翡翠は、東洋で数千年にわたり「命の石」として大切にされてきた宝石です。深い緑色の輝き、身につけるほどに変化すると言われる色の深まり、日本にとっても特別な意味を持つ宝石です。
その魅力は一言では語り切れません。しかし市場には処理済みの翡翠が多く流通しており、「良い翡翠」と「そうでない翡翠」の差を知らないまま選ぶのは危険でもあります。
この記事では、翡翠の基本情報から種類・産地・価値基準・処理問題・価格相場・宝石言葉、ルビーとの違いまで専門家の視点から網羅的に解説します。
翡翠(ひすい)はどんな宝石か?

翡翠(ひすい)は、深い緑色の輝きと独特の質感を持つ宝石です。東洋では数千年にわたって愛され続けており、日本でも縄文時代から勾玉(まがたま)として使われてきた歴史があります。
翡翠の名前の由来・英語名・鉱物としての性質を知ることで、翡翠という宝石の本質が見えてきます。ここでは、翡翠の基本情報から整理していきましょう。
翡翠の読み方と名前の由来(カワセミとの関係)
翡翠は「ひすい」と読みます。ちなみに、翡翠は「かわせみ(水辺に生息する小さな鳥の名前)」とも読みます。
実はこの「ひすい」と「かわせみ」の読みは偶然ではありません。「翡」「翠」はどちらも中国語で緑を表す色の言葉であり、翡翠という宝石の緑色がカワセミの羽の色と似ていることから、鳥の名がそのまま宝石の名として定着しました。
カワセミの羽は青みがかった緑から鮮やかなエメラルドグリーンへと変化するような色合いを持っており、その美しさが翡翠の発色と重なったとされています。名前の成り立ちを知ると、翡翠の色への向き合い方が少し変わってくるかもしれません。
翡翠とジェイド・ジェダイトの関係(英語名の語源)
翡翠の英語名は「Jade(ジェイド)」です。この言葉の語源はスペイン語の「piedra de ijada(ピエドラ・デ・イヤーダ)」で、直訳すると「腰の石」を意味します。
16世紀、中米のアステカ王国を征服したスペイン人が翡翠を持ち帰り、腰痛や腎臓の病に効くとして珍重したことがこの名の始まりとされています。「ijada(イヤーダ)」が転訛して「Jade」になったというのが定説です。
英語名のJadeの中には、さらに2種類が含まれます。宝石店で一般的に「翡翠」として扱われる「Jadeite(ジェダイト)」と、中国文化の「玉(ぎょく)」として親しまれてきた「Nephrite(ネフライト)」です。
この2種の違いについては、次の章の「翡翠の種類(ジェダイトとネフライトの違い)」で解説します。
翡翠の鉱物としての特徴(成分・硬度・比重・靭性)
宝石市場で「翡翠」として扱われるのは、主にジェダイト(硬玉)です。
ジェダイトは繊維状の微細結晶が互いに絡み合った構造を持っており、この構造が独特の靭性(割れにくさ)を生み出しています。
硬度はモース硬度で6.5〜7と、ルビーやサファイアより低いですが、靭性の高さという点ではすべての宝石の中でトップクラスに位置します。
この「硬くはないが割れにくい」という性質が、古くから印章や彫刻・装飾品にジェダイトが選ばれ続けた理由のひとつです。
| 項目 | 内容 |
| 鉱物名 | ジェダイト(Jadeite)/ネフライト(Nephrite) |
| 和名 | 硬玉(ジェダイト)/軟玉(ネフライト) |
| 化学組成 | NaAlSi₂O₆(ジェダイト) |
| モース硬度 | 6.5〜7(ジェダイト)/6〜6.5(ネフライト) |
| 比重 | 約3.25〜3.40(ジェダイト) |
| 屈折率 | 1.65〜1.67 |
| 透明度 | 不透明〜半透明 |
| 主な産地 | ミャンマー・グアテマラ・日本・ロシアなど |
| 誕生石 | 5月 |
| 結婚記念石 | 35周年(翡翠婚式) |
表の中にネフライト(軟玉)が登場していますが、翡翠には大きく2種類があります。宝石店で「翡翠」として販売されているのは、ほぼジェダイト(硬玉)です。
ネフライトはジェダイトとは異なる鉱物で、中国文化の「玉(ぎょく)」として古くから親しまれてきましたが、宝石としての価値基準や流通はジェダイトとは別物です。
2種類の詳しい違いについては、次の章で解説します。
翡翠以外の宝石ついて知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
翡翠の種類(ジェダイトとネフライトの違い)

「翡翠」という名前は、実は2種類の異なる宝石をまとめて指しています。それが「ジェダイト(硬玉)」と「ネフライト(軟玉)」です。
見た目は似ていても、鉱物としての成分・性質・価値は大きく異なります。この違いを知っておくことが、翡翠の品質を正しく判断するための第一歩になります。
ジェダイト(硬玉)とは?(宝石市場の主役)
ジェダイトは、ナトリウムとアルミニウムを含むケイ酸塩鉱物で、和名を「硬玉」といいます。モース硬度は6.5〜7、比重は約3.3です。
最大の特徴は、繊維状の微細結晶が絡み合った構造による高い靭性(割れにくさ)です。硬度そのものはルビーやサファイアより低いですが、衝撃には非常に強い性質を持っています。
色のバリエーションも豊富で、緑・白・ラベンダー・黒・黄・青など多彩です。なかでもクロム元素を含んだ深い緑色のものが最も高く評価され、最上級品は「琅玕(ろうかん)」と呼ばれています。
産地はミャンマーのカチン州パカン地区がほぼ唯一の宝石品質の供給地とされており、世界市場に流通する高品質なジェダイトの大部分がここから産出されています。
ネフライト(軟玉)とは?(中国文化の「玉」との関係)
ネフライトは、カルシウムやマグネシウムを含む角閃石系の鉱物で、和名を「軟玉」といいます。モース硬度は6〜6.5とジェダイトよりやや低いですが、繊維状結晶が複雑に絡み合っているため、靭性はジェダイトと同様に高い性質を持っています。
色は白・緑・褐色が中心で、中国では数千年にわたり「玉(ぎょく)」として珍重されてきました。孔子が「玉の徳」を語った故事や、王族の副葬品として用いられた歴史も、主にこのネフライトを指しています。
ミャンマー産のジェダイトが18世紀後半に中国市場へ流入する以前は、中国で「玉」といえばネフライトのことでした。ジェダイトの登場後、その美しい緑色に人々が魅了され、主役の座が入れ替わっていった経緯があります。
産地はニュージーランド・カナダ・ロシア・中国(新疆ウイグル自治区)などで、ニュージーランドのマオリ族にとっては「ポウナム」として文化的に重要な石でもあります。
なぜ宝石店の「翡翠」はジェダイトなのか?
