太古よりとても人気のあるルビーには、よく似たモノがたくさんあり、種類も色々なものがあります。
そして、その種類によって価値は大きく違います。価値の高い宝石ルビーだと思って、大切な人に贈ったものが、後から偽物であったと分かったらプレゼントした側だけでなく、受け取った側も思い出が壊れてしまいます。
そうならないために、ルビーの種類とルビーの見分け方について詳しく説明していきましょう。
ルビーの種類とは?
ルビーという名前がついている商品には、色々な種類のものがあります。
そして、そのすべてが宝石として価値の高いものではありません。
ルビーの歴史は長く、また人気が高かったことから、数多くの種類のものがルビーとして世の中に出回っています。
宝石ルビーだと思っていたが「赤いガラス」や「赤いプラスチック」であったとか、ルビーによく似ていたがガーネットだったということもあります。
また、ルビーに似せた人工合成石かも知れません。
そして、天然ルビーであっても、人為的に処理をされて美しさが改良されたモノかも知れません。
色々と種類のある中から、自分が欲しいものを選ぶときは宝石品質判定を使って、手に入れる目的に合うルビーを探してみましょう。
ルビーを手に入れる目的と、それに合ったルビーの種類
- 長く楽しんで受け継ぐ、または手放す時に交換価値(資産性)のある宝石ルビーを探す
- ファッションの一部として使って楽しむためにルビーを探す
- 時計の軸受けなど、素材、部品としてルビーを探す
1 の場合であれば天然無処理で美しいミャンマー産ルビーということになります。
2 の場合は、人工合成石や類似石、模造石でも美しいものであれば十分ですが、天然ルビーが良い場合は、加熱処理など人為的に美しさを改良したルビーが良いでしょう。
3 の場合は、人工合成石(ルビー)が良いでしょう。天然ルビーより品質管理がし易いためです。
ルビーの種類は、宝石品質判定の下記の3項目をチェックすることで見分けられます。
- 宝石種
- 原産地
- 処理の有無
ルビーの種類だけであれば宝石種だけで良いのですが、購入する人の目的によっては、原産地、処理の有無は、交換価値に大きく影響を及ぼすため、確認しておいた方が良いでしょう。
①ルビーの種類:天然ルビー
本物のルビーといえるのは「天然ルビー」です。化学組成は「Al₂O₃」、酸化アルミニウムにクロム(Cr)が入ることで赤く発色する宝石です。
鑑別書には「天然コランダム、宝石名ルビー」と記されています。
天然ルビーですが、この天然ルビーと呼ばれるものにも2種類あるので注意が必要です。
- 天然無処理で美しいルビー
- 天然だが処理をして人為的に美しさを改良したルビー
鑑別業者の発行する分析結果報告書(通称:鑑別書)には、「ルビーは通常、加熱処理による色の改良がおこなわれています」とコメントがあるはずです。
店舗で販売されているルビーは、天然ルビーであるものの通常は、加熱処理をして人為的に美しさを改良したものだと考えた方が良いでしょう。
天然無処理ルビー
天然無処理で美しいルビーが鉱山で産出することは少ないため非常に希少性が高く、コレクターズアイテムとして還流市場(オークション)などで売買されます。
宝石としての価値は、産地によって差があります。
1ct以上の大きさの天然無処理で美しいミャンマー産ルビーには交換価値(資産性)がありますが、分析結果の信憑性もしっかり確認しておきましょう。
信頼性の高い分析結果報告書は、スイスのグベリン宝石研究所Gubelin Gem Lab、または、スイスのSSEF、アメリカのGIA、日本では中央宝石研究所です。
ただ、鑑別業者が発行する鑑別書に「加熱された痕跡は認められない=No indication of heatine」とコメントされたものが「非加熱ルビー」として流通していますが、誰も天然無処理だと保証していないことがあるので注意が必要です。
鑑別書は、業者がそのルビーの品質をダブルチェックするために第三者の意見を聞くためのレポートであり、品質保証書ではありません。
鑑別書の裏書に、分析の結果を報告するものであり、品質を保証するものでは無いと明記されています。
購入の際は、販売するお店から「天然無処理」であることの保証書を発行してもらいましょう。
天然だが処理をしたものには注意が必要
前述の通り、天然ルビーは通常、加熱処理など人為的に美しさが改良されたものです。
経年変化も無いと報告されているので、着けて楽しむ用途であれば天然無処理のものと変わりありませんが、分析をすると処理の有無は見分けることができます。
需要と供給のバランスは時間と共に崩れていくので、受け継ぐとき、手放す時の交換価値(資産性)を考えた場合、天然無処理で美しいものが良いでしょう。
