていないという限定的な表現になります。より純粋に自然のままの状態を求めるなら、「天然無処理」であることを鑑別書または品質証明書で確認することが大切です。
天然無処理のルビーは非常に少なく、一粒一粒に個性があり、愛好家やコレクターからも高く評価されています。
加熱ルビーとは?
加熱ルビーは、色味や透明度を向上させるために高温で処理された天然ルビーです。
ルビーの加熱処理は、宝石業界では古くから行われている一般的な処理方法で、市場に出回るルビーのほとんどが加熱済みと言われています。
ルビーは加熱することによって色が均一になり、透明感も増すため、見た目の美しさを重視する方には十分ですが、希少性や価値の面では、非加熱のルビーに劣ります。
価格を抑えたアクセサリーとして楽しみたい方は、加熱ルビーは良い選択肢かもしれませんが、資産や贈り物として考えている方は、非加熱かつ天然無処理のルビーを選びましょう。
非加熱ルビーと加熱ルビーの違い
非加熱ルビーと加熱ルビーを見比べたときの一番の違いは、「内包物(インクルージョン)の状態」にあります。
非加熱ルビーには天然のインクルージョンがそのまま残されており、繊細なルチルシルク(針状結晶)が美しい光の筋を生むこともありますが、加熱ルビーは、熱によってそれらが溶けてしまい、滑らかで均一な見た目になります。
それぞれの違いに関しては、「非加熱ルビーは自然の痕跡が残る唯一無二の個体」であり、「加熱ルビーは整えられた美しさ」があると捉えると分かりやすいかもしれません。
どちらを選ぶかは好みによりますが、記念の贈り物として選ばれるのは、やはり加熱されたものではみられない個性を持つ非加熱ルビーです。
非加熱ルビーと加熱ルビーの見分け方
非加熱ルビーと加熱ルビーは、外見だけで判断するのが非常に難しい宝石です。しかし、内包物(インクルージョン)の観察や専門家による鑑別技術を駆使することで、その違いを正確に見極めることができます。
ここでは、代表的な見分け方と、専門的な判断基準について解説します。
内包物(インクルージョン)を見る
非加熱ルビーを見分ける代表的な方法は、ルビー内部の内包物(インクルージョン)を観察することです。
天然無処理、非加熱のルビーには、結晶成長の過程で生じた針状や液体包有物など、独自のインクルージョンがありますが、加熱処理を施すと、これらのインクルージョンは溶解や変化を起こし、見え方が大きく異なります。
つまり、インクルージョンの特徴を確認することで、非加熱ルビーか加熱ルビーかを判断する目安が得られます。
ただし、インクルージョンから加熱か非加熱かを見分けるには、高倍率の顕微鏡や専門的な知識が必要なので、一般の方が完全に見極めるのは困難です。
専門家に依頼する
非加熱ルビーと加熱ルビーの正確な判定には、専門家や信頼できる鑑別機関への依頼するのが最も確実です。
専門家や鑑別機関では、ルビー内部のインクルージョンや微細構造を詳細に分析し、加熱処理の有無や原産地まで特定することが可能です。
中央宝石研究所(CGL)や国際的な宝石研究所(GIA)などでは、科学的な手法でルビーを鑑別し、鑑別書も発行しています。
大切な贈り物や資産価値の高いルビーを選ぶ際は、専門家による確実な鑑別が安心につながります。
モリスが加熱処理を見分けられる理由

「ミャンマー産ルビーのインクルージョンと低温加熱処理における変化」 平成20年度、宝石学会(日本)、講演論文要旨、森孝仁、奥田薫
ちなみに、モリスでも非加熱ルビーと加熱ルビーを見極めることができます。
モリスは、2006年から自社で天然無処理ルビーを対象に加熱処理実験を実施し、独自の宝石品質判定技術を確立しています。
鉱山で直接取得したルビーサンプルを加熱し、内包物(インクルージョン)の変化を詳細に観察することで、処理の有無を高精度で見分けられるようになりました。
この研究成果は日本宝石学会で発表され、スイスや米国の宝石研究所とも情報共有を行っています。
またモリスでは、ルビーのインクルージョンの5万石以上のデータ(顕微鏡拡大写真)を保有しており、原産地判定や処理の有無の判断に活用しています。
このような背景から、モリスはルビーの品質判定を実施しており、専門スタッフが直接1点1点のルビーの個性について解説します。天然無処理のミャンマー産ルビーをご覧になりたい方は、ぜひ店舗で実物を確かめてみてください。(来店予約はこちら)
なぜ加熱ルビーや処理石が市場に流通しているのか?