現代の宝石店で「翡翠をください」と言えば、まずジェダイトが出てきます。これは市場での慣習として定着しており、宝石鑑別の世界でも「翡翠=ジェダイト」という理解が一般的です。
理由は価値の差にあります。ジェダイトは透明感とテリのある発色が際立っており、高品質なものはネフライトを大きく上回る価格で取引されます。一方ネフライトは「軟玉」として別カテゴリで扱われることが多く、ジュエリー用途よりも彫刻・工芸品としての需要が大きい傾向があります。
ただし信頼できる店舗でないと、ネフライトをジェダイトとして販売するケースもゼロではありません。購入の際は鑑別書の内容を確認し、記載されている鉱物名がJadeiteであることを確かめることが大切です。
鑑別書の見方については、こちらの記事も参考にしてみてください。鉱物名の確認という観点では、翡翠でも同じ考え方が応用できます。
結論から言えば、どちらも「本物の翡翠」です。ジェダイトとネフライトはどちらも国際的に翡翠(Jade)として認められており、偽物・本物という区分ではありません。
ただし宝石市場において価値が高いのはジェダイトです。購入を目的とする場合はジェダイトを選ぶのが一般的で、鑑別書でJadeiteと記載されているかどうかを確認することを習慣にしてみてください。
翡翠の色の種類と意味(緑だけじゃない多彩なカラー)

翡翠と聞くと、多くの方が深い緑色を思い浮かべます。しかし実際には、白・ラベンダー・黒・黄・青・赤など、非常に多彩なカラーバリエーションを持つ宝石です。
色の違いは含まれる微量元素によって生まれ、それぞれに異なる意味や宝石言葉が宿るとされています。色を知ることは、翡翠の価値や魅力をより深く理解することにつながります。
「緑翡翠」と「琅玕(ろうかん)」(最高品質の証)
翡翠の中で最も高く評価されるのが、鮮やかな緑色のジェダイトです。この緑色はクロム元素が微量に混入することで生まれます。純粋なジェダイトの結晶は本来、無色〜白色ですが、クロムが加わることで深みのある緑へと変化します。
緑翡翠の中でも特に評価が高いのが「琅玕(ろうかん)」と呼ばれる最高品質のグレードです。この名は「青緑に輝く竹」を意味する中国語に由来し、18世紀後半にミャンマー産のジェダイトを初めて目にした中国の宝石商がその美しさに息を呑んで発した言葉が語源とされています。
琅玕の条件は、色の濃さと均一性・透明感・テリのすべてが高水準で揃っていることです。
英語では「Imperial Jade(インペリアル・ジェイド)」とも呼ばれ、天然無処理であることが前提となります。この最高品質の緑翡翠は、同サイズのルビーやエメラルドと比較しても遜色のない価格で取引されることがあります。
翡翠の色の種類と特徴・宝石言葉(ラベンダー・白・黒・黄・青・赤)
翡翠の色は緑だけではありません。含まれる微量元素の種類と量によって、さまざまなカラーが生まれます。以下に主なカラーバリエーションとその特徴・宝石言葉をまとめました。
| 色 | 特徴・色の原因 | 宝石言葉・意味 |
| 緑 | クロム・鉄による発色。最も価値が高い | 繁栄・長寿・幸福 |
| ラベンダー | チタン・鉄による薄紫色。上品な色合いで人気が高い | 癒やし・愛情・調和 |
| 白 | 色の原因となる元素を含まない純粋な結晶 | 浄化・純粋・再出発 |
| 黒 | 石墨(炭素)による発色 | 魔除け・決断力・守護 |
| 黄・橙 | 鉄分の酸化による発色。日本産では希少 | 希望・繁栄・知性 |
| 青 | チタンと鉄を含むオンファス輝石による発色 | 冷静・誠実・集中 |
| 赤・橙赤 | 鉄分の酸化による。ミャンマー産に存在。日本産では未確認 | 情熱・行動力・挑戦 |
なかでもラベンダー翡翠は近年需要が高まっており、質の高いものは緑翡翠に次ぐ評価を受けることもあります。また「花翡翠」と呼ばれる複数の色が混在したものも存在し、一点ごとに異なる表情が魅力です。
翡翠の宝石言葉に加え、ルビーの石言葉について知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。石言葉の持つ意味という観点では、ルビーとの比較も面白い視点になります。
翡翠の色は育つ(なぜ肌身離さず着けると変化するか?)