また、ルビーの処理には、加熱処理する際に鉛ガラスを含侵させて透明度を高めたり、表面だけに色を濃くする処理(表面拡散処理)、虫食いのように凹んだ部分を埋める充填処理などの処理もあります。
これらは、天然であっても宝石としての価値はほとんど無いので注意が必要です。
人工合成ルビー
宝石の定義は、美しく、希少性が高く、経年変化の無い、天然由来の石であることです。
人工合成石は、見た目はルビーとほぼ同じですが、宝石ではありません。
ただ、過去には人工合成石とは告知せずに「ルビー」として販売されていた時代があり、未だに多くの人が、宝石ルビーだと誤解して大切に保管されています。
ジュエリーの仕立て直しの時、手放そうとした時に、天然ルビーだと思って大切にしてきたものが人工合成石だと分かり、長年の思い出が壊れてしまった瞬間に何度も立ち合いました。
現在では、人工合成石を宝石として販売することは無くなりましたが、人工合成石のダイヤモンドが最近はやっていますので、注意しておきたいところです。
- 合成ルビーの特徴
- 合成ルビーが産まれた経緯
- 合成宝石の作り方
①合成ルビーの特徴
合成ルビーの特徴として、100年ほど前から大流行したフランスのベルヌイ博士が発明した「ベルヌイ法=火焔法」で合成されたものは、不自然なほど色が均一で内包物もほとんどありません。
合成ルビーは昭和初期までの日本では本物のルビーとして多く流通していた時代もありました。
見分け方としては、合成する際に一定の間隔で弧を描くように入った成長線です。天然ルビーに入る成長線とは全く違うので分かりやすいはずです。
キューレット側から光源に向けて透かして見ると意外と簡単に見つけられます。
価値の高いミャンマー産ルビーに似せて作っているためミャンマー産の特徴と同じように強い蛍光反応があります。合成ルビーも着色成分としてクロム(Cr2O3)を含むため、紫外線に反応しますので、蛍光性のテストは役に立ちません。
そして、合成する時に、るつぼを引き上げながら結晶を成長させる「結晶引上げ法」による人工合成石では、ルチルの針状結晶や、箱状の結晶インクルージョンも作ることができます。
天然ルビーのインクルージョンをかなり見慣れていないと、ミスをしてしまいます。見分けるにはかなりの経験が必要です。
②合成ルビーが生まれた経緯
人工的に合成されたものが初めて大流行したのがルビーでした。
約100年前、フランスの科学者ベルヌイ博士が火焔法でルビーと同じ鉱物を人工的に合成することに成功しました。
ちょうどその頃、ミャンマー(旧ビルマ)を植民地化し、1888年からモゴック鉱山で採掘していたのがイギリスです。
フランスから人工合成石が大量に世界各国に販売されたことから、天然ルビーの流通価格が暴落し、イギリスのビルマ鉱山会社は1916年に倒産、撤退しています。
日本が大正時代から大量にルビーとして輸入したものの大半は、この人工合成石であり、多くは結婚指輪などの重要なジュエリーに使われました。
富国強兵で西洋文化を積極的に取り入れた国策だったと思いますが、その当時の日本には、近代の宝石文化が無かったため、人工合成石を爆買いしてしまったのです。
モリスに実際に査定にお越しになるお客様がお持ちの6~80年前に結婚指輪として使われたものの多くがこのベルヌイ法の人工合成石です。
合成と表示をせず、または知らずに、業者が本物として扱ったため、その後、宝石の信頼性が大きく損なわれました。
「宝石には価値があってないようなもの」という不名誉な言葉は、ルビーの人工合成石の失敗が大きかったと考えます。
宝石の世界の残念な歴史です。
③合成ルビーの作り方
合成宝石が作られる際、2つの方法があります。
・火焔法、結晶引上げ法(ベルヌーイ法、チョクラルスキー法)
・フラックス法(高温高圧法)
現在では安価な溶融法で合成されたものは工業用途や飾り石に、天然と同じ原理で手間とコストと時間のかかるフラックス法で合成されたものが宝石として扱われますが、人気はあまりありません。
電気炉で原料を長期間加熱する方法では、2か月程度の過熱で200カラットを超える単結晶ルビーが形成されます。天然石との鑑別法が確立されているため基本的に区別は容易です。ただし天然石をそっくりまねた悪質なニセモノがあり、専門家でも手を焼くことがあります。同じ3カラットのルビーの場合、溶融法合成石の価格を1とすると、天然石の価格はその1,000倍以上となります。
模造石
外観は天然石と似ていますが、化学特性・物理特性・内部構成は天然宝石とは異なります。
プラスチック、陶器、樹脂、ガラス等を使用して、天然宝石に似せて作られた模造宝石です。