ルビーはその美しさと希少性から、世界中で高く評価される宝石です。しかし、市場に出回っている多くのルビーは加熱処理やその他の人工的処理が施されています。
ここでは、なぜ加熱ルビーや処理石が流通しているのか、どのような処理が行われるのか、そしてルビーの本来の美しさについて解説します。
なぜ加熱ルビーや処理石が市場に流通しているのか?
加熱ルビーや処理石が市場に流通している理由は、天然無処理のミャンマー産ルビーの希少性が高く、供給量が限られているためです。
希少性が高いルビーが供給できないことから、市場では低品質のルビーに加熱や充填などの処理を施すことで、色味や透明度を改善した美しい石が流通していきました。
少し前まで、天然無処理のルビーと加熱ルビーや処理石の見分けるのが難しいため、市場でルビーの本来の価値が維持できない時期もありました。
現在は鑑別技術が向上により、ルビーの微細なインクルージョンも見分けることが可能です。
加熱や処理はルビーの美しさを最大限に引き出し、市場での流通量を確保する重要な技術となっていますが、希少性という観点から本物のルビーの価値には及ばないことを覚えておきましょう。
ルビーに施される主な処理方法
ルビーの美しさを引き出すために使用される代表的な処理方法は以下の3つです。
- 加熱処理
- 含浸処理
- 充填処理
加熱処理は色味や透明度を改善する最も一般的な方法で、ルビー特有の赤色を鮮やかに整えます。また、含浸処理や充填処理は、亀裂にガラスを流し込み透明度や輝きを改善する方法で、特に割れやすいルビーに用いられます。
ルビーの処理方法は、宝石本来の魅力を引き出すために考案され、宝石の種類や状態に応じて使い分けられています。
処理前のルビーの美しさを知る
宝石の本来の美しさを知るためには、市場に出る前に採掘された原石の存在を知ることが大切です。
宝石は地球が長い年月をかけて作った原石の潜在的美しさを人の手による研磨やカットで引き出したものです。
処理された後の美しさだけに注目してしまうと、天然の宝石本来の価値を見落してしまいます。特にミャンマー産ルビーの原石は、加熱処理なしでも独自の赤色と輝きを持っています。
ちなみに、研磨やカットは宝石の性質を変えないため「処理」には含まれず、宝石学的に明確に区別されています。
自然のままのルビーは、まさに地球が育んだ唯一無二の美しさを備えており、宝石の魅力を知る第一歩として非常に重要です。
非加熱ルビーと加熱ルビーの価値・品質・価格
天然ルビーを選ぶ際には、非加熱か加熱かによってその価値や品質、価格が大きく変わります。
ここでは、それぞれの特徴を整理し、宝石としての本質的な違いを理解できるよう解説します。
特に、人生の節目の贈り物や資産価値を意識する場合には、非加熱かつ天然無処理ルビーの希少性と将来性に注目することが重要です。
非加熱ルビーと加熱ルビーの価値(処理石は資産価値が低い?)