翡翠には「色が育つ宝石」という独特の表現があります。これは単なる比喩ではなく、実際に起こる物理的な変化です。
翡翠は乾燥に弱い性質を持っており、表面の微細な空隙が湿気や皮脂を吸収することで、時間をかけて艶やかさが増していきます。肌身離さず着け続けることで体温と皮脂が翡翠に馴染み、表面のテリが徐々に深まるとされています。
これはダイヤモンドやルビーなど他の宝石にはほとんど見られない、翡翠ならではの特性です。「着けるほどに美しくなる宝石」として東洋で長く愛されてきた背景には、この性質が深く関わっています。
ただし皮脂が表面に蓄積しすぎると汚れの原因にもなります。適切なお手入れを続けることが、翡翠の色を美しく育てるための前提条件です。お手入れの具体的な方法は「翡翠のお手入れと保管方法」章で解説します。
翡翠の産地と品質の関係(どこの産地が最も価値が高いか)

翡翠は世界各地で産出されますが、産地によって品質・色・市場評価は大きく異なります。「翡翠なら何でも同じ」ではなく、どこで採れたかが価値を左右する重要な要素のひとつです。
産地ごとの特徴を知ることで、翡翠を選ぶ際の判断軸が明確になります。
ミャンマー産翡翠が世界最高品質とされる理由
宝石品質のジェダイトを産出する産地として、世界で最も重要なのがミャンマー北部のカチン州パカン地区です。現在流通している高品質な翡翠の大部分は、この地域から産出されています。
ミャンマー産が高く評価される理由は、透明感と発色のバランスにあります。クロムを含む地質条件がジェダイトの緑色発色に適しており、琅玕(ろうかん)と呼ばれる最高品質グレードもこの地から産出されます。
採掘環境は過酷で、乾季の限られた期間しか作業ができません。原石はボルダー状(塊状の岩石の中に結晶する形)で産出され、割ってみるまで内部の品質がわからないという特性があります。その希少性と不確実性が、ミャンマー産翡翠の価値をさらに高めています。
ミャンマーはルビーの世界的産地としても知られており、モゴック渓谷産のルビーは「鳩の血(ピジョンブラッド)」と呼ばれる最高品質の赤色で名高いです。ルビーの産地について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
日本の翡翠(糸魚川と国石)
日本における翡翠の主産地は、新潟県糸魚川市とその周辺地域です。小滝川・青海川のヒスイ峡は天然記念物に指定されており、現在は一般的な採取が制限されています。
糸魚川の翡翠が特別なのは、その歴史の深さにあります。約5,000年前の縄文時代中期には、すでに糸魚川でヒスイの加工が行われていたことが考古学的に確認されています。これは世界最古クラスの翡翠文化のひとつとされ、当時の翡翠製勾玉が各地の遺跡から出土しています。
2016年9月、日本鉱物科学会は翡翠を日本の「国石」に選定しました。地質学的に日本のような沈み込み帯特有の環境でのみ生成されるという希少性が評価されたことに加え、縄文時代からの長い利用の歴史と文化的重要性も選定の理由となっています。
ただし現在、糸魚川産の宝石品質の翡翠が市場に新たに流通することはほぼありません。保護区域での採掘が禁止されており、流通するものは過去に採掘されたものや海岸に流れ着いた石に限られます。
グアテマラ・ロシア・その他産地の特徴
ミャンマー以外にも、宝石品質のジェダイトを産出する産地はいくつか存在します。それぞれに異なる個性があり、市場での評価も異なります。
グアテマラは世界で最初にジェダイトが発見された地とされ、歴史的にはアステカ文明やマヤ文明でも翡翠が使われていました。ブルーグリーンや青みがかった色調のものが多く、ミャンマー産とは異なる発色の個性があります。品質面ではミャンマー産に及ばないとされますが、独特の色合いを好むコレクターからの需要があります。
ロシア・カザフスタンからは主にネフライト(軟玉)が産出され、白色系の落ち着いた色調のものが多い傾向があります。中国・インドネシア・イタリアなどでも翡翠が確認されていますが、宝石品質のジェダイトという観点では評価は限定的です。
以下に主な産地の特徴をまとめました。
| 産地 | 特徴 | 市場評価 |
| ミャンマー | 宝石品質ジェダイトの主産地。透明感と発色のバランスが最高水準。琅玕クラスも産出 | 最高評価。世界基準の産地 |
| 日本(糸魚川) | 縄文時代から利用された歴史的産地。現在は採取制限あり。国石に選定(2016年) | 希少性は高いが新規流通はほぼない |
| グアテマラ | 世界最古の産地のひとつ。青みがかった色調が特徴。ミャンマー産より透明感で劣る | 中程度。独自の色調を好む層に需要あり |
| ロシア・カザフスタン | ネフライト(軟玉)が中心。白色系が多い | 工芸品・彫刻用途が中心 |
| 中国(新疆) | ネフライトの産地として有名。「羊脂玉」と呼ばれる白色のネフライトが珍重される | ネフライトとして一定の評価 |
| ニュージーランド | マオリ族の文化に深く根付くネフライト産地。「ポウナム」として知られる | 文化的価値が高い |
産地の違いは翡翠の価値に直結します。購入の際は産地の記載がある鑑別書を確認することが、品質判断の基本となります。
翡翠の価値基準とは?(何が「良い翡翠」を決めるのか)

翡翠の価格は数千円のものから数千万円を超えるものまで、驚くほど幅が広いです。この差を生むのは「品質の違い」です。
ダイヤモンドには、4C(カラー・カラット・クラリティ・カット)という明確な基準がありますが、翡翠の価値基準はより複合的で、複数の要素が絡み合って決まります。
ここでは、翡翠の価値がどのように決まるのかについて解説します。ぜひ購入前の判断材料にしてみてください。
色(濃さ・均一性・発色)
翡翠の価値において最も大きな影響を与えるのが「色」です。特に緑翡翠の場合、色の評価が価格を決定的に左右します。
理想とされるのは、濃すぎず薄すぎない鮮やかな緑色が石全体に均一に広がっている状態です。色が一部に偏っていたり、まだらになっていたりすると評価は下がります。
また「発色の鮮やかさ」も重要で、くすんだ色調よりも透き通るような生き生きとした緑が高く評価されます。最高品質とされる琅玕(ろうかん)は、この濃さ・均一性・鮮やかさのすべてが高水準で揃っています。
緑以外のカラーでは、ラベンダーの場合は色の深みと均一性、白の場合は透明感と清潔感が評価の軸になります。色の基準はカラーによって異なりますが、「均一で生き生きとした発色」という考え方はどの色にも共通します。
透明度とテリ(光の通り方)
翡翠の価値を決める第二の要素が「透明度」と「テリ」です。この2つは似ているようで、意味が少し異なります。
透明度は、石の内部に光がどれだけ通るかを示します。翡翠は不透明なものから半透明なものまで幅広く存在し、光を通すものほど評価が高い傾向があります。内包物(インクルージョン)が少なく、曇りを感じさせない状態が理想とされます。
テリは、表面から反射する光の質感を指します。高品質な翡翠はとろりとした深みのある光沢を持ち、これを「翡翠のテリ」と表現します。単に光るだけでなく、内側から発光するような奥行きのある輝きが、最高品質の証とも言えます。
なお翡翠の透明度とテリは、処理によって人工的に改善されることがあります。この点については次の章「翡翠の処理問題」で解説します。
宝石の品質評価について知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
大きさとカット
翡翠の価値において大きさは重要な要素ですが、単純に「大きいほど高い」わけではありません。色・透明度・テリといった品質が伴ってはじめて、大きさが価値に直結します。
品質の低い翡翠がいくら大きくても、高品質な小粒の翡翠に価値で劣ることは珍しくありません。特に琅玕クラスの高品質翡翠は大粒で産出されること自体が稀であるため、大きさと品質が両立するものは希少性が際立って高くなります。
カットについては、翡翠はカボションカット(ドーム型)に仕上げられることが最も多いです。
これは翡翠の色とテリを最大限に引き出すための伝統的な加工方法です。薄く均一にカットされたものや彫刻が施されたものも存在しますが、ジュエリー用途では滑らかなカボションが基本となります。
宝石のカットの種類について詳しくは、こちらの記事を参考にしてみてください。
産地と天然無処理かどうか?