様々な素材を加工して作られる装飾の加工品です。安価なものを加工して綺麗に見せるものでクリスタルで作られたラインストーンなどが代表的といえます。コスチュームジュエリーと呼ぶ安価な素材で豪華なジュエリーが作られることも多くあります。
ここでは代表的な模造宝石をご紹介します。
- ダブレット・トリプレット
- 練り
- 染色
- ガラス
ダブレット・トリプレット
「貼り合わせ」とも呼ばれ、二つの素材を貼り合わせたものを「ダブレット」、3つのものを「トリプレット」と呼びます。
石を大きく、色を美しく見せるほか、薄い宝石の強度を高めることを目的として作られます。
練り
宝石やほかの素材を細かく砕き、樹脂などで成形したものです。不透明石の模造宝石を作る際に用いられます。
染色
その宝石が元々持っている色を強調するため、染色を施した処理石の名称。一般的に宝石は色加工を施すと天然の範疇を外れる為、大幅に価値が下落します。
ガラス
ガラスという性質上、より安価に様々なカラー、カラットの石を製造可能です。宝飾史を紐解いてみると、18世紀ストラスによる酸化鉛を用いたペーストと呼ばれる人工ガラスが高価な宝石に似せてセットされました。
ルビーと似た3つの類似石
ここまで天然ルビーと合成や模造石について解説していましたが、最後によく似た赤色系統の宝石とルビーの違いを紹介します。
- ガーネット
- スピネル
- ルベライト
ガーネット(パイロープ)
ざくろの実に似た結晶で、深い赤が特徴のガーネット。
チェコのボヘミア地方で産出したため、ボヘミアンガーネットという呼び名で有名で、欧州ではルビーと同じようにロイヤルファミリーのジュエリーにも使われていました。
パイロープとは「火」を表すギリシャ語から名づけられました。色はクロムや鉄に由来し、深い赤が特徴です。
ダイヤモンドの母岩であるキンバーライトの中からも産出されます。また風化作用で母岩から離れ、丸くなった砂利として採掘されます。
スピネル(レッド)
長い間、ルビーと混同されてきた赤い宝石がスピネルです。
ミャンマーの漂砂鉱床では、ルビーと同じように産出されますので、間違いやすかったのかも知れません。
レッドスピネルの赤い色は、クロムや鉄に由来します。花崗岩や変成岩からルビーと一緒に産出するため、長い間、欧州ではルビーと考えられていました。
しかし、インドでは2000年前からルビーとスピネル、ガーネットを見分けて、等級付けをしていることから、ルビーに関しては、アジアが先進国でした。
ルべライト
緑色や青色が良く知られているトルマリンには、赤いものがあり、ルベライトと呼ばれ、ルビーの類似石です。
驚いたことに、中国上海では2005年に、まだルベライトを宝石ルビーだとして販売していました。
ルビーの類似石は、この他にレッドトルマリン、カーネリアン、レッドオパール等があります。
ルビーの種類【本物と偽物】を見分ける便利な方法
たくさんのルビーの種類をご紹介しましたが、歴史が長く、人気の高いルビーの歴史は「よく似たモノの歴史」です。
前述の通りルビーとそっくりな人工合成石の登場が、その後の宝石学の発達、分析技術の発達につながったと言えます。
ルビーの種類を見分けるエキスパートが、宝石鑑別を専門とする業者です。国際的には、スイスのグベリン宝石研究所Gubelin Gem Lab、SSEF、米国のGIA、日本であれば中央宝石研究所があります。
種類の分からないものがあれば、鑑別依頼されることをおすすめします。
ヨーロッパのルネッサンス期には、宝石の頂点にあったルビーは、人工合成石の流行により、その座を失いましたが、宝石を科学的に分析することが可能になった現在、ルビーは、その地位を取り戻し始めています。
まとめ
キレイなジュエリーを見ていると、つい忘れてしまいますが、宝石には「経年変化」がありません。何十年、何百年経っても宝石は変わりません。もちろんルビーもです。
宝石ジュエリーは、着けて楽しみながら、いつか必ず、誰かに受け継ぐ時、手放す時が来ます。
その時のことを考えると、世代を越えて価値保存する、天然無処理で美しいミャンマー産ルビーがおすすめです。
しかし、買う人にとっては、目の前にある宝石ルビーがどのようなものか?
見た目だけでは判断することは難しいと思います。
宝石の品質を見分ける方法が分かると、ルビーを探す時に、何を確認した方が良いのか?ポイントがつかめます。
「いいルビーを見せてください」というのと「天然/無処理/美しい/ミャンマー産/ルビー」を見せて下さいというのでは、お店側の対応も大きく違ってくるはずです。
ルビーの品質判定について詳しくはこちらで解説しています。是非参考にしてみてください。