非加熱ルビーは、天然そのままの美しさと希少性から、宝石としての価値が非常に高く、資産価値も保たれやすいのが特徴です。
また、非加熱ルビーは市場に出回る量が少なく、特にミャンマー産のピジョンブラッドは希少で「数百万円〜数億円」に達することもあります。
一方、加熱処理ルビーは色味や透明度が人工的に改善されており、見た目は美しいものの資産性は低いです。
ルビーの資産価値について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
非加熱ルビーと加熱ルビーの品質
ルビーの品質面では、非加熱ルビーは天然の内包物や色の深みを持ち、自然な魅力と個性を楽しむことができます。
加熱処理ルビーは、色のムラを減らし、透明度を向上させていますが、人工的に整えられてしまうため、非加熱や天然無処理ルビーが持つ独自の個性や原石の痕跡は失われてしまいます。
宝石の価値を見極める際には、色味だけでなく透明度や内包物の特徴、産地情報なども確認することが重要です。
ルビーの品質について気になる方は、以下の記事もチェックしてみてください。
非加熱ルビーと加熱ルビーの価格相場
価格面では、非加熱ルビーと加熱ルビーで大きな差があります。
非加熱かつ天然無処理ルビーは1カラットあたり「数十万円〜数百万円」と高額で取引されることもあり、特に希少なミャンマー産ピジョンブラッドは市場価値が極めて高いです。
一方、加熱ルビーは加熱により見た目が美しくなっていても、価格は非加熱ルビーの1/10程度に抑えられ、1カラットあたり「数千円〜数万円程度」が一般的です。
価格差の要因は、処理の有無、産地、色の質、サイズなど複合的な条件によって決まります。
ルビーの価格について知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
非加熱ルビーに関するよくある質問
ここでは、非加熱ルビーに関するよくある質問を解説します。以下の非加熱ルビーに関する内容を通してルビーを選ぶ際の参考にしてみてください。
質問①:非加熱のピジョンブラッドルビーは存在する?
非加熱のピジョンブラッドルビーは存在しますが、非常に稀少で高額です。そもそも、ピジョンブラッドとは最高品質のルビーのことを指します。
ピジョンブラッドルビーは、深く鮮やかな赤色が特徴で、非加熱、無処理の状態で美しさを保っているものは数が限られています。
特にミャンマー産の非加熱かつ天然無処理ルビーは、その自然な色彩と透明度の高さで高い評価を受けています。希少性ゆえ、一般市場では容易に入手できず、サザビーズなどのオークションでも数億円で落札されるほどの価値があります。
非加熱のピジョンブラッドルビーは、宝石としての本質的な魅力を追求する方にとって、特別な存在と言えるでしょう。
質問②:非加熱ルビーのルースはある?
非加熱ルビーのルースは存在しますが、その数は非常に限られています。そもそもルビーのルースとは、枠に留められていない「裸石(ルースストーン)」のことを指します。
ジュエリーに加工される前の状態で、好みのデザインに仕立てたり、コレクションとして保管したりと、自由度の高い楽しみ方ができるのが魅力です。
特にミャンマー産の非加熱ルビーは、自然が生み出したままの色と透明度を保っているため、ジュエリー業界でも高く評価されています。
加熱処理によって色を整えていないぶん、 原石そのものの「生きた炎」のような赤色や、個体ごとの個性がそのまま現れているのが特徴です。
質問③:非加熱ルビーのジュエリーはある?
非加熱ルビーを使用したジュエリーも存在し、特に高級ジュエリーブランドやルビーの専門店で取り扱われています。
ただし、「非加熱ルビー」と記載されていても、「天然無処理」ではない可能性があるので注意してください。購入前に店舗のスタッフに天然無処理かどうかを確認しましょう。
非加熱かつ天然無処理のルビーは、加熱処理を行わず自然のままの美しさを保っており、その希少性と上質な色合いから、ジュエリー素材として非常に人気があります。
例えば、ミャンマー(モゴック)産のルビーを用いたネックレスやリングは、自然な赤色と透明度を活かしたデザインで販売され、高級感と特別感を兼ね備えています。
天然無処理のルビーは、プレゼントや記念品としても価値の高い選択肢となります。
質問④:非加熱ルビーの主な産地は?(ミャンマー・モゴック・モザンビークなど)
非加熱ルビーの主な産地は、ミャンマーのモゴック地区、モザンビーク、タイ、スリランカなどです。
これらの地域はルビーの産出量が多く、特にミャンマーのモゴック地区は高品質な非加熱ルビーの産地として世界的に有名です。採掘されたルビーは加熱処理を行わず流通することも多く、天然の色彩や透明度が保たれています。
モザンビークやタイ、スリランカでも非加熱ルビーが採掘されるケースもありますが、ミャンマー産のルビーが最も評価が高いです。