翡翠の価値基準において、近年特に重視されるようになったのが「天然無処理かどうか」という点です。
産地についてはミャンマー産が最高評価を受けることは「翡翠の産地と品質の関係」の章で解説したとおりです。同じ色・同じ透明度であっても、産地の記載がある鑑別書付きのものとそうでないものでは、市場での評価が変わります。
さらに重要なのが処理の有無です。翡翠市場では見た目を改善するための処理が広く行われており、処理の有無が価値を大きく左右します。
天然無処理のA貨と、処理が施されたB貨・C貨では、同じように見えても価値に大きな差があります。この処理の問題については次の章で解説します。
宝石の価値について幅広く知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
翡翠の処理問題(処理の分類について解説)

翡翠を購入する際に、最も知っておくべき情報がこの「処理」の問題です。
翡翠市場には、見た目を人工的に改善した処理済みの石が多く流通しています。処理の有無は外見からはほぼ判別できず、知識がないまま購入すると意図せず処理済みの翡翠を手にしてしまうリスクがあります。
翡翠業界では1980年代以降、処理の程度によって翡翠をA貨・B貨・C貨に分類する慣習が定着しました。
この分類は「A=天然無処理(All Natural)」「B=漂白・含浸処理(Bleached and impregnated)」「C=染色処理(Color enhanced)」の略語に由来し、香港・中国・台湾を中心とした翡翠市場で広く使われています。
購入前にこの分類を知っておくことが、翡翠選びで後悔しないための基本知識となります。
A貨・B貨・C貨の定義と違い
ひとつ注意しておきたいのは、A貨は「最高品質の翡翠」を意味するのではなく、「天然無処理の翡翠」を意味するという点です。品質が低くてもA貨はA貨ですし、B貨・C貨も原料自体は天然の翡翠です。この分類はあくまで「どの程度の人工処理が施されているか」を示すものです。
| 分類 | 処理内容 | 見た目への影響 | 市場評価 | 価格への影響 |
| A貨 | 天然無処理(軽微なワックス仕上げ程度) | 天然のままの色・透明度・テリ | 最高評価 | 最も高い |
| B貨 | 漂白(酸処理)+樹脂含浸処理 | 透明感・発色が人工的に改善される | 低評価 | A貨より大幅に低い |
| C貨 | 漂白+樹脂含浸+染色処理 | 色が人工的に付加される | 装飾品扱い | 最も低い |
宝石市場で翡翠として正当に評価されるのはA貨のみです。B貨・C貨は原料こそ天然ですが、人工処理によって本来の性質が変えられているため、A貨とは別物として扱われます。
購入の際は必ず鑑別書の内容を確認してください。鑑別書の見方については、こちらの記事を参考にしてみてください。
天然無処理翡翠(A貨)を選ぶ意味
A貨とは、採掘後に漂白・含浸・染色といった処理を一切施していない翡翠のことです。表面仕上げのための軽微なワックス処理程度はA貨に含まれますが、石の本来の性質を変える処理は行われていません。
A貨を選ぶ意味は、主に3つあります。
1つ目は「経年変化への安心感」です。天然のA貨翡翠は適切なケアをすれば品質が劣化しにくく、何十年にわたって美しさを保つことができます。
2つ目は「資産価値」です。宝石としての再販・評価の対象になるのはA貨のみであり、B貨・C貨は買取市場でほぼ価値がつかない傾向があります。
3つ目は「本物の宝石体験」です。翡翠が「色の育つ宝石」として長く愛されてきたのは、天然の石だからこそ起きる変化があるからです。B貨・C貨では樹脂や染料が影響して、この本来の変化が損なわれます。
天然無処理という考え方は、ルビーの世界でも同じです。モリスが扱うルビーはすべて天然無処理を基準としています。その理由について気になる方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
翡翠を選ぶ場面で、よく起きる迷いがあります。見た目は美しいのに価格が安い翡翠と、少し地味に見えるが天然無処理のA貨翡翠、どちらを選ぶべきかという問いです。
長く持ち続けることを前提にするなら、天然無処理のA貨を選ぶことをおすすめします。「安く見えても天然」の翡翠は、時間をかけて色が育ち、使い込むほどに艶が増す可能性を持っています。一方「高く見えても処理済み」の翡翠は、見た目の美しさが樹脂や染料に依存しており、経年とともに劣化が進みます。
購入の際は価格や見た目だけでなく、必ず鑑別書でA貨であることを確認することを強くおすすめします。
含浸処理(B貨)とは何か?(なぜ価値が下がるのか)
B貨とは、酸による漂白処理のあとに樹脂(ポリマー)を含浸させた翡翠のことです。まず酸で翡翠を処理して内部の不純物や汚れを除去し、できた微細な空隙に透明な樹脂を注入・硬化させることで、透明感と発色を人工的に改善します。
この処理を施すと加工直後は天然のA貨と見分けがつかないほど美しく見えることがありますが、時間の経過とともに注入した樹脂が黄変・劣化し、元の外観が損なわれていきます。
価値が大幅に下がる理由はここにあります。天然のA貨翡翠は適切なケアをすれば何十年にわたって美しさを保てますが、B貨は樹脂の耐久性に依存しており、経年変化が避けられません。長期的な資産価値という観点でも、A貨とB貨の差は非常に大きいです。
ルビーにも「含浸処理」という類似の処理があり、天然無処理のルビーが特別に評価される背景と共通しています。詳しくはこちらの記事を参考にしてみてください。
染色処理(C貨)とは何か?
C貨はB貨の処理に加え、さらに染料で色を人工的に付加した翡翠です。漂白によって色が抜けた翡翠や、もともと色の薄い石に緑・ラベンダーなどの染料を染み込ませて仕上げます。処理直後は鮮やかな色合いに見えますが、紫外線や摩擦によって退色が進むことが多いです。
C貨は宝石としての評価対象外とされることがほとんどで、装飾品・工芸品としての位置づけが一般的です。価格は非常に安価なため、観光地や一部のオンラインショップで販売される廉価な翡翠製品の多くがこの分類に当たるとされています。
見た目だけでは判別が極めて難しく、紫外線ライト(ブラックライト)を当てると染料の蛍光反応が確認できる場合があります。ただし確実な判別には専門機関による鑑別が必要です。宝石の鑑定・鑑別については、こちらの記事も参考にしてみてください。
翡翠の価格相場(値段の目安と幅が広い理由)

翡翠の価格は、数千円のアクセサリーから数千万円を超える高級品まで、驚くほど幅が広いです。同じ「翡翠」という名前でも、これほどの差が生まれるのはなぜでしょうか。
価格の仕組みを知ることで、購入時に「なぜこの値段なのか」を自分で判断できるようになります。ここでは市場相場の目安と、価格差が生まれる理由を整理します。
翡翠の価格を決める要素の組み合わせ
翡翠の価格は、単一の要素ではなく複数の要素が掛け合わさって決まります。前の章で解説した価値基準がそのまま価格に反映される形です。
最も影響が大きいのは「色の質」と「天然無処理(A貨)かどうか」の組み合わせです。最高品質の緑色を持つ天然無処理のジェダイトは、同サイズのルビーやエメラルドと比較しても遜色のない価格になることがあります。次に影響するのが透明度とテリで、光を通す半透明のものと不透明なものでは、色が同程度でも価格に大きな差がつきます。
さらに産地・大きさ・カットの完成度・付属する鑑別書の有無も価格に影響します。これらの要素がすべて高水準で揃うほど、価格は大きく上昇する傾向があります。逆に言えば、安価な翡翠はどこかの要素が妥協されている可能性が高く、「安すぎる翡翠」には処理が施されているケースも少なくないため注意が必要です。
宝石の値段の仕組みについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
品質ランク別の価格帯目安(市場相場)
以下は市場相場をもとにした翡翠の価格帯の目安です。あくまで参考値であり、個々の石の状態・鑑別書の有無・販売店によって大きく異なる点をあらかじめご了承ください。
| 品質ランク | 特徴 | 市場相場感(ルース・石単体) |
| C貨(染色処理) | 染料で色付け。経年で退色する | 数百円〜数千円程度 |
| B貨(含浸処理) | 漂白+樹脂含浸。透明感を人工的に改善 | 数千円〜数万円程度 |
| A貨・低品質 | 天然無処理だが色・透明度が低い | 数万円〜十数万円程度 |
| A貨・中品質 | 天然無処理。色・透明度がある程度揃う | 数十万円〜百万円程度 |
| A貨・高品質 | 天然無処理。色・透明度・テリが高水準 | 百万円〜数百万円程度 |
| 琅玕(ろうかん)クラス | 最高品質。Imperial Jade。色・透明感・テリのすべてが最高水準 | 数百万円〜数千万円以上 |
ジュエリーとして加工された場合は、石の価格に加えて地金・デザイン・職人の加工費が上乗せされます。同じ品質の石でも、ブランドや販売店によって価格差が生まれることも念頭に置いておきましょう。
宝石全般の価格を幅広く知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
翡翠婚式(結婚35周年)の記念石として
翡翠は結婚35周年を祝う「翡翠婚式」の記念石として知られています。35年という長い年月を翡翠の耐久性と変わらぬ美しさに重ね、夫婦の絆の象徴として選ばれてきました。
翡翠婚式のギフトとして翡翠のジュエリーを贈る文化は日本でも定着しており、指輪・ネックレス・ブレスレットなどさまざまなアイテムが選ばれています。特に「色が育つ」という翡翠の特性は、年月を重ねるほどに深まる夫婦の関係性を連想させることから、記念の贈り物として非常に意味深いとされています。
35周年という節目に本物の宝石を贈りたいと考えている方には、天然無処理のA貨翡翠を選ぶことをおすすめします。処理済みのB貨・C貨では長期にわたる美しさが保証されないためです。
結婚記念の宝石ギフトについて、ルビーとの比較も含めて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
この記事でお伝えした価格帯はあくまで市場相場の目安です。翡翠の価格は石ごとの個体差が非常に大きく、同じランクでも実物を見なければ正確な評価はできません。
購入を検討している場合は、必ず信頼できる専門店で実物を確認することをおすすめします。その際、鑑別書の有無・A貨であることの明示・産地の記載を必ず確認してください。
「価格が安いから良い買い物」ではなく「品質に見合った価格かどうか」を判断する目を持つことが、後悔しない宝石選びの基本です。
翡翠の宝石言葉・意味・パワーストーンとしての効果

翡翠は宝石としての美しさだけでなく、古くから人々の精神的な拠り所としても大切にされてきました。守護・繁栄・長寿・調和といった意味が込められ、東洋を中心に数千年にわたって愛され続けています。
一方で「人を選ぶ石」「怖い意味がある」という言葉を耳にしたことがある方もいるかもしれません。こうした印象がどこから来ているのかを正しく理解することで、翡翠との向き合い方が変わってきます。
翡翠の宝石言葉(繁栄・長寿・幸福・調和)
翡翠の宝石言葉は「繁栄」「長寿」「幸福」「調和」の4つが代表的です。いずれも東洋的な価値観と深く結びついており、単なる装飾を超えた意味を持つ宝石として古くから扱われてきました。
「繁栄」は事業や家族の発展を願う意味を持ち、商売繁盛のお守りとして翡翠が用いられてきた背景があります。「長寿」は翡翠の耐久性と変わらぬ美しさが、健やかな人生の象徴として重ねられてきました。「幸福」と「調和」は、翡翠の色と質感が心を穏やかに整えるとされてきたことに由来しています。
パワーストーンとしての効果として語られるのは、魔除け・健康促進・精神的な安定・対人関係の円滑化などです。科学的な根拠があるわけではありませんが、こうした意味を知ったうえで身につけることで、宝石との関わり方に深みが増します。
ルビーの宝石言葉については、以下の記事を参考にしてみてください。
「人を選ぶ石」「怖い」と言われる理由(背景を正しく理解する)
翡翠について調べると「人を選ぶ」「怖い意味がある」という言葉に出会うことがあります。これらの印象がどこから来ているのか、背景を整理しておきます。
「人を選ぶ石」という表現は、翡翠が持ち主の状態や環境によって印象が変わる宝石として語られてきたことに由来します。厳密に言えば「特定の人を拒む」という意味ではなく、持ち主に寄り添いながら変化する翡翠の性質が、こうした表現を生んだと考えるのが自然です。
「怖い」という印象については、主に3つの背景があります。
1つ目は、古代から呪術や儀式の道具として使われてきた歴史です。日本では勾玉として祈りの場に用いられ、中南米でもアステカ・マヤ文明の神事に深く関わっていました。
2つ目は、副葬品として用いられてきた歴史です。古代中国では翡翠を身につけたまま埋葬する風習があり、死後の世界との結びつきが「怖い」という印象につながっています。
3つ目は、不思議な体験談が語り継がれてきたことです。ただしこれらは科学的な根拠があるものではなく、翡翠の神秘性を物語るエピソードとして理解するのが適切です。
こうした背景を知ったうえで言えば「翡翠が怖い宝石」なのではなく「翡翠は人々の祈りや思いを長く受け止めてきた宝石」という捉え方の方が正確です。
日本・中国・中南米における翡翠の文化的意味
翡翠は地域によって異なる意味と価値観を持って親しまれてきました。それぞれの文化における翡翠の位置づけを知ることで、この宝石の奥深さがより鮮明になります。
日本では縄文時代から翡翠が勾玉として加工され、祈りや権力の象徴として用いられてきました。奈良時代以降に翡翠文化が一時途絶えたものの、1938年(昭和13年)に糸魚川での産出が科学的に確認され、2016年には国石に選定されました。
現代の日本でも翡翠は厄除けや魔除けのお守りとして根強い人気があります。
中国では翡翠は「玉(ぎょく)」として数千年にわたり最上の宝石と見なされてきました。孔子は玉の徳として仁・義・礼・智・信を挙げ、翡翠を人格の象徴として語ったとされています。
「金有価、玉無価(金には価格があるが、玉には値がつけられない)」という言葉があるほど、中国文化における翡翠の地位は絶対的です。現在も中国市場は世界最大の翡翠消費地であり、高品質なミャンマー産翡翠の多くが中国へ流通しています。
中南米ではアステカ・マヤ・オルメカなどの文明が翡翠を黄金以上に貴重な石として扱いました。
神への捧げ物や儀式の装具として用いられ、支配者の権威の象徴でもありました。グアテマラのモタグア渓谷が世界最古のジェダイト産地のひとつとされており、この地の翡翠文化は数千年の歴史を持っています。
ルビーのパワーストーンとしての意味について気になる方は、以下の記事も参考にしてみてください。
翡翠のお手入れと保管方法

翡翠は適切なケアを続けることで、長く美しさを保てる宝石です。一方で乾燥に弱く、間違った扱いをすると色やテリが損なわれることもあります。
「色が育つ宝石」として翡翠の魅力を最大限に引き出すためには、日常的なお手入れと正しい保管方法を知っておくことが大切です。
翡翠のお手入れの基本(着用後のケア・洗浄方法)
翡翠の日常的なケアはそれほど難しくありません。着用後に柔らかい布で汗や皮脂を軽く拭き取るだけで、表面の状態を良好に保てます。布はセーム革や眼鏡拭きのような柔らかい素材が適しており、力を入れてこすらずなでるように優しく拭くことが基本です。
汚れが気になる場合は、ぬるま湯に中性洗剤を薄めた液を使い、柔らかい布やブラシで軽く洗浄します。洗浄後はしっかりと水分を拭き取り、自然乾燥させてから保管してください。
翡翠は乾燥に弱いため、肌に触れさせて使い続けることで自然な潤いが保たれます。着け続けることで色が育つとされるのも、この性質が背景にあります。
宝石全般のクリーニングについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
翡翠のNGな扱い方(超音波洗浄・化学薬品・急激な温度変化)
翡翠のケアで特に注意が必要なのが、やってはいけない扱い方です。以下の点を守ることで、翡翠を長く良い状態に保つことができます。
まず、避けるべきなのが超音波洗浄です。
超音波洗浄機はダイヤモンドなど硬度の高い宝石には有効ですが、翡翠の場合は内部の微細な結晶構造にダメージを与える可能性があります。特にB貨の翡翠は樹脂含浸が施されているため、超音波による振動で樹脂が剥離するリスクがあり、使用は避けてください。
次に、化学薬品への接触です。漂白剤・除光液・香水・化粧品などは翡翠の表面や色に影響を与えることがあります。
着用前に化粧品や香水を使う場合は、完全に乾いてから翡翠を身につけるようにしましょう。急激な温度変化も避けましょう。熱湯への浸漬やサウナ・温泉での着用は、石に内部応力を与えひび割れの原因になります。
また、硬度の高い宝石との接触にも注意が必要です。ダイヤモンドやルビーが翡翠に触れると表面に傷がつく可能性があるため、ジュエリーは個別に保管することが基本です。
長く美しく保つための保管方法
翡翠を長く美しく保つためには、保管環境にも気を配りましょう。
まず直射日光が当たる場所での保管は避けてください。紫外線は翡翠の色に影響を与える可能性があり、長期間の日光暴露は色褪せの原因になることがあります。
高温多湿・または極端な乾燥環境も避けることが大切です。翡翠は乾燥に弱いため、適度な湿気がある安定した環境での保管が望ましく、密閉されたケースに長期間放置するより、適度に取り出して状態を確認することも大切です。
複数のジュエリーを一緒に保管する場合は、翡翠を柔らかい布やポーチに個別に包んでから収納してください。これは他の石や金属と直接触れることで表面に傷がつくリスクを防ぐためです。
長期間使用しない場合も、定期的に取り出して布で軽く拭き状態を確認することをおすすめします。
翡翠は使い続けることで育つ宝石であるため、しまったまま放置するよりも時折身につけることが、長く美しい状態を保つことにもつながります。
宝石の保管方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
翡翠とルビー(東洋を代表する二大宝石を比較)

翡翠を知れば知るほど、もうひとつの東洋の宝石であるルビーとの共通点が見えてきます。
どちらもミャンマーを主産地とし、東洋文化の中で数千年にわたって守護や権威の象徴として愛されてきました。
ルビーを専門に扱う立場から、翡翠とルビーを並べて見たときの違いや気付きについて解説します。
翡翠とルビーの共通点(産地・文化・「東洋の宝石」としての地位)
翡翠とルビーには、驚くほど多くの共通点があります。
まず産地です。どちらもミャンマーが世界最高品質の産地として知られており、翡翠はカチン州パカン、ルビーはモゴック渓谷が主産地です。同じ国の大地が生んだ東洋を代表する2つの宝石と言えます。
次に文化的な背景です。翡翠は中国・日本・中南米で守護や権威の象徴として、ルビーはインド・ミャンマー・ヨーロッパで情熱と権力の象徴として、それぞれの文明に深く根付いてきました。どちらも単なる装飾品ではなく、人々の祈りや思いを受け止めてきた宝石です。
さらに「天然無処理であることの価値」という点も共通しています。翡翠のA貨・ルビーの非加熱、どちらも処理の有無が価値を決定的に左右します。本物の宝石を選ぶという観点で、この2つの宝石は同じ哲学を共有しています。
ルビーの産地について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
翡翠とルビーの違い(色・透明感・価値基準・市場の違い)
共通点がある一方で、翡翠とルビーは宝石としての性質が大きく異なります。以下に主な違いをまとめました。
| 比較項目 | 翡翠(ジェダイト) | ルビー |
| 主な色 | 緑・ラベンダー・白・黒など多彩 | 赤(ピジョンブラッドが最高品質) |
| 鉱物の種類 | ケイ酸塩鉱物(岩石的な構造) | コランダム(単一鉱物) |
| モース硬度 | 6.5〜7 | 9(ダイヤモンドに次ぐ硬さ) |
| 透明感 | 不透明〜半透明。テリが魅力 | 透明〜半透明。内部の輝きが魅力 |
| 主産地 | ミャンマー・グアテマラ・日本など | ミャンマー・モザンビーク・スリランカなど |
| 処理の問題 | A貨・B貨・C貨(含浸・染色処理) | 加熱処理・含浸処理・非加熱が最高評価 |
| 価値の最高峰 | 琅玕(ろうかん)・Imperial Jade | ピジョンブラッド・非加熱・モゴック産 |
| 誕生石 | 5月 | 7月 |
| 結婚記念石 | 35周年(翡翠婚式) | 40周年(ルビー婚式) |
翡翠とルビーの最も大きな違いは「色と光の表現の違い」です。
翡翠は内側から滲み出るような深みのある緑の「テリ」が魅力であり、ルビーは透明感の中に宿る情熱的な赤の「輝き」が魅力です。どちらが優れているというものではなく、どちらの表現に惹かれるかは持つ人の感性によります。
ルビーの色について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
はじめて宝石を見るならどっち?
翡翠についてここまで読んでいただいた方の中には、宝石そのものへの興味が高まっている方もいるかもしれません。
翡翠とルビーはどちらも東洋を代表する宝石であり、産地・文化・天然無処理への姿勢という点で深く共鳴しています。翡翠の魅力に惹かれた方で、もしまだ本物の宝石を手に取ったことがないのであれば、まずはルビーを見てみるという選択肢もぜひ視野に入れてみてください。
ルビーも翡翠と同様に「処理の有無が価値を左右する宝石」です。
市場には加熱処理が施されたルビーが多く流通していますが、モリスが扱うルビーは「天然無処理のミャンマー産」のみに限っています。本物の宝石が持つ色・光・存在感は、写真や画面越しには伝わりきらない部分があります。
宝石を初めて見る方や選び方については、こちらの記事も参考にしてみてください。
翡翠と同様にルビーもまたミャンマーが生んだ「東洋が誇る赤の宝石」です。モリスは銀座・京都に店舗を構える、ミャンマー産天然無処理ルビーの専門店です。
2006年から自社で加熱実験を重ね、非加熱ルビーの価値を科学的に追求してきました。5万石以上のインクルージョンデータの蓄積・ギュベリン宝石研究所からの国際的な評価・サザビーズでの落札実績など、ルビーの専門性において国内でも数少ない存在だと自負しています。
気になる方は、ぜひ一度ルビーという東洋の赤い宝石も見てみてください。来店予約も受け付けており、専門スタッフが宝石選びの疑問に丁寧にお答えします。(ルビーの見学はこちら)
翡翠に関するよくある質問

ここでは、翡翠についてのよくある質問をまとめました。記事内で触れた内容の確認や、さらに気になる点の補足内容を加えたので、購入前の確認としても参考にしてみてください。
- 翡翠は日本の国石?
- 翡翠の偽物の見分け方は?
- 翡翠とエメラルドの違いは?
- 翡翠とネフライト(軟玉)は同じもの?
- 翡翠の誕生石は何月?
- 翡翠の英語名・語源は?
- 翡翠は結婚記念石として何周年?
- 翡翠はなぜ「育つ」と言われるのか?
- 翡翠の買取価格はどう決まる?
翡翠は日本の国石?
翡翠は日本の国石です。2016年9月24日、日本鉱物科学会によって正式に選定されました。選定された理由は主に2つあります。
ひとつは地質学的な希少性で、翡翠は日本のような沈み込み帯特有の環境でのみ生成されるという点が評価されました。もうひとつは文化的・考古学的な重要性で、縄文時代から約5,000年にわたって翡翠が日本で利用されてきた歴史が認められました。
なお、主産地である新潟県糸魚川市の小滝川・青海川ヒスイ峡は天然記念物に指定されており、現在は一般的な採取が制限されています。
翡翠の偽物の見分け方は?
翡翠の偽物や処理済みの石を見分けるのは、専門知識なしには非常に難しいです。
一般的な目安として、まず重さがあります。本物の翡翠(ジェダイト)は比重が約3.3と高く、同じサイズのガラスや樹脂製品より明らかに重く感じます。
次に冷たさです。天然石は熱伝導率が高いため、触れた瞬間にひんやりとした感触があります。プラスチックやガラスはすぐに体温に近づくため、この差で判別できることがあります。
ただしB貨(処理済み)とA貨(天然無処理)の見分けは、こうした簡易的な方法では困難です。
確実な判別には専門機関による鑑別が必要で、購入の際は鑑別書付きの翡翠を選ぶことが最善です。宝石の鑑定について詳しくは、こちらの記事も参考にしてみてください。
翡翠とエメラルドの違いは?
翡翠とエメラルドはどちらも緑色の宝石として混同されることがありますが、鉱物としての性質は全く異なります。
エメラルドはベリルという鉱物にクロムや鉄が混入して緑色を呈したもので、透明度が高くファセットカット(多面カット)で輝かせることができます。一方、翡翠(ジェダイト)はケイ酸塩鉱物が集合した岩石的な構造を持ち、不透明〜半透明でカボションカットが基本です。
| 比較項目 | 翡翠(ジェダイト) | エメラルド |
| 鉱物の種類 | ケイ酸塩鉱物 | ベリル(緑柱石) |
| モース硬度 | 6.5〜7 | 7.5〜8 |
| 透明感 | 不透明〜半透明 | 透明〜半透明 |
| 代表的カット | カボションカット | エメラルドカット・ファセットカット |
| 主な産地 | ミャンマー・グアテマラ | コロンビア・ザンビア・ブラジル |
| 誕生石 | 5月 | 5月 |
翡翠とエメラルドは同じ5月の誕生石です。どちらも緑の宝石として5月を象徴していますが、宝石としての個性は大きく異なります。
翡翠とネフライト(軟玉)は同じもの?
翡翠とネフライトは「どちらもJade(ジェイド)」という括りでは同じですが、鉱物としては全く別物です。
翡翠のジェダイト(硬玉)は、ナトリウムとアルミニウムを含むケイ酸塩鉱物で、宝石市場で高く評価されています。一方、ネフライト(軟玉)はカルシウムやマグネシウムを含む角閃石系の鉱物で、中国の玉(ぎょく)文化で古くから親しまれてきました。
どちらも「本物の翡翠」ですが、価値・性質・用途が異なります。宝石として購入する場合は、鑑別書でJadeiteと記載されているジェダイトを選ぶことが基本です。
2種類の詳しい違いについては、この記事の「翡翠の種類」の章を参考にしてみてください。
翡翠の誕生石は何月?
翡翠の誕生石は5月です。同じ5月の誕生石にはエメラルドもあり、どちらも緑を基調とした宝石が5月を象徴しています。
翡翠が5月の誕生石とされるのは、萌え出る新緑の季節と翡翠の緑色が重なるためとも言われています。5月生まれの方への贈り物として、また5月の結婚記念日のギフトとしても選ばれることが多いです。
宝石と誕生石の一覧について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
翡翠の英語名・語源は?
翡翠の英語名は「Jade(ジェイド)」です。
語源はスペイン語の「piedra de ijada(ピエドラ・デ・イヤーダ)」で、「腰の石」を意味します。
16世紀にスペイン人がアステカ王国を征服した際に中米から持ち帰り、腰痛や腎臓の病に効くと信じたことがこの名の始まりとされています。「ijada(イヤーダ)」が転訛して「jade」になったというのが定説です。
なお宝石品質のジェダイトを指す場合は「Jadeite(ジェダイト)」、ネフライトを含む総称として使う場合は「Jade(ジェイド)」と表記されます。
翡翠は結婚記念石として何周年?
翡翠は結婚35周年を祝う「翡翠婚式(ひすいこんしき)」の記念石です。
35年という長い年月を翡翠の耐久性と変わらぬ美しさに重ね、夫婦の絆の象徴として選ばれてきました。
翡翠のジュエリーを夫婦で贈り合う文化は日本でも定着しており、指輪・ネックレス・ブレスレットなどさまざまなアイテムが選ばれています。
なおルビーは結婚40周年の記念石です。35周年と40周年、どちらの節目にも東洋を代表する宝石が選ばれていることは興味深いです。
ルビー婚式について詳しくは、こちらの記事も参考にしてみてください。
翡翠はなぜ「育つ」と言われるのか?
翡翠が「育つ」と言われるのは、着け続けることで実際に見た目が変化するからです。
翡翠は乾燥に弱く、表面の微細な空隙が人の皮脂や湿気を吸収する性質を持っています。肌に触れ続けることで油分が馴染み、時間をかけて表面のテリと艶が深まっていきます。
この変化はダイヤモンドやルビーなど硬度の高い宝石にはほぼ見られない、翡翠ならではの特性です。
「着けるほどに美しくなる宝石」として東洋で長く愛されてきた背景には、この性質が深く関わっています。ただし適切なお手入れをしないと汚れが蓄積する原因にもなるため、定期的なケアを続けることが大切です。
翡翠の買取価格はどう決まる?
翡翠の買取価格は、主に複数の要素によって決まります。
まずA貨・B貨・C貨の区分です。天然無処理のA貨のみが買取市場で評価の対象となり、処理済みのB貨・C貨は買取価格がほぼつかないと考えておくべきです。
次に色・透明度・テリの品質で、緑色の濃さと均一性・光の通り方・テリの深みが高水準なほど評価が上がります。
産地と鑑別書の有無も重要で、ミャンマー産であることが鑑別書で確認できるものは産地不明のものより高く評価される傾向があります。
翡翠を売却・買取に出す予定がある場合は、購入時の鑑別書を必ず保管しておくことが重要です。鑑別書がないと正確な評価が難しくなるため、価格が下がる可能性があります。
まとめ
この記事では、翡翠とはどんな宝石かという基本情報から、種類・産地・価値基準・処理問題・価格相場・宝石言葉・お手入れ方法まで幅広く解説しました。
翡翠を選ぶうえで最も大切なのは、A貨・B貨・C貨の違いを理解し、天然無処理であることを鑑別書で確認することです。産地・色・透明度・テリという複数の要素が揃ってはじめて、本当の意味での「良い翡翠」と言えます。
東洋が生んだ宝石として、翡翠とルビーはどちらも数千年にわたって人々に愛されてきました。どちらも同じミャンマーの大地から産出され、天然無処理であることが最高の価値基準とされている点で、深く通じ合う宝石です。
翡翠に興味を持ったことをきっかけに、本物の宝石が持つ色・光・存在感に触れてみてください。まだ本物の宝石を手に取って見たことがない方には、天然無処理のミャンマー産ルビーをご覧になってみてください。
モリスは銀座・京都にある天然無処理のミャンマー産ルビー専門店です。2006年から自社で加熱実験を重ね、非加熱ルビーの価値を科学的に追求してきました。
5万石以上のインクルージョンデータの蓄積・ギュベリン宝石研究所からの国際的な評価・サザビーズでの落札実績など、ルビーの専門性において国内でも数少ない存在だと自負しています。
翡翠の魅力を知ったからこそ、同じ東洋の宝石であるルビーの赤く美しい色合いや魅力を感じることができます。(ルビーの見学はこちら